第一階層 妖ノ宴
「妖が迫ってきている!」
「……行くぞ…ミノル……!」
「…ああ……!……だが数が多い…階段の前にいるアイツらを倒して他は無視だ…!」
周りからはなかなか手強いモンスターが俺たちに迫ってきていた。数が多い為、全ては相手にできない、だから俺たちは階段の前にいるモンスターだけを倒して、上へ進む事にした。
「蛇、俺は桜郎を守るから、お前は目の前のアイツらを倒してくれ」
「ああ」
[マジックサイクロプス]
危険度B
魔法を扱うサイクロプス。主に魔法の源である魔力を持ってして生まれたサイクロプスがマジックに進化する。
[ハイウルフ]
危険度C
人間を襲い続けた結果モンスターと化した狼。通常の狼よりも一回り大きく俊敏な動きをし、小牛程度なら一噛みで殺す程の牙と顎を持つ。
[ストーンゴーレム]
危険度A
ゴーレム系のモンスター、魔法の瘴気を吸った地面から、その瘴気が石に伝わり動き出したモンスター。元はただの石だったが、魔法の瘴気で体内に魔素が形成された。
[マンイーター]
危険度B
植物系のモンスター、異常成長し水や地面の養分では足らず、人を襲うようになった植物のモンスター。巨大な口で人を丸呑みにするが、消化には時間がかかる。
[スケルトンウォーリアー]
危険度A
強い怨念や恨みを持ちながら死んだ戦士達の遺骨の集合体。人間の剣技や流派を使う為、討伐するには剣術を覚えておく必要がある。
俺は迫り来るモンスターから、桜郎を守りながら蛇へ叫んだ。
「蛇!!……マジックサイクロプスは目が弱点だ!…目を潰せ!」
「……ああ…!」
蛇はマジックサイクロプスが魔法を発動する隙も与えずに間合いを詰め、背中へ飛び乗ると目に刀を突き刺し、そのまま落下しながら頭から腹にかけて斬った。マジックサイクロプスはそのまま倒れて消滅した。
「ウボスッ」
「よし!…次はハイウルフだ!……ッ…!」
俺が蛇に指示を出そうとした瞬間に、別のハイウルフが俺に飛びかかった。俺はすかさず横へ避けて頭を斬り、頭部と体を切り離した。その頭が桜郎の足元へ広がり、消滅した。
「ギャエ…ッ…」
「……ハイウルフは普通の動物と変わらん!……頭を切断しろ!」
「うむ」
蛇も飛びかかってきたハイウルフの噛み付きを避けて、首を斬った。
「…グヨッ」
「アイアンゴーレムは胸に露出している魔素を抜き取るか破壊すれば良い!」
俺がそう言うと、蛇はアイアンゴーレムの攻撃を頭上に飛び上がって避け、落下しながら魔素を斬った。そしてただの石になり、アイアンゴーレムだった石はゴトゴトと地面に落ちた。
「マンイーターは斬ってもすぐに再生する!……この焼夷手榴弾を使え!」
「不要だ」
そう言うと蛇は、懐から札を出して刃に貼り付けた。すると刀に炎が突然現れ、刃を包み込んだ。
「アレは…!」
「はッ!」
炎の帯びた刀で、蛇はマンイーターを一刀両断した。紅い斬撃とともにマンイーターは燃え始め、消し炭となると、チリになった。
「最後は…あの妖か…」
蛇はスケルトンウォーリアーの方を向いた。すると、スケルトンウォーリアーはゆっくりと蛇に近付き始めた。
「気を付けろ!!…そいつは元戦士だ!……剣技に注意しながら頭部を破壊しろ!!」
「……うむ…」
スケルトンウォーリアー、なかなか厄介なモンスターだ。蛇とスケルトンウォーリアーはお互いにゆっくりと間合いを詰めた。
そして刃と刃が当たる距離になると、蛇は数回程炎を帯びた刀を振り、大きな炎の斬撃でできた渦を生み出した。
「うおッ!」
「何という熱だ……」
炎の熱気がここまで伝わってきた。その時、スケルトンウォーリアーが炎の渦を斬った。炎の渦はその風圧で消えたが、そこに蛇の姿は無かった。
「……蛇…?」
その瞬間、スケルトンウォーリアーの頭蓋骨を刀が貫いた。そして、刀は頭蓋骨を抉るように斬った。頭部を破壊されたスケルトンウォーリアーな消滅した。
「階段付近の妖は斬った……急ぐぞ」
「…あ……ああ!」
俺たちは急いで階段を登っていった。上の階へ登ると蛇が再び札を取り出し、階段へ貼り付けた。
「結界を発動した…これで大丈夫だ…」
「それって……魔札だよな」
「ああ…少なかったからいざという時の為に取っておいたのだ……」
どうやら蛇は、王達から魔札を貰っていたらしい。魔札とは使い捨てだが、誰でも魔法を発動できる道具だ。
弱い魔法のものは安価だが、強力な魔法を発動できる魔札は滅多に出回らない故に高価になる。そして魔札は、魔法妨害の影響を受けない為、持っていると魔法を無力化してくるモンスターが相手でも平気だ。
「………便利なのものだな…」
「…結界は永遠に続くわけでは無い…急ぐぞ」
「ああ」
俺たちは先へ急いだ、廊下を走っていると、上へ進む階段の前に、飛び越えられない程大きな溝があった。
「…クソ……迂回するしかないな…」
「この大部屋から行けるのではないか?」
桜郎は大扉を指差した。確かに、階段の目の前にも大扉がある。どうやらこの大部屋は溝の向こうに繋がっているようだな。
「……よし…行こう!」
俺たちは大扉を開けて、大部屋に入っていった。




