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「しかし…どうしたものか……」
「元の世界に戻るには………一旦最初に来た場所に戻ってみるか?」
「……それがどこか…もう分からぬであろう…」
「大丈夫だ、目印を置いておいた。ほら、この地面に…………無いッ!?」
俺達が立つ地面には目印どころか、地面そのものが無くなっていた。
「う…うおお!?」
「…な……一体!?」
「桜郎様!」
そのまま俺達は落下した、下は見えない。
「みんな!!…掴まれ!」
俺達はお互いの手を持ち、落下していった。
……
「……ッ…」
目を覚ますと、辺りは墓場だった。墓場といっても、本格的なのではなく、オモチャ、小道具のような墓だ。まるでそう、ハロウィンのような。
「ここは…」
「また……異界へ流れたようですね…」
俺はスマコでこの場所を調べようとした、その時に何処かからか声が聞こえた。
「ハッピーハロウィィィン!!」
「な、なんだ!?」
声の方向を向くと、作り物のような空の元に、大きな館がそびえ立ち、その屋根の上でカボチャのように明るい満月に照らされている者がいた。
「……ハロウィン?」
「…確か…神無月にある収穫祭がはろうぃんと呼ばれる…とは聞いた事があるが…」
「そう!そのハロウィンさ!」
屋根に立つ者が俺達の目の前に降りてきた。
「……ハロウィン…」
「これからこの館でパーティが行われる……どうだい?…一緒に楽しまないか?」
カボチャを被った奴はそう言って手を差し伸べた、唐突だな。
「どうするんだ?」
「……怪しいな」
「まぁまぁ、見るだけでもいいからサ!」
そう言いながら俺達を半ば強引に館に案内された。
「……さぁさ!…入って!」
「………強引だな…」
館の扉が開いた、中は真っ暗だ。
「…パーティは?……ッ!?」
「ハッピーハロウィーン!」
俺達はその瞬間、後ろから押されて館の中へ入れられた。そして、扉は瞬く間に閉まった。
「クソ!」
「……怪しいとは思っていたが…」
「宴は無いのか……」
その時、明かりがついた。
「うッ…」
「……なんだコイツら…」
俺達の目の前には幽霊が無数に立っていた、それも俺達に敵意剥き出しで。
「……マジかよ…」
「…くるぞ……」
蛇は刀を抜こうとした、俺はそれを急いで止めた。
「待て!…幽霊系のモンスターは物理攻撃を無効化する……これを使うんだ」
俺は手袋を出して、蛇に渡した。
「…これは……」
「対幽霊の魔法を付与したグローブだ。幽霊は対幽霊魔法を付与している武器でしか攻撃できない……そして…その魔法を付与しているのはこのグローブしかない…」
「……素手で戦う…か」
俺達はグローブをはめて、幽霊と対峙した。
「……桜郎様…下がっていてください」
「これで、コイツらを倒すぞ!
そして、幽霊に向かっていった。俺はまず、目の前の幽霊達に殴りかかった。
「オラァ!」
すると、幽霊達はいとも容易く倒れていった。どうやらあまり強くないようだ。
「このまま全滅させるぞ!」
……
「……なんだか拍子抜けだったな」
俺達の周りには大量の幽霊が倒れていた。何故消えないんだ?……そして、気付かなかったが、黒い服の男が立っていた。手にはカメラを持っている。やはり異界のようだな。
「…アンタもあのカボチャ野郎に唆されたのか?」
「…………」
男は絶句していた…どうしたんだ?
「……まぁいい…さっさと出るぞ」
「…そうだな……アンタも来るか?」
「……………いや…」
「そうか」
俺達は急いでその場から離れて、目の前の扉に入っていった。
……
「……カット!」
その声が聞こえ、カボチャを被った男はカボチャを取った。
「終わったか…」
「ああ…お疲れ様」
「これで…撮影は全て終了ですよね」
「…うん」
監督は撮影している映画のストーリーを見た。この映画はどうやら三人の霊能力者が、ハロウィンパーティに招待される。怪しみながらもパーティに参加するが、それは霊能力者達を恨むゴースト達の罠だった。三人の霊能力者は無事に生還できるのか!?…というストーリーだ。
そして、三人の霊能力者が館に入り、幽霊に襲われるシーンが最後の撮影だったらしい。
「おーい!……君達も…もう出てきていいよ!」
監督は館の扉越しにそう叫んだが、誰も出てこない。
「…おかしいな」
「見に行ってみます?」
「そうだな」
監督と男は館の扉を開けた。
「……すまないね…リアルさを求める為にセリフは全てアドリブなんていう無理難題を押し付けて」
「……アドリブにしては演技が素晴らしかったですよ」
すると、目の前には大量の幽霊役の役者が倒れていた。
「……もう終わりだよ」
「起きても大丈夫ですよ」




