気殺
「ここまでとはな」
俺達は奪われた武器を回収する為、見取り図を見ながら武器庫へ行った。そこには銃、槍、刀など、あらゆる武器が置いてあった。
「…おっ……あった」
「…………」
奪われた武器を回収した。蛇は刀を鞘に納めたまま、木刀を手に取った。
「……どうした?」
「…某は人を殺める事ができぬ身…木刀が刀の代わりなのだ」
蛇は木刀を見ながら俺の問いに答えた。そして、俺は人を殺める事ができない身、その理由を尋ねた。
「…何故?」
「……“人と刃交えし刻、一欠片であろうと慈悲を忘るべからず、お主も人なれば”………桜郎様は…人と刃を交える時…慈悲を忘れてはならぬと言った」
蛇は木刀を両手で持ち、俺の方へ向くと言った。
「……桜郎様は人と斬り合う時…命を斬るなと言った…それならば……」
「だから木刀で戦るのか?」
「…気の両断なれば……桜郎様は何も言うまい」
たしかに、人を斬るのは俺も嫌だな。人はモンスターと違って魔素にならない、即ち、死ねば終わりだ。
知能の無いモンスターなら俺も斬る事ができる。だが、人は斬れば悲鳴を上げ、苦しみ、のたうち回って死ぬ。俺みたいなトラベラーは全員、人を殺す事はできない。
「たしかにな、人を斬る事が平気な奴になれば終わりだもんな」
思えば、この世界の人々は殺すという行為をしない。モンスターは気絶させようが殺そうが消滅するから死ぬという概念が無いとして、あの人魔戦争では、死者数ゼロだ。
だが、おかしいな、一人くらいは殺しをしそうな奴がいてもおかしくないのだが……今まであった人みんな…理由を付けて非殺傷、不殺をする……
なんだか…この世界では殺人…殺害…そういう事ができなくなっているような……
「……田中…どうした」
「いや…何でもない…」
俺は蛇の声を聞いてハッとなった、そして、俺も木刀を持って儀式の行われる場所へ行った。
……
「…儀式は今夜だよな?」
「ああ、あと数分後……ッ!?」
俺たちは儀式の間の入り口に歩いていった。二人の男がそんな俺たちを見てギョッとする。
「お…お前たちは!?」
「…桜郎を…連れ戻しにきた」
「桜郎様はこの中か」
「こ…この!」
男達は俺たちに向かって刀を振りかぶった、素人となんら変わりないな。
「…奮ッ!!」
「ッ!」
俺は木刀を男の頭上に、一文字に振り下ろした。いわゆる、剣道でいうところの面だな。
「ぐわかッ!?」
「なッ……はや…」
そして、ビビったのか立ち止まった男を蛇が木刀で叩き斬った。そして、男は吹き飛んで、儀式の間の引き戸を破壊した。
「な…!?」
「お前らは!?」
大勢の村人たちがそこにはいた、そして、目の前の祭壇らしきものの上には桜郎が寝かされている。
「……桜郎を返すのなら…見逃すぜ?」
「…儀式を害する愚か者共が」
祭壇の前で座る村長が手を上げると、俺たちに向かって手を振り下ろし、叫んだ。
「切り捨てるのだ!!」
「「「…おお!!」」」
その場の村人たちは剣やら槍やらを持って俺たちの方を向いた。
「……多いな」
「………だが…やるしかない」
俺たちも木刀を構えた、村人たちは俺たちへ向かってくる。
「オラァ!!」
「奮!!」
俺は向かってきた3人の村人のうち、両はしの村人の横腹を叩き斬り、真ん中の村人を面打ちした。
「このぉ!!」
「ふッ」
蛇の方に向かってきた二人の村人の武器を蛇が木刀で破壊して怯んでいる隙に叩き斬った。
「こ…コイツら!!」
「戦い慣れしている!?」
村人たちは少しビビっている、しかし、すぐに大勢でゆっくり、ジリジリと向かってきた。
「フクロにしろ!」
「数で押せ!」
数は40人程で、先頭は槍持ち、後方には剣。長さ的的に木刀よりも長い槍が前にいると厄介だな。
「蛇…下がってろ」
「……ああ」
「なんだ?…一人だけ前に出てきたぞ?」
「油断するな」
俺の前まで来た村人達は誰も俺を攻撃してこない、どうやら慎重になっているようだ。そして、一人の村人がしびれを切らし、俺を槍で勢いよく突いた。
「ありがとな、狙い通り一人だけ突いてくれて」
俺は槍を掴み、引っ張った。転んだ村人を足で踏み、気絶させた。
「……全員で突くべきだったな…まぁ…だとしても避けるけどな」
俺は槍の先端に付いている刃をその根本から折った。これでただの棒だ。
「……せいッ!!」
そして、思い切り槍を振り回した。後方の村人は下がるが、前にいた槍持ちは倒せた。
「……さて………剣 対 剣…これでフェアだな」
「…あの速さの槍を見切って掴むとは……やるな」
蛇と俺は残りの村人達の前で構えた、残りの村人達はほぼ戦意喪失している。




