悪神の城
「……此処に…悪神が…」
俺たちは悪神のいる城の目の前に立っていた、城は結構大きく、とても奇妙な形をした城だ。
「………入るぞ…」
「……ああ…」
「…ッ……」
目の前の大きな門を開けて、俺たちは城の敷地内に入っていった。中に入ると手入れの行き届いている庭があり、小鳥が鳴いていた。
「…………のどかだな」
「………………油断するなよ…」
そして庭を抜けて、目の前にある大きな扉を開き、俺たちは城の中へ入っていった。
「ようこそ、僕の城へ!」
声のする方向へ向くと、そこには悪神が立っていた。そして悪神の両サイドには、人形のような女性が立っている。
「お前か……世界を滅ぼそうとしている神サマは…」
「あぁ…その通りサ……それで?…YOU達は何しにこの城へ?」
「………お主を…止めに来た…!」
悪神の目の前へ飛び出して、桜郎が叫んだ。
「お主は……私の持つこの力を取り返し…この浮世に鉄槌を下そうとしているようだな…」
「ま、そうだネ」
「だが…そんな事を…何故する必要があるのだ?………人間が醜いからか?…愚かだからか?」
すると、その問いに対して悪神はクスリと笑って答えた。
「それもあるね」
「……たしかに…人間にも…醜い欲を持つ…愚かな者もいる…だが……全員がそうというわけではない!……お主は…ほんの僅かな愚者がいるというだけで…善人を含む無関係の人々諸共…屠るというか…!?」
桜郎がそう叫ぶと、悪神は納得したように手をポンと叩いた。
「………あぁ……確かにね………確かに一人のクズを殺すのにその周りにいる善人までも殺す必要は無い……」
「……………………」
「………よし!…分かった!……君のその言葉に心動かされたから世界に神獣を解き放って王達をイラつかせ…その隙に君を攫い…力を手に入れて世界をぶっ壊すのはやめるよ!」
その言葉を聞いて、桜郎は胸を撫で下ろした。馬鹿な、あの悪神がこんな説得に応じるはずは。すると悪神はクスクスと笑い始めた。
「……プフッ…」
「………?」
「アハハッ!!」
悪神は大声で笑い出し、その場で子供のように転げ回った。そして少しした後、突然無表情で起き上がった。
「嘘です」
「……え?」
「嘘…嘘です!……LIEでぇす!」
嘘か、やっぱりな。こんな説得なんかに耳を傾けるような奴ではなかったか。
「なッ…!?」
「…僕がなんで世界を滅ぼそうとするかって?……そんなの他愛の無い理由サ!」
「……そ…その理由とは…」
「………その理由はぁぁぁぁぁぁ…スゥゥ…ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
悪神は思い切り溜めている。その理由とは、一体なんなんだ……俺も気になる……
「けど君達はどうせ死ぬから話さなくて良くない?」
「なに…!?」
突然真顔に戻った悪神が、俺たちに向けて感情の無い声でそう言った。そして手を挙げようとした瞬間に、悪神はハッとなった。
「……いや…これで殺すのはやめよう…」
「…これで殺すのはやめるだと…?」
「うん!」
クスクスと笑いながら悪神は指を鳴らした、その瞬間に城が揺れ始め、耳鳴りもし始め、俺たちは体勢を崩した。
「な……何だ…!?」
「…フフッ……」
揺れが収まり耳鳴りも収まると、天井からパラパラと大量の埃が落ちてきた。
「……何が起きた…」
「いやぁ……君達はモンスターに惨殺されるのがお似合いかな…と思ってね!」
困惑する俺たちに、悪神はニコニコしながら言った。
「今ね…この城にモンスターを大量召喚した……君達はそのモンスター達に殺されるわけだ」
「……何だと…!?」
「…僕は君達がモンスターにズタズタに引き裂かれる所を…最上階で眺めているよ!」
そう言って悪神は階段を登っていった、そんな悪神に俺は言った。
「……上等だよ…モンスター倒して最上階に行って…お前を必ず殺してやる…!」
「………好きだよ…そーゆーの…!」
悪神は階段を登っていった。すると周りからそこそこの危険度のモンスターが囲むように歩いてきた。
「………桜郎…説得は駄目だったな…」
「……あぁ……すまぬ……」
「…気にするな……悪神はあんな奴だ」
涙目の桜郎に俺は言った。そして、蛇を見ながら刀を抜いた。
「……ここから先は俺たちの出番みたいだな…」
「…ああ」
「………桜郎…俺たちから離れるなよ…」
「……………うむ……」
悪神は俺たちを殺すつもりらしい、これで戦いは避けられないというわけだ。
「………この城は結構大きかったからな………10階はありそうだった…」
「…そこそこの妖が城中にいる…最上階へ参るのは骨が折れそうだな……」
「だが…行くしかねぇさ……なぁ…桜郎」
「……ああ………悪神を倒してくれ…」
俺たちは桜郎を挟み、モンスターから守りながらモンスターの海に入っていった、最上階を目指して。




