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予想だにしない出来事



「……ッ!」


俺は背後から殺気を感じとり、背後へ斬りかかった。


「…おぉ……やるな…」

「……ワープもすんのかよ…」


剣は黒霧の体をすり抜けた。それはまるで、()()()()()()()()()ような感覚だった。コイツ、もしかして物理攻撃が効かないのか?


「厄介な野郎だ」

「うん?……野郎とな…?………我は男では無いぞ?…いや…かと言って女でもないか…」


黒霧はその場で首を傾げて自分が男か女かを考えている。俺はその隙に退魔の札を付けて剣を思い切り突いた。


「……ふむ…鞘に納めているからか…破壊力が増しておるな………しかしその力量…気に入ったぞ!」

「…チッ……避けられたか」


俺の突きを黒霧は避け、俺の突きはその背後にあった村の木をへし折った。俺は反撃を警戒してバックステップした、すると黒霧から突然、殺気が無くなった。


「…………やはり強いな…ミノル」

「……ああ…?」


そう言って黒霧は俺に向かってゆっくりと歩いてきた、そして家族と接するような穏やかな表情を浮かべている。


「………スキル無しでありながら…よくここまで強くなったもんだ…前よりも研ぎ澄まされてる……やっぱり才能かな…?」

「……なんだお前……何故俺がスキル持ちではないと知っている…?………俺のスキルの有無はお前に話していない筈だが」


俺は黒霧を睨んだが、次の瞬間、絶句した。


「………知ってるさ…俺もお前と同じ……スキルの無い無個性な人間だからな」

「……………莉子(りこ)…ッ……!?」


黒霧の姿は昔、魔族の実験台にされ、壊れたはずの莉子だった。


「…いや…俺を……騙しているな…さっきの主人みたいに顔を変えたんだろ…!」

「おいおい……寂しい事言うなよ………それじゃあ…何をしたら信じてくれるんだ…?」

「……お前の好きな漫画は…」

ファンタジー(F)ゴッド(G)ブレイカーズ(B)


俺の質問(問い)に、黒霧は即答で答えた。俺は次の質問をする。


「…好きな食べ物は」

「ポテトフライ」

「俺の得意な事は…」

「ゲーム……あぁ…その中でも特にF(ファースト)P(パーソン)S(シューター)が得意だって言ってたな…!」


全て、正確に答えていた。黒霧の正体は、リコだったのか?


「……………リコ…お前が本物だとして…何故モンスターなんかに…それに村を…襲って…」

「………モンスターになったのは魔王の実験……村を襲ったのも…その魔王の命令……従わないと…君が殺されるから…」

「…な…に…?……俺?」


リコは俯きながら言った。俺を、守る為に仕方なく村を襲っていたのか?


「魔王は俺の戦闘能力がどんなものか知りたがっている、その為に村を襲わせて確かめようとしているんだ」

「なんだと…?」

「……俺は家を燃やし…村人達を怯えさせた……そうでもしないと魔王は俺に情が残ってると思って君を襲うだろうからね………だけど死者は出さないようにした……なんとかね」


たしかに、見た感じ村人たちに死者は出ていない。死者を出さないって事は…コイツは…本当にリコなのか?……俺はもう八割程信じていた。


「……すまん…俺の為に……」

「いや、君のせいじゃない。弱かった俺のせいだ」

「…………莉子…」


俺は素早く地面を蹴り、黒霧に面打ちした。


「…がッ……くッ!?」

「………有難う…()()とはいえ…友と話をさせてくれて……」

「なッ……何故…」


黒霧はその場に倒れた、そしてそのまま動かない、いや、動けないのか。


「……幽霊系モンスターの肉体を麻痺させる効力を持つ札だ…この札を貼った武器はその効力が付与される」

「…何で…なんで……記憶を読み取って……確実に……確実にリコを()()()のに……!?」


倒れている黒霧に、俺は屈んで答えた。


「…アイツは……俺を信じてくれてるからな」

「信じて…くれている…?」

「ああ………お前は俺に「強い」と言ったな……そうだよ…本物のリコも俺の事をいつも[最強][スキルを持たない剣聖][剣王]と言って褒めていた」


そして俺は、黒霧に叫んだ。


「リコは俺を最強だと思ってたわけだ!……だから本物のリコは…魔王が俺を襲うと言っても魔王に従わない筈だ!…俺が襲われても……最強だからきっと勝てると…信じるような奴だから…!」


そう叫ぶと、黒霧は頭を下げた。


「俺の事をただ強い…ではない……心の奥底から最強だと慕ってくれていたんだ」

「……クソ…記憶の奥底を見ていれば良かった…」

「お前は記憶を読み取るが…どうやら読み取っていたのは…リコの表面だけだったようだな」

「ミノル!…無事か!?」


そして、丁度良い時に桜郎と蛇が俺の元に走ってきた。


「……今…終わった所だ」

「…………そうか……しかしこの者を本当に斬らなかったのだな…」


桜郎は俯く黒霧を見ると、笑みを浮かべて呟いた。












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