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霧に魅せられて



「……あの島に…悪神が……」


アネモスは、悪神の潜む島から少し離れた場所で止まった。


「…ここから先はボートで行くんだ……これ以上近付けば…悪神に気付かれる…」

「……サンキュー…悪いな…」

「…アネモスはここに止めておく……良い知らせを期待してるよ」


俺たちは船長と乗組員に礼をして、ボートに乗り移った。このボートは相手に魔法などで探知されないように、妨害魔法が施されている、ステルス爆撃機のようなものだ。


「よし…それじゃあ向かうぞ」

「ああ」

「…うむ」


ボートに乗り、魔法で作られたモーターを起動して、俺たちは悪神の島へ向かっていった。すると、向かっている最中に辺りに霧が立ち込めた。それによりアネモスはゆっくりと見えなくなっていった。


「突然霧が…」

「視界が悪くなったな…」

「……ああ…だが…島は薄っすらと見える…」


霧が立ち込める中、俺たちは島へ上陸した。上陸すると桜郎が俺に尋ねてきた。


「この島はそこそこ大きいが……悪神の元へ行く道は知っておるのか?」

「ああ、王達が千里眼的な魔法で偵察して作成した地図を貰ってる」


俺は桜郎と蛇が見えるように地図を広げた。確認してみたが、悪神は島の中央の平原に城を作ったらしい。


「この平原に行くのか」

「ああ」


城のある平原に行くには、目の前の広い森を抜ける必要がある。


「広い上に…霧が立ち込めているのか……迷わねば良いが……」

「……この森を抜けるのは…骨が折れそうだな…」

「だが…逆に言えばこの森さえ抜ければ城は目の前なんだ……気を引き締めていこう」


俺たちは霧の立ち込める森へと歩いていった。森に足を踏み入れたが、とても静かだ、モンスターでも襲ってくると思っていたが。


「静か…だな……」

「…妖の気配は感じませんね」

「……だが…静か過ぎて逆に不気味だな……」


森に入った途端、モンスターの気配は感じなかったものの、森は異様な静けさに包まれており、なんだか不気味に感じる。


「とにかく進もう……ゆっくりと進んでいたら夜になる……夜になれば面倒くさい事になるぞ…」

「うむ…それもそうだな…」


そう考えた俺たちは足早に森の奥へと進んでいった。そんな俺たちを嘲笑うかのように木々は揺れ、霧は俺たちを惑わすように包み込んだ。


「……ッ!!」

「うわッ!?」


俺は急いで桜郎と共に木へ隠れた、蛇も近くの木へ隠れている。そして突然の出来事に桜郎は困惑していた。


「…な……なんだ…!?」

「……この森にいるのは…俺たち()()では無いらしい…」


すると足元に、飛んできた矢が突き刺さった。さっきも矢が飛んできたから俺は隠れたのだ。


「……妖の気配では無い…」

「…モンスターではないな」


遠くから俺たちを攻撃してくる奴はモンスターではない、モンスターなら気配で分かる。だが、この気配は()()()()()()な……一体何だ…トラップか?


「とりあえず……進もう…」

「…ああ」


俺は刀で飛んでくる矢を落としながら、桜郎を蛇の元へ行かせた。そして、桜郎が蛇の後ろへ隠れたのを確認して、合図した。


「……よし…俺が矢を落とすから…蛇は桜郎を守ってくれ…」

「………うむ…」


飛んでくる矢を刀で落としながら、俺たちはゆっくりと前へ、一歩一歩進んでいった。少し歩くと、俺の目の前には、弓を引いている半透明な狩人が見えた。


そして、俺は鞘に刃を納めたまま腹に突きをすると、半透明な狩人はその場で腹を抑えて跪くと、淡く消えていった。


「なんだ…魔素を落とさないということはモンスターでもない…」

「幻影か…」


幻影、それなら説明がつくな、透明で淡く消えるし。半透明で幻影だとすぐに分かる幻影は、一体一体が召喚系の魔法の出力を低くして生み出されたという事だ。


「……つまり…?」

「…リアルな幻影と違って量産できるという事だ……この先で…大量の幻影が待ち伏せている可能性がある…」

「………成る程な」


出力を高くしたならば、半透明では無い上に強い幻影を生み出す事ができるが、それは行動範囲が限られている。だが、出力の低い幻影の行動範囲はかなり広い。


「……森の何処から行こうと…幻影とは必ず戦わなければならないな」

「…………桜郎様…離れぬように…」

「…ああ……」


蛇と俺はより一層、周囲を警戒しながら前へ進んだ。だが、さっきの狩人を倒してから一体も幻影が現れていない。


「………」


そんな時に、俺たちはあるものを見て息を飲んだ。


「……おいおい…マジか…」

「…多いな……」

「越えられるのか…?」


俺たちの目の前には何かの残骸があり、廃墟などがあった。しかしそんな事よりも、目の前の大量の幻影に目が留まった。


「……どうしたものか…」

「この数と戦うのはな…あまり暴れ過ぎると悪神に勘付かれるかもだし…」


悪神はどうせ、俺が魔術師に殺されたと思っている。油断しているという事だ、だから俺が生きていると気付かれてはならない。


「…バレないように進もう……」

「……うむ…」

「幸いな事に…残骸が死角になっていて進みやすいな…」













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