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ゴブリントラップ



「……足元気を付けろよ」

「分かっておる」


俺たちは塔の周辺を囲むようにある森を歩いていた。そして、この森にはヌシと呼ばれる存在がいると聞いていたので、桜郎にその事を尋ねた。


「……この森にはヌシがいるらしいな」

「あぁ……アサナトの事か」

「アサナト……」


どうやら、ヌシの名はアサナト。見た者は誰もおらず、人々の話を聞くと、ある者は白馬と言ったり、またある者は黒竜とも言ったりなど、姿に関しては曖昧だ。


「…一度見てみたいものだな」

「………アサナトを見た者がいないのは…見た者は帰ってこないからだ」

「……なに…?」


アサナトは馬、竜、兎、獅子など、姿形は話す人によって違うが、一つだけ共通する特徴があるらしい。


「……アサナト…それはまた美しい姿をしているそうでな……」

「…………一目見ようと森へ入った者が辿る結末は……悲惨な結末だ」

「…モンスターの餌食となる…か」


モンスターはモンスターを捕食しない、するとすれば動物だ。だが、この森に住む動物は多くはないし、ネズミやリスなど、モンスターでは捕まえられないほど逃げ足の速い動物ばかりだ。肉食モンスターが生きる為には苦しいはず。


しかしそれでも肉食モンスターが多いのは、人肉の味を覚えたモンスターが森でアサナトを探す人間を喰っていたから、という事か。


「……肉食モンスターに気を付けよう………この森は茂みが多い…突然襲われる可能性もある」

「…………ああ」


俺は先頭で進み、蛇は桜郎の後ろを歩きながら周囲を警戒して進んだ。そして、出口が近くなった時、奥の茂みで何かが揺れていた。


「………何だ…」

「もしやアサナトか?」

「……確認してみる…蛇は桜郎を頼む」

「………ああ」


揺れているものを見ると毛皮のようだった。その毛皮は光り、炎のように揺らめいている。


「…ッ!」


俺が近寄った瞬間に辺りから無数のゴブリンが飛び出した、いや、ゴブリンに酷似してはいるが、少し姿が()()な。


[ブラッドゴブリン]


危険度D

空腹が絶頂に達し、本来は生殖目的で襲う人間を喰らった結果、独自の進化を遂げたゴブリン。生殖機能を失った代わりに、肉を一定数摂取すると、分裂するようになった。武器の代わりに爪で獲物を切り裂く。


ブラッドゴブリンか、普通のゴブリンよりも皮膚は赤く、硬そうだ。そして、武器は異常に長い爪か。


「……蛇…桜郎を頼む…!」

「………承知した………桜郎様…某の元へ…」

「…う…うむ…」


蛇は桜郎を抱きかかえて、木の上へ避難した。それを見た数体のブラッドゴブリンたちは木を爪で攻撃している。


「……数は…40匹ほどか」


俺の周りに、ブラッドゴブリンたちは囲むようにして立ち塞がった。


「………やるか…」


俺は背中の剣を抜いた。これは余談だが、背中に剣を背負っている時は剣の持ち手を利き腕じゃない方に向ける。俺の場合は右利きなので、左に剣の持ち手がくるように剣を背負う。


その後に左手で鞘を掴み、右手で持ち手を掴む。その後、鞘を肩に乗せて、腰をひねり、剣を抜く、そうすることによって抜刀する事ができる。まぁ、この俺、田中流のやり方だけどな。


「よし……斬られたい奴はいつでもこい」

「キシェェ!!」

「…………皮膚は…結構な硬さだな…」


1匹のブラッドゴブリンが走りながら向かってきて、爪を振りかぶった。


「ぐぎゃ」

「……だが…一太刀で事足りたか」


ブラッドゴブリンは俺の横を素通りして、少し走った後に倒れて消えた。


「……どうした…早くかかってこい……日が暮れるぞ」

「グェアア!!」


すると俺の周りのブラッドゴブリンは一斉に飛びかかった、まるでブラッドゴブリンの津波だ。


「……やっぱモンスターだな…大勢でかかれば勝てると思ったか」


俺は1匹のブラッドゴブリンを突き刺し、剣を握って、突き刺さったブラッドゴブリンをハンマーの先端に見立てて思い切り振り回した、するとブラッドゴブリンたちは吹き飛んでいき、木などにぶつかると次々と消滅した。


「………すごい…」

「…………豪鬼…」


そして、木を爪で引っ掻くブラッドゴブリンに向かって俺は剣に刺さっているブラッドゴブリンを投げ飛ばした。そして、木を引っ掻くブラッドゴブリンに命中して、木にいたブラッドゴブリンも消滅した。


「……もう大丈夫だ」

「…………そのようだ」


周囲の安全を確認すると、蛇と桜郎は木から降りてきた。木を見てみると引っ掻き傷が無数に付いていた。


「……結局…あの揺らめくものは何だったんだ?」

「…………ブラッドゴブリンの罠…だったのかもしれぬ…」

「かもな…」


すると奥の茂みに、揺らめく光が見えた。


「また…あの揺らめく火か」

「……ちょっと待て」

「どうした?」


俺はある事に気付いて、アサナトらしきものに向かって走って近付いた。












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