一方通行
「……景色が変わらないな…」
まぁまぁ歩いた、しかし、アメリカの首都以外はほとんど壊滅してるからかビルの残骸の山はまだまだ目の前に広がっている。
「…………これはなんだ?」
「あ…?」
桜郎は自身の足元に落ちていた本を手に取った。それはどうやらガイドブックのようだ。
「……大きな石の像だな」
「それは……自由の女神だな」
本には観光地が記されており、桜郎の開いたページには自由の女神が載っている。
「…俺の元いた世界にある観光名所だが…この世界にもあるんだか…まぁ…俺の元の世界と酷似してるしあるか」
「……異界の名所か…もし異界から異界へ行ける術や道具が誕生した際は是非行ってみたいものだな…!」
異界から異界か、これが一般的になれば色んな世界にも行けるのかな。行けるとして、少し違うだけでモノは一緒な平行世界は行けない、じゃあ概念的なものが全く異なる、テオロンみたいな世界には行けるって事だよな。いや、今はこんな事考えている時では無いな。
「……首都まで残り10kmだ」
「…!……妖か」
蛇の声に反応して俺は前を見た、すると、モリンシがこちらに走ってきていた。
「蛇!…右側頼む!」
「…御意」
俺は素早く腰にぶら下がった手斧を手に取り、心臓めがけて振り下ろした。
「ブジュラッ!!」
蛇も、刀を抜いてもう一体のモリンシの心臓を突くと、そのまま水平斬りにつなげた。
「ゴジョッ!」
そして、二体のモリンシは液体化して。それを確認して、俺達は武器をしまった。
「…その斧……武器だったのだな」
「ああ、突発的な戦闘では素早く抜ける武器で対処しなければならない、それに多人数でもないのに大振りな剣を振ると体力の消耗が激しいからな」
「ほう…」
俺の背中の剣、実際は多人数用だ。まぁ、テオロンは広い平原が多いから、俺とモンスターが気付いて襲ってくる間に抜けるし、比較的扱いやすく、射程距離も長いから背中の剣を使っているが。
この世界はそこら中に瓦礫の山があるし、足場が悪い為、踏み込みなどができない分、少なからず行動が制限される。だからこういう時は最小限の動きで敵を倒せるこの手斧の出番だ。
「まぁ、だからこの世界では手斧を使う事になるな」
「成る程」
そして、モリンシを倒した俺達は再び前へ進んだ。そんな時に夕日が見えた、来た時は昼だったが、どうやらそろそろ夜になりそうだな。
「……暗くなる前に安全な場所に行きたいものだ」
「それでは、あの倒れた塔の先で休息しないか?」
桜郎が目の前で少し傾いている巨大なビルを指差して言った。
「……あのビルの先は高速道路……おそらく首都に繋がる道がある…その道で焚き火でもしようか」
「…そうだな」
「うむ!」
そうして、俺達はビルへ近付き、中へ入っていった。入り口は何者かに塞がれており、入れなかったので、少し遠回りして、瓦礫の山の上から飛んで、20階の窓から中に入った。
「……道に行くにはこの中を通る必要がある…なんとかして出口を探そう」
「…ああ」
「しかし…暗いな……」
ビルの中はとても暗く、2m先は見えない。これでは危険だな。
「……全員分のライトペンダントを持ってる…」
「気が効くな」
懐中電灯の光くらいまで光るライトストーンという鉱石、これをペンダントにすれば暗い場所も照らしてくれるランタン代わりとなる。ライトペンダントはそうして作られたものだ。
「それじゃあ進もう……だが…通路は狭いし…いつ敵が襲ってくるか分からん…みんな気を付けろよ……」
「ああ」
「……分かっておる」
ビルの中は酷く荒れており、廊下には紙が散らばっている。そんな時に俺の足に何か付着した。
「……死体だ…」
「…………古くはないな……」
「…と…というと…」
「……つい最近殺されたって事だ」
死体の服にはあのモリンシの液体が付着している、どうやら、このビルにはやはりモリンシがいるようだ。
「……ちょっと待て」
「どうした…?」
俺は死体の握っていた無線機を拾った、そして、それをスマコで読み取り、どんな事を話していたか調べて、思わず息を飲んだ。
「………………最悪だ…」
「……どうした…」
「…この死んでいる人……どうやら仲間とこの場所へ来て……複数のモリンシにやられたようだ………」
「……なに…?」
音声は仲間との会話だった。仲間と少し会話している時にその仲間はビルの外で大勢のモリンシに襲われた、その時にその大勢のモリンシを引き連れてこのビルに逃げ込み、最後は殺された。だから、このビルには大量のモリンシが潜んでいる。
「……厄介だな…」
「ああ……このビルを通り抜けるのが難しくなったぞ…」
俺は斧を抜いた、もしかしたらこの先にその大勢のモリンシがいるかも……そんな時だった。
「何だ!?」
「ゆ…床が…!」
突然床が崩れ始めた、マズイ!
「う…うわぁぁ!!」
「桜郎様!!」
崩れる床に足を取られた桜郎が、落下し蛇も、桜郎を守ろうとして、落ちていった。
「お…おいおい…嘘だろ…!?」




