表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/457

トラブル、それは唐突に



「なんだと…!?」


この()()は俺たちのいたライド大陸、レイド大陸のあるテオロンではなかった。


[地球(武器有)]


日本で一般人でも武器の所有が可能で、決闘なども可能になっている[地球(本線)]の並行世界。この世界の日本には本線と比べて、異質で、奇妙な風習や文化が根付いている。


「……並行世界…」

「…異界…というわけか…」

「……………道理で見たことの無いものがあった訳だ…」


地球の並行世界、どうやらこの地球の日本には銃刀法違反が無いらしい、物騒な事だ。それにしても、俺達は武器を持っていたのに警戒されなかった理由はこれか。


「…して……この異界をどう出ようか…」

「……最悪の場合はこの世界で暮らすことになるな…」


俺たちが出る方法を考えていると下の階から、オッさんの呼ぶ声が聞こえた。


「晩御飯ができたぞ!…食うか?」

「ああ」

「……まずは腹ごしらえだな…」


部屋から出て、俺たちは居間に向かった。食卓の上にはご飯が並べられている。


「……おお!…これが異界の飯か!」

「冷めないうちに…」

「戴きます!」


桜郎はお腹が空いていたのか、食べようとして、箸を持った。オッさんはそれを見て、無機質な笑みを浮かべている。


「……蛇…」

「………うむ」


蛇は桜郎がご飯に手をつける前に食卓から離した。桜郎は目を点にしている。


「ど…どうしたのだ?」

「……お主…飯に何を()()()…?」


その瞬間にオッさんは俺に何か煙玉のようなものを投げつけた。


「くッ!」


この匂いは、睡眠薬か。くそ、まさかこんな事になるとはな。


「テメェ!」


その刹那、俺の後頭部に激痛が走った。俺は倒れて、意識が飛びそうになったのを堪えた。


「……お主ら…」


ぼんやりとする意識の中、蛇は桜郎を守ろうと刀を抜いた。しかし、蛇もこの狭い部屋で刀を振れるはずもなく、スタンガンらしきもので攻撃され、倒れた。


「蛇!…田中殿!」

「…こっちへこい」

「離せ!」


桜郎の腕を男が引っ張っている。桜郎は必死に抵抗するが、平手打ちを食らい、どこかへ連れていかれた。


「…さ……桜郎…様……ッ…」

「……ッ…クソ…」


そして、俺は意識が無くなった。



……



「…………田中…」


俺を呼ぶ声が聞こえ、俺は目が覚めた。目が覚めると腕と足に何か異物感を感じた。見てみると手には手錠、足には足枷がしてある。


「………やられたな…」

「……すまぬ…某が不甲斐ないばかりに…」

「誰のせいでもない……んっ…」


手錠は自力で外せそうにない、無論、足枷も。


「……とりあえずここを出て桜郎を助けないと…」

「…うむ……」


すると、牢屋の外、上の階から子供が走ってきて、突然牢の扉を開けた。


「……大丈夫ですか…?」

「だ…誰だ…」

「僕は…敵ではありません……」


子供はそれだけ言って俺たちの手錠と足枷を外してくれた。


「……童…何故助ける」

「………姉さんを奪った……あの風習の…犠牲者を少しでも減らしたいから…」

「風習だと?」


俺が風習について尋ねると、子供は小さな声で、恐怖を押し殺すように語った。


「この村には[亜坐斗子(アザトス)]と呼ばれる神様が祀られてて……月に一度…二十歳くらいの女の人か…子供が(いけにえ)として捧げられるんです……僕は…それで姉さんを失いました……」

「……異質で奇妙な風習…これのことか…」


この村、どうやらとんでもない闇を抱えてるようだな。


「……それで…今度は…僕の番なんです…さっき運ばれてきた子と一緒に……今日…贄にされる………だから…せめて……儀式のあとに殺されるあなた達だけは助けてから……贄になろうと…」


子供は震える声でそう言った。すると蛇が子供に尋ねた。


「儀式とやらは…まだなのか?」

「……あと数分後です…儀式が始まれば……逃げてください……」


そう言って子供は見取り図を俺達に渡した。どうやら、ここは村長の家らしい。


「桜郎は?」

「……桜郎……あの子の事ですか?……だとしたら……あの子は…儀式の間にいます……しかし…もう助かりません……」


子供は涙目で、震えていた。俺は震える子供に尋ねた。


「要するに…見捨てる……って事か?」

「……………」


俺の問いに、子供は何も言わず、静かに頷いた。


「…助けてくれた事は感謝する…だが…俺達は桜郎を助けないといけない」

「そんな!…危険です!」


子供は焦って、必死に俺達を引き止めた。


「…村中の人たちが来る…それに村長の付き人は剣術の達人だ!…絶対殺されちゃう!」

「……大丈夫だ……よし…儀式の間…か…」

「…童……狩りを終えれば…改めて礼を言う……ここでしばし待たれよ」


俺達は牢を出て、上の階へ上がっていった。


「そ……そんな……止められなかった…」















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ