二人の怪物
「…武器…?」
「はい…武器を作ってもらいたいのです」
十郎が鍛冶屋のおっさんに言った。どうやらこのおっさんが三大鍛冶屋の一人、エミライト・スミスという人物だそうだ。そんな時にエミライトさんは俺たちの服を見て言った。
「…お!…その服…ディアンのサインがしてあるじゃないか!…アイツに加工してもらったのか!?…珍しいな…アイツがするなんて…」
「はい!…三大鍛冶屋の一人、ディアン・スミスさんに加工してもらいました」
「え?…あのオヤジ三大鍛冶屋だったの?」
ディアン・スミス…俺たちの服にしてもらった刺繍の下にD.Sという刺繍が付けられていたが…
「…ふむ……どんな武器がいい?」
「お任せします」
「なら…刀にしたら?」
壁にもたれかかっている青年が十郎に言った。
「…ほう…珍しく気が合うな…ワシも刀をオススメしようとしていたんだ」
「それじゃあ刀で!」
エミライトさんは立ち上がってハンマーを持って青年を呼んだ。
「よし…ウィル!…手伝え」
「…ああ」
「……使いたい魔素があれば今のうちに渡してくれ」
モンスターの落とす魔素は武器の素材にする事で通常の武器よりも強力になる。危険度が高いほどその魔素で作った武器も強くなるが…持ってないな…
「危険度Bモンスターの魔素をこれから取りに行きます、少し待っていてくれませんか?」
「「「え?」」」
俺とウィルとエミライトさんは思わず声を出した。危険度Bの魔素を取りに行く…?
「…B…といったら聖騎士レベルが倒せるモンスターじゃないか!…それにこの辺にそんなモンスターいない……あ!」
「…なるほど……騎士選抜試験か!」
エミライトさん曰く、騎士選抜試験を受けて、合格し、聖騎士に抜擢されると危険度Bモンスターの魔素で作られた武器が贈呈されるらしい。それを狙って騎士試験を受けるなんて言ったのか!
「…しかし…聖騎士になるのは大変だぞ?…なんせ合格者の中で成績が一番の者だけだからな!」
ウィルが心配そうに十郎の方を見た。
「…大丈夫です」
十郎はそう言い残して鍛冶屋を出ていった。俺は100%合格しかいから鍛冶屋に残る事にした。
「…十郎にできないことはない…どうせ聖騎士になって戻ってくるさ」
「……そこまで強いのか?」
「…アイツの強さを知ってしまったら……どんな格闘家や強い奴を見ても…小さく見えるんだよな…」
「そう感じる程強い…というわけか…」
……
「…それではお名前を…」
「サクラ・ジュウロウ」
十郎は受付で試験に参加して待機場所で待機していた。そんな時に隣に周りで座っていた男から話しかけけられた。
「…おいおい…ここは子供の来る場所じゃないぜ…?」
「へッ!…ここはいつから遊園地になったんだ!」
十郎は眉一つ動かさず、試験の始まりを待っていた、挑発されるのは慣れているのだ。
「…涼しい顔しやがって…」
そして開始の時間となり、参加者が呼ばれた。そこにいた男達は受付に案内され、会場へ移動した。会場には総勢100人程の男達が集まっていた。そして台の上に古傷だらけの男が上がって、男達に言った。
「…ここにいる者は…騎士を目指している者だろう…だが!…騎士とは強靭である必要がある!…そこで今から行う試験を受け…優秀な者のみを騎士に任命する!!…全力を尽くせ!!」
「うおお!!!」
辺りから歓声が上がった。そして傷だらけの男が降りると説明が始まった。
「…それでは試験の説明を行います。試験は三つあり、それぞれ剣術、魔術、格闘術の試験を行い点数を決めます。その点数が合格点以上であれば合格です」
『…魔術が厄介ですね…』
そして説明が終わり、試験が始まった。最初は剣術試験で、参加者は会場の外のグラウンドに出た。そこには五人の騎士が立っていた。
「…これから皆さんにはここにいる騎士と手合わせしてもらいます。敗北しても点数に影響はありません」
『…戦闘力を測ってみますか…』
十郎はスマコで騎士たちの戦闘力を測った。すると、騎士たちの戦闘力はゆうに200を超えており、参加者よりもはるかに強かった。
「…こい」
「………うおおりゃあッ!!」
「……」
最初の参加者が木刀を持ち、騎士に向かって走っていき、木刀を振るが軽く弾き飛ばされた。
「…ッ!」
「次!」
どの参加者も結果は同じだった。しかしそんな中、妖しい雰囲気を漂わせている美青年が騎士の前に立った。
「…ほう……良いオーラを漂わせているな…」
「……始めようか」
騎士は木刀を構えた、しかし、瞬きした時には目の前に青年はいなかった。
「…なに…!?」
「……僕の勝ちだね」
騎士の背後で、頭上すれすれに木刀を寸止めしている青年が立っていた。
「…う…嘘だろ…」
「何だよアイツ…」
周囲の目線が青年に向いている時、辺りに轟音が響いた。
「……くッ…」
「僕の勝ちでいいですか?」
十郎が騎士の木刀を弾き飛ばしていた。騎士の持っていた木刀は地面に突き刺さった。
「…あ…あのガキ…!」
「あのガキもすげぇ……」
今度は目線が十郎に向いた。青年も十郎を見ていた。
「…へぇ……良い眼差しをしてる子だね…」




