荒廃した世界で
「……君達…いつまでやられたフリをしてるんだね?」
「…………監督…この人達……気絶してますよ…」
「……え?」
監督はその部屋で棒立ちしているカメラマンに尋ねた。
「何があった!?」
「………三人が幽霊と戦うシーンを撮影してたのですが……」
カメラマンは二人の青年の事を話した、監督と男は信じられないという表情を浮かべている。
「……だが…もしそれが本当だとしたら……どこに行ったんだ…その青年達は…」
「あの…扉の奥へ……」
「馬鹿な…!」
監督はその扉を見て、カメラマンに言った。
「この扉はセットだ!…開く筈が…」
「そんな……それじゃあ………あの人達は…」
「………すいません!…遅れました!」
走ってきた青年達が監督に平謝りした。その青年達は三人の霊能力者を演じる俳優だった。
「……な…に……」
「…え?」
監督と男とカメラマンは映像と青年達を見比べていた。青年達は田中達とよく似た衣装を着ており、顔もそっくりだった。
「……顔も…衣装も似てるが……」
「…………ど…どうなってんだ!?」
「とにかく!…この事を上に報告するぞ!」
この事件は[地球(本線)]トラベラー達がいた世界で初、ドッペルゲンガーが目撃されたとして、都市伝説に新たな一ページが追加された。
……
「……またかよ…」
俺達が入っていった扉は消え、また変な場所に出た。
「………ここは…」
「…荒廃しているようだな」
周囲を見渡すと、空は灰色で、ビルなどの残骸がある、まるで世紀末のような雰囲気だ。今度はなんだ?未来の地球か?
「…とりあえず……辺りを探索してみるか」
「……そうだな」
地面もビルの残骸だ、気を付けて歩かないと怪我するな。
「気を付けろよ……地面に尖った瓦礫があるかもしれない」
「うむ…」
瓦礫の地面を進んでいくと、目の前で焚き火をしている人が見えた。
「人だ…」
「おーい!」
俺はその人に声をかけた。すると、その人は俺たちの方を向いた。
「………」
「…なんだ……」
その人は立ち上がり、クネクネとこちらに走ってきた。
「おかしい……人の腕が…足が…あんなクネクネと曲がる筈がない!」
「妖だ!」
桜郎の言う通り、それは人間ではなく、モンスターだった。顔や身体はヌメヌメとしている。
「なんだコイツ!?」
俺は急いで剣を抜いて、そのモンスターの胸を斬った。
「グジュル…」
そのヌメヌメしたモンスターは消えずに、液体化した。
「……見たことのないモンスターだな」
「ここも異界のようだ」
俺はスマコを起動してマップを開いた。
[オルーン]
[地球(本線)]と酷似した世界だったが、戦争で使った生物兵器のウイルスが世界中に散布され、文明が崩壊した。生物兵器とは、死なぬ肉体を持つ生命体だったが、生命活動を維持している時にウイルスを撒き散らし、感染した人間を化け物に変える。それによって国々は一時休戦し、ウイルス根絶を目指すようになった。しかし、世界の国々の首都以外は感染者が溢れる地獄と化している。
「……要するに…首都以外は危険だという事だ」
「…それでは……安全な都へ行くのか?」
「まぁ、そうだな」
どうやら、とんでもない世界に飛ばされたようだな。しかし、これが未来の地球ではなくて安心したぜ。せっかく地球に帰ってこれてもこんな未来が待ってるなんて嫌だからな。
「……それで…その都の場所は…?」
「…マップを見たが……近くはない…」
ここから最短で着く首都はワシントンD.C.、アメリカの首都だ、という事はここはアメリカという事だな。
「……ここから…12kmの場所だ」
「…二里と十九町ほどか」
ここから12km、しかも道中にはモンスターがいる。それにそのウイルスは感染するとも書かれていた。だが、肝心の感染の原因が分からないな。
「……感染しない為にも…この感染の液体を調べて感染者の事を知っておこう」
「ああ、確かにな」
俺は液体をスマコで読み取った、すると、感染者の情報が出てきた。別世界の生物にも使えるんだな。
[ハルマ・モリンシ]
生物兵器ハルマの胞子を吸い込んだ生物。モリンシに変異すると身体が変色し、表面がナメクジのようになる。ハルマと違い不死ではないが、とてつもない生命力を持つ。心臓を破壊すると即死する。
「…弱点は心臓……確か俺はさっき心臓のある胸を斬った………だから一発で倒せたのか…」
「ふむ……斬る時狙うは…心の臓か」
「……感染という事は…この者達は…元は人間だったのだな…」
桜郎が液体化したモリンシを見ながら呟いた。
「…残念だが……感染者に意識は無い……死体が動いているだけだ」
「……この世界の者は…戦で勝つ為に兵器を創り……関係のない民に害を為した…」
「………そうだな」
「……………何故人は…そうまでして戦いをするのだ…」




