炎に包まれしライン村へ
「…日が暮れてきたな」
歩いていると、夕陽は沈んでいき、段々と暗くなっていった。
「あの宿に泊まろう」
「……そうだな」
俺たちの目の前にはごく普通の宿があった。俺たちは宿に入って、ギルド戦士のようにガタイの良い主人に話しかけた。
「泊まりたいんだけど、人数は三人で」
「三人ね、料金は先払いで100Gだ」
「分かった」
結構安い事に驚いたが、俺は金を支払って部屋に入った。比較的に1000Gくらいはする筈だが、安くついたな。
「……左腕…どうしたんだ?」
「…怪我でな」
主人は左腕を動かさず、右腕だけ動かしていたから気になった。そして、俺たちは部屋に入っていった。
「……安い割には良い部屋だな」
「良き寝床だ」
桜郎はフカフカのベッドで寝転んでいる。少しして、部屋にノックをして主人が入ってきた。右腕で器用に料理を運んできた。
「あまり良い食材では無いが飯だ」
「ああ、サンキュー」
「……それと…ついさっきこの近くの村で何か騒ぎがあったらしい……知り合いがいるし心配なので様子を見てくる……数分後には戻る」
そう言って主人は足早に宿を出ていった、近くの村で騒ぎか。モンスターの群れが来たとか?
「まぁ、俺たちには関係のない事だ」
「…………少し気になるな…」
「……村の事が…ですか?…」
桜郎が呟くと、蛇が桜郎に尋ねた。すると、桜郎は不安げな様子で答えた。
「主人が向かった村は恐らくライン村だろう……実はその村の辺りには……[黒霧]と呼ばれる凶悪なる妖が潜むと言われていてな…」
「黒霧……」
村で黒霧が暴れているかもしれない、という事が言いたいのか?
「………主人が数分経っても戻らない時に行ってみよう」
「……そうだな」
「すまぬ……どうしても心配だったのだ………もしかすると黒霧が村を襲っているかもしれぬと思うと…」
「まぁ…心配になるな」
桜郎の言っている事も分からないわけではない。なので、俺たちは主人が帰ってくるまで起きている事にした。
……
「……遅いな…」
「…ああ……」
既に10分以上は経っている、だが、帰ってこない。これは、もしかして。
「………行くか…?」
「……ああ」
「私も…」
「危険だ」
ついて来ようとする桜郎に俺はそう言った。
「……モンスターがいるかもしれない…ましてや黒霧なんていたら最悪だ」
「待て、桜郎様を一人にする気か」
俺がそう言うと、眉間にしわを寄せて、蛇が口を挟んだ。
「…………なに?」
「某やお主が桜郎様から離れ……その隙に悪神に奪われたら………妖がこの宿に来ないとも言い切れぬ」
「………」
確かに、それも一理あるな、桜郎を一人にするのは危険だ。妖が来るかもしれないし、何より忘れかけていたが、悪神は桜郎を狙っている。
無いとは思うが、桜郎が俺たちと行動を共にしている事を知り、俺たちが離れている間に襲う可能性があるしな。
「……分かった…だが…絶対に離れるなよ」
「分かっておる」
俺たちは宿を出て、村へ向かった。辺りはもう真っ暗で、よく見えない。
「………フンッ…」
右からモンスターの気配がしたので、俺は剣を抜いて縦に振った。
「イギッ!?」
そのモンスターはゴブリンだった。おかしいな、この辺りにゴブリンは生息していない筈だが。
「……どういう事だ…何故ゴブリンが…」
「……………」
俺たちの脳内に不安がよぎった、だからか、俺たちは足早になって村へ走っていった。
……
「おいおい、マジか」
村には火がつけられ、深夜だというのに昼間のように明るかった。
「……火は村人が消火している……問題はモンスターだな」
「…一先ずは妖を斬るぞ」
「………だな」
俺たちは暴れているモンスターを斬った。ゴブリン、オーガ、サラマンダー、どれもこの近くには生息していないモンスターだ。
「しかし……何故この村に来たんだ…?」
そんな時、俺はふとモンスターの顔を見た。そして、気付いた。
「………なるほどな…」
「何か分かったのか?」
「…ああ……」
モンスターの目は、黄色に光っていた。これは、何者かの魔術か何かで操られている状態だ。
「……という事は…その何者かが……村を襲えと命じたのか?」
「………ああ…多分な……」
「だが、その者は何処に」
「近くの筈だ」
自分以外の生物を操る魔術とかは大抵、離れると解除される。恐らくこの村のどこかにこの村を襲った奴がいる筈だ。
「……モンスターを操ってる奴を探すぞ」
「…そうだな」
俺たちはモンスターを倒しながら、その人物を探す事にした。そんな時、俺たちを呼ぶ声が聞こえた。




