第二階層 爆炎
大扉を開けて大部屋の中へ入った瞬間に、前から炎が飛び出してきた。
「うお!?」
俺は刀で炎を斬った。すると目の前には、炎に包まれているモンスターが立っていた。
[ファイアーデビル]
危険度S
悪魔系のモンスター、魔族の個体が多いが少なからず魔族ではない個体もいる。ファイアーデビルもその内の一つ。主にライド大陸に生息しており、火を操る事ができる。そして、ファイアーデビルが生み出す炎は水では消えない。
「…………厄介なのが出たな…」
俺がさっき斬った炎は壁に飛んでいき、部屋全体を炎の檻にしていた。おいおい、城が燃えるぞ。
「……城が燃えないか不安だが…ひとまずファイアーデビルを倒そう」
「…うむ……」
蛇は魔札の結界を桜郎の周りに発動した、これで桜郎は大丈夫だ。
「よし…それじゃあやるか…!」
「ああ…!」
「ミノル!…蛇!……死ぬでないぞ!」
俺たちはファイアーデビルに向かって走っていった。するとファイアーデビルは地面に手をついた、その瞬間、地面を這う炎が俺たちに襲いかかった。
「よッ…と!」
俺はその場で飛び上がり、炎を回避した。危ないな、もう少しでこんがり肉になるところだ。
「……こんがり焼かれてたまるかよ!」
そして、ファイアーデビルに刀を振り下ろした。そして、俺の刃は空中でファイアーデビルの頭を真っ二つにした。
「…蛇!」
「ああ!」
蛇がファイアーデビルの懐へ近付き、腹を斬った。倒したか?……危険度Sも大したことないな。
「…………まぁ……危険度Sは一筋縄ではいかないわな…」
俺たちの斬ったファイアーデビルは炎になった。これは偽物だ、本体は何処だ。
「何処に行った…」
「……そこだ…!」
蛇が背後の角を見て言った。そこにはファイアーデビルが立っていた。クソ、いつのまに分身なんて作りやがった。
「後ろへ回り込んだのか…!」
俺はすぐさま走っていって、ファイアーデビルに近付いた。しかしファイアーデビルは小さな炎を俺に向かって飛ばしてきた。
「なッ……!?」
「ミノル!…離れろ…!」
蛇がそう叫んだ瞬間、小さな炎はその場で爆発した。俺はその爆風で吹き飛ばされた。
「うぐぅッ!!」
そして、壁に当たる前に地面に刀を突き刺した。壁に当たれば丸焼きだ。
「…大丈夫か……?」
「ああ…爆発の瞬間に後ろへ下がったからな……」
しかし、爆破攻撃までするのか。そういえば、日本のどこかにある街に、植物のような人生を歩んでいた爆弾魔がいたな、最後は救急車に引かれて死亡したらしいが。
「……爆破攻撃が厄介だな…どう対処するか…」
「…むぅ……」
俺たちはファイアーデビルに近付けなかった。近付いた時に爆破攻撃を喰らったらひとたまりもないからな。
「………一か八か…」
「…ミノル…?」
ビビっていたら駄目だ、俺は投げナイフを思い切り投げ、間合いを詰めた。近付くと、ファイアーデビルは再び小さな炎を生み出した。
「オラァッ!」
俺は小さな炎を生み出した左手を切り落とした、左手はボトリと地面に落ちて消えた。
「……このまま首を………ッ!!」
迂闊だった、ファイアーデビルは、右手で小さな炎を生み出していた。両手とも斬れば良かった。クソ、俺は完全に首を狙って刀を振りかぶっている。
右手を斬る事はできない。なんだか、時が遅く感じる。死ぬ前に時の進み具合が遅く感じると聞くが、これがそうなのかもな。
『……クソが…』
「ミノル!!」
完全に死を覚悟したその時、蛇が俺を突き飛ばした。蛇が突き飛ばしてくれたおかげで、俺は爆破攻撃の範囲外に出た。
「お前!!」
蛇の目の前が爆発し、蛇もファイアーデビルも見えなくなった。嘘だろ…お前……!
「蛇…!!」
「お…お前って奴は……」
煙がだんだんと無くなってきた、そこに蛇の姿は無く、ファイアーデビルだけが残っていた。
「……クソ…蛇……」
「…………くッ…」
俺は刀を握りしめた、俺があの時に攻めたからこうなったんだ。俺が、蛇を殺したのも同然だ。
「……ッ!?」
「なッ…!?」
後悔の念に駆られている時、ファイアーデビルの胸を刀が貫き、そのまま抉るように斬った。そしてファイアーデビルは、呻き声をあげて消滅した。
「……蛇…!」
「…蘇ノ魔札……これを身体に貼り付けて死ぬと…一度だけ蘇る……貴重な魔札故に…あと一つしかないがな…」
俺は力の抜けたような声で蛇に言った。
「心配させんじゃねぇよ……」
その時、桜郎の結界が解除され、桜郎は蛇の近くへ走って近付き、蛇の手を握りしめた。
「……良かった……本当に良かった……」
「…申し訳ありませぬ……心配させてしまったようで…」
桜郎は目に涙を浮かべていた、俺も結構泣きそうだった。




