粉雪アイス
「受け取ってくれ!」
「いや…いらないって…」
村が襲われた次の日の朝、俺は宿で主人から宿に泊まる代金と、主人の故郷でもあるあのライン村を救った礼として、金を渡されていた。
「それでは気が治らん!……心配させた上に…村にまで来させ……しかも救ってくれたんだ……頼む…これは受け取ってほしい…」
「………そこまで言うなら…」
主人の渡してくる袋を、俺は渋々受け取った。袋の中には、150000G(15万円)が入っていた。
「…本当にありがとう……村を救ってくれて…」
「……どういたしまして…」
そう言って俺たちは宿を出た、すると、外では村人達が集まっていた。
「この御仁達を…盛大に見送るのだ!」
「「「おう!!」」」
村人達は道を開けた、俺たちが通ると、一人一人が俺たちに礼を言ったり、旅の応援をしてくれた。
「…ありがとう!」
「村を救ってくれて感謝してる!」
「旅、頑張れよ!」
「ちっこいボクも頑張れよ!」
「誰がちっこいだ!」
そうして、俺たちは村人達に見送られながら、歩いていった。
……
「……同じ景色だな…」
「もうすぐしたら見えてくるぞ」
歩きながら平原を眺める桜郎に俺は言った。すると、遠くの方に城のようなものが見えてきた。
「アレだ!」
「おお!…ついにここまで来たのだな…!」
それは、アルトリアの城だった。俺たちはそこそこ長い道を歩き、アルトリアに着いたのだ。
「……子供にしては…よく弱音を吐かなかったな」
「子供扱いするでない!……もう十歳だ!」
「子供だろ」
そしてアルトリアの入り口に歩いていくと、大きな門が出迎えた、扉は固く閉ざされている。
「……サクロ様御一行ですね」
「ああ」
「…こちらへ」
俺たちは屈強な兵士に案内され、門の横の小さな扉へ入っていった。
「…来たか……ミノル」
アルトリアの内部へ入ると、レクスが立っていた。
「…レクス……」
「実は悪い知らせがあってな」
「………概ね…馬車が使えなくなった…とかでしょうか…?」
蛇は近くの馬車置き場を見ながら、レクスに言った。
「…その通りだ……どうやら馬車で向かう港を囲むように…溝ができたらしくてな……それに道中でもモンスターが大量に発生している」
「溝とモンスターの大量発生か…」
レクス曰く、港を囲むように溝ができて、港に入るのはおろか、連絡すらできないらしい。
「……溝はおそらく神獣の仕業だろう…こちらが送った精鋭騎士団が帰ってこないからな…」
「…………問題ない…依頼を引き受けた以上…どんな事が起きようと悪神の元へ行って悪神を倒してくる」
「何か考えがあるのか?」
「ああ」
俺は躊躇わずに答えた、それほど自信があったからだ。
「…そうか……それならいいが…」
「……そういえば神獣は?…アイツらは一日に一回襲ってくるのだろ?」
「ああ、ついさっき来たから倒した」
「すげぇな……」
レクスのその言葉を聞いて、俺は改めて王達がバケモノだと思った。
……
「…港は……徒歩だとどのくらいなのだ?」
「……馬車で三時間程…………徒歩なら…一度は宿に泊まらないといけないな」
港までは、徒歩で一日程かかる、早くても半日だろう。
「うーむ……やはり遠いな…」
「まぁ…塔からアルトリアまでの距離よりも少し長いくらいだ」
俺たちはカフェで話していた、すると、桜郎がメニューを見ながら言った。
「…粉雪あいす……」
「あぁ…大人気のデザートだな……元は俺の世界の食べ物だけど…あまりの美味さからか神がレシピを人々に伝えたらしい」
「ほう…それほどのものなのか…」
桜郎は粉雪アイスを頼んだ、少しして運ばれてくると、桜郎は「おお!」と声を出した。
「これは…」
「いつ見ても美味そうだな」
運ばれてきたのは太陽に照らされ、キラキラと輝いている純白のアイスだった。
「…それでは…いただきます…!」
桜郎がスプーンですくって、口に入れた瞬間に目を見開いた。
「…うッ………」
「う?」
「う…美味すぎるッ!!」
突然、桜郎が立ち上がって叫んだ。
「……口に入れた瞬間に溶け…甘みが広がってくる……しかも食したのはほんの一口…だがそれだけで満足してしまう幸福感……それをこれ以上…食せば私はどうなってしまうのか…!!」
「いきなりどうした」
すると、それを聞いていたのか、近くに座っていた他の客が、店員に言った。
「…俺も粉雪アイス一つ……」
「すいません、僕も一つください!」
そして、それが引き金になったのか、客達は一斉に粉雪アイスを頼み始めた。
「………今日は粉雪アイスは売り切れだな」
「……………ああ……そのようだな」
「……まことに美味…」
桜郎と周りの客は全員、粉雪アイスを食べていた。
「…すいません……粉雪アイスあります?…二つ程…」
「申し訳ありません……つい先ほど品切れになりまして…」
ちなみに、俺と蛇は食えなかった。そのため、周りが粉雪アイスを食べる中、俺たちはずっと桜郎が食べ終わるのを無言で待っていた。




