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受け継がれしもの



「…ッ!!」


男は目にも留まらぬ程の速さで、俺との間合いを詰め、斬りかかってきた。


「……くッ…!」


俺は地面を蹴って後ろへ下がった、男もすかさず後方へ下がった。これは、読み合いか。


『…さて……どうしたものか…』


この男、全くスキが無い。今、突然背後から知らない人に襲われても対応できる程の集中力を持っている。


『どう攻めるか…だな……』


俺は攻める瞬間を伺いながら、男を見ていた。年齢は不明、身長は170cm程、達人級、否、樹一郎さん級の剣術を持っている。この男、強いな。


樹一郎さんと見間違えるほどに、剣さばきが熟達している。


「…フンッ……読み合いは好かん………攻めてこないのなら…こちらから行くぞ!」


男が地面を蹴り、俺に攻撃してこようとした時、俺は全神経、全細胞、全臓器を総動員させた。


「……ッ!!」


俺は斬撃の嵐を受け流した、鉄と鉄のぶつかり合う音が辺りに何度も響き渡った。俺は不思議と、男と息が合っているかのように受け流していた。


「………フンッ…!!」

「…はッ!!」


最後に、トドメと言わんばかりの大振りな斬撃を剣でガードした。何という威力だ、腕がビリビリとして、剣の刃も小刻みに震えている。


「………ふむ…なかなかやるな……ミノル…」

「………アンタが…何で俺の名前を知っているんだ…?」

「そんな事はどうでもいい」


俺が尋ねると男はそう言った。すると男は俺の剣を弾いて刀を鞘に納めた。そして、鞘を腰から抜くと俺に差し出した。


「………何も言わず…貰い受けろ…!………必ず…お前の役に立つ…」

「……これは…やはり樹一郎さんの刀…何故……ッ…!?」


刀を受け取ってよく見てみたが、確かに樹一郎さんの使っていた刀だった。何故持っていたか、その事を問いただそうとしようと男の方を向くと、男はいなかった。


「……なんなんだ…」

「おーい!」


すると、戦っていた時の音を聞きつけてきたのか、蛇と桜郎が走ってきた。


「刃と刃の交わる音が聞こえたが……」

「……ああ…実はな……」



……



「……なるほどな…それで……その刀を貰い受けたのか…」

「ああ……この黒と白の刃…札の貼られた鞘…樹一郎さんの使っていたものだ…間違えるはずがない」


すると、刀を見ながら桜郎が妙なことを言った。


「そういえば…その刀は【神斬り】……と呼ばれたような…」

「神斬り?」

「……そうだ……昔…樹一郎殿が…その刀で神を斬った事から…そう呼ばれていた……」


樹一郎さん、昔はとんでもない事をしていたようだな。まさか神を斬っていたとは。


「…まぁ……ちょうど良かった…これからはこの刀を使わせてもらうとしよう」


俺は刀を腰に装備した。そしてこの刀は居合斬りに対応しているので、戦闘時には鞘を持って構える。


「今日の朝に思ったが…背中の剣……少し浮いていないか?……前は浮いてなかったのに…」

「ああこれか…これは磁力石(マグネストーン)という鉱石を使ったペンダントのおかげだ……このペンダントをしておけば剣を背中に装備できる……磁力の影響でな…」

「凄いな…そのような物があるのか…」

「ああ…最初は普通に紐を通して装備してたけど…モンスターの攻撃で紐が千切れたりするからな……さっきこのペンダントに変えたんだ」


謎の男から刀を貰い受けるというイベントがあったが、俺たちは港へ向かって歩き始めた。


「……その札…」

「…この札の事か?」

「ああ」


歩いていると、桜郎が鞘に付いている札を見ながら言った。


「……その札を見て思い出したが…とある札を貼り付けた武器で修羅を斬ると…人間に戻るという…」

「修羅?……人の業に取り憑かれた奴の事だよな?」

「そうだ」


この札は、桜郎の言っている修羅を浄化する札ではないのか。それじゃあこの札はなんなんだろうな。


「そんな物があるとはな」

「ああ」

「じゃあ、この札はなんなんだ?」


俺は鞘に貼り付けられた札を見た、そこには[天乃丸 仙考]と書かれていた。


「……あまのまる…せんこう…?」

「誰かの名前か?」

「分からん…」


謎は深まるばかりだ、この札がなんなのか。というか札なのか。


「考えるのは悪神を倒した後だ」

「うむ、そうだな」


ひとまず札の話は置いといて、俺たちは悪神を倒する事にした。



……



「…………」


港へ向かうミノルを見ている者がいた、それはフードを被っている男だった。


『……神斬り…果たして成し遂げるかどうか…………』


男は自身の右腕を見ながら考えていた。


「………いや…考えるまでもないな…」


そしてフードを脱ぐと、歩いていくミノルを見ていた。ミノルの背中の刀は妖刀のように妖しい雰囲気を醸し出しながらも、名剣のように凛々しいと感じる姿だった。


『……お前が俺のその刀で…【逆境返し】を悪神に食らわせる…その日を楽しみにしているぞ……』


男は、ミノルが地平線の向こうまで歩いて消えるまで見送った。











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