地獄道
「……クソ…」
桜郎と蛇が落ちていった、大丈夫だろうか。いや、大丈夫なわけないか。
『…とにかく先へ進むしかない……こんな大きな音のした場所にいればモリンシに囲まれる…』
俺は急いでその場を後にした、そんな時にまあまあ近くからモリンシの足音が聞こえた。
『……複数いるな…相手にするのも面倒だ』
近くの扉を開けて、俺はその部屋に入った。その部屋は血がそこら中に飛び散っており、中央には死体があった、まだ新しい。
『…ここに来た奴か……首都にいれば安全だろうに……ん?』
その死体の男はリュックサックをしており、中には食料、飲料、地図、ライターなどのサバイバルに必要な物資が大量に入っていた。
『……首都から出てきたのか…それとも首都を目指していたのか……今更聞けないか…』
俺は扉の外からモリンシの足音が聞こえなくなった事を確認して、出ようとした時に男のポケットに入っていたレコーダーが見えた。
『…レコーダー…?』
俺はそれを再生してみる事にした。再生すると、少しノイズが入るが、男の声が流れた。
……
このボイスレコーダーを拾ったものへ、私はマリアン大学で教授をしていたホーキンスだ。今は訳あって、首都の外でのんびりと暮らしている。
首都へ行こうとしている者へ、このレコーダーを残す。ハッキリ言おう、やめておけ。首都は安全と言われているが、それは真っ赤な嘘だ。
確かに感染者はいない、感染者はな。ただ、スラムと化している。感染者とは戦わないで済むが、首都で暮らすには人間と戦う必要がある。人間と感染者だったら感染者の方が良くないか?
人間と違って感染者は知能が低い。長年殺してると、パターンが読めてくる。だから悪い事は言わない。引き返すんだ。
今のこのアメリカに安全な場所は無い。私はあの忌々しい首都で娘を弄ばれ、殺された。今はコロラド州の辺鄙な街で暮らしている。感染者もだいぶ始末したから少ない。
あの首都の暮らしよりは最高だ。近くの川から水を汲まなければならないのはこの老体には辛いがな。ああ、食料は野菜があるから困らない。ベジタリアンだったのが功を奏したな。
まぁ、それでも首都に行くのは自由だ、だが私はもう行く事はない。このレコーダーを聞いて少しでも命を賭して行くべき場所では無いという事を知らずに首都に行く人が少ないくなるよう、願っている。
……
『…老人では無いからこの男はホーキンス教授ではないな……という事はこの男と仲間は首都を目指している途中にこれを見つけて戻ろうとしたのか?』
このレコーダーを持ってるという事は音声を聞いた筈だ。
『……まぁ…とりあえずはこの街から出るか…』
俺がレコーダーを倉庫へしまうと、男の胸ポケットで何か光っていた。
『なんだこれ…』
胸ポケットを探り、取り出すとそれは鍵だった。
『鍵……だが何の鍵だ…?』
俺が鍵を眺めていると、腰に無線があった。俺は何か出口に関する情報がないか、スマコで読み取って会話記録を読み取った。
“この倒れてるビルが遮っている街の入り口にフェンスが設置されてる。多分、この街で暮らしてた奴等が作ったものだろう、その鍵は手に入れた。急いでこの感染者だらけの街から出るぞ”
この先に街の出口がある事は知っていたが、フェンスがあるのか、だが、この鍵で開く。運が良かったな。
『よし、出口を探そう』
俺は扉の外にモリンシがいないかを確認して、外へ出た。スマコの地図は内部を映し出す事はできない。脱出方法は自力で見つけるしかないというわけだ。
『……あれは…エレベーターか』
歩いていると、目の前にはエレベーターがあった。エレベーターのドアを開けると、エレベーターは下まで落ちていた。
『…このロープを伝っていくか』
俺はロープを掴み、上へ登り始めた。しかし、少し登ると、古びていたからか、嫌な音が聞こえた。
「……っべ…」
掴んでいるロープが音を立てて千切れていく、俺は横に見えた、開いているエレベーターのドアへ向かって飛び移った。飛び移った後、ロープは千切れた。
『…危なかったな……』
階層を見ると5階上がっていた、たったの5階か。だが、その階からはモリンシの足音や声が聞こえない。どうやらモリンシはいないようだ。これで安心して探索できる。
『……さて…片っ端から部屋を見て回るか…』
俺は一番近くの部屋を開けた、その部屋は半壊しており、小さな穴が空いていた。しかし、突然の揺れで穴の空いた部分は壊れ始めて、俺が出られる程の大きさとなった。
『ここから出られる……地震か…?……何という偶然だ…運良いな…』
まさか最初に開けた部屋から出られるなんてな、運の良い事だ。俺はロープを引っ掛けて、下へ降りていった。
『…桜郎と蛇が心配だな……無事だといいが…』
俺はロープから降りて、地面に着地した後にロープを回収した。




