アルトリアを目指して
俺は田中、平凡な名前で、平凡な家系で、平凡な学校に入学して、勉強していた。まぁ、あの事故のせいで平凡は崩れ去ったがな。
俺は異世界へ転生したあと、いろいろあって神を殺す事になった。まぁ、いろいろは聞かないでくれ、話し終えるのに数時間程かかる。
「……それで…神殺しは…」
「できれば今日にでも向かってほしい。まぁ、準備が出来次第だな」
「それじゃあ行ってきます」
「早いな」
いつ襲われてもいいように常に準備はしてある、なので俺は出発しようとした、その時に叫ぶ声が聞こえた。
「私も連れていってくれないか!?」
「「桜郎!?」」
塔の上層から子供と江戸風の格好をした青年が降りてきた。
「どういうことだ?」
「私も、悪神の元へ連れていってほしい」
桜郎、悪神が狙ってる子供だ。そんな子供が塔の外へ出るなんて危険だろ。
「危険だ……道中で襲われる可能性がある…そうなれば一巻の終わりだ」
「何故一緒に行きたいの?」
困惑する王達は桜郎に尋ねた。すると桜郎はそんな王達に答えた。
「…もしかしたら……話し合えるかも…しれない…」
「馬鹿な……話し合いの通じる奴ではない…」
「やってみないと分からない」
「それに…悪神までは長い道のりとなるんだぞ……道中で襲われたらどうする」
「……………某が桜郎様を御守り致す」
侍の青年、名前は聞いていないが。すると王達は俺の方を見て尋ねた。
「……との事だが…桜郎が同行しても大丈夫か?」
「………その侍が桜郎を守るんだろ?…ならいいんじゃないか?」
そうして、俺は桜郎と侍と共に悪神の元へ行く事になった。
……
王達はこれからの神獣襲撃で、素早く神獣を倒すため、塔にある文献を漁るという。
「……桜郎は何としてでも守るのだ…桜郎が悪神の手に渡ったらお前も…私達も終わりだ」
「分かってる」
俺はスカーレットに何度も念を押された。悪神が桜郎を取り込むと厄介な事になるそうだからな。何度も念を押すのは当たり前か。
そして、俺は王達に別れを告げた、王達は俺たちに激励の言葉を言った。
「…死ぬなよ」
「頑張ってねー」
「…………………必ず帰ってこい」
「良い知らせを待っている」
「……それじゃあ…行ってくる」
そして、俺たちは王達に見送られ、悪神の元へ歩いていった。
……
一応これまでの事を整理しよう。悪神は桜郎を狙って捕まえようとしている、だが、王達は神獣の妨害で悪神の元へ行けず、倒せない。だから俺が悪神を倒すのだったな。
まさか悪神も狙っている奴が自らの元へ近付いているとは思わないだろうが、万が一知られたら守らないといけなくなる。そうなると面倒だ。つまり俺たちは悪神に悟られず、悪神の元へ行かなければならないという事だ。
そして悪神が桜郎を取り込むと、完全な力を取り戻し、たとえ倒しても神術は解除されなくなるそうだ。神術ってのは今の悪神みたいな半神の時にやられると解除される仕組みらしいからな。
最後に、ホワイトという存在についてだ。ホワイトとは、神のリーダー的存在らしい。王達はそのホワイトからの神託を得て、神術などの事を知ったらしい。王曰く、神が全員、悪者ってわけでもないらしい、まぁ、まとめるとこんなところか。
『……あ…考えてみたら…これが初めて受けた国の依頼か…』
俺がそんな事を考えながら歩いていると、変装用のフードを被った桜郎が俺に尋ねてきた。
「お主の名前は?…まだ聞いていなかったな」
「俺か、俺は田中 実だ」
「タナカ…ミノル…」
そして、今度は俺が桜郎に合わせるように歩く侍に尋ねた。
「…桜郎と……そのガードマンであるアンタの名前は?」
「……………」
「…此奴はただ…蛇と呼ばれている」
桜郎曰く、桜郎が発見される数年前に、平原に捨てられていたらしい。そして、スカーレットが拾って育てたというわけだが、蛇は名前を付けられる事を嫌っていたようだ。なので、目が蛇に似ていた事から蛇と呼び始めたらしい。
「……なるほどな」
「………………」
「それで…悪神は何処へ?」
「レイド大陸から海へ出て…しばらく進んだ先にある島だ……位置的にはこの世界のライド大陸とレイド大陸の裏側にある」
悪神のいる島はレイド大陸とライド大陸のちょうど間反対、いわば南極と北極のような位置関係だ。だが、この世界にも乗り物はある、俺たちは王達が予め用意してくれた馬車に乗ってまずは、レイド大陸の大きな港へ向かう。馬車だと3日で着くな。
「それで、港から船で島に向かうのか」
「ああ、だからまずは港を目指す為に馬車が用意されてるアルトリアに向かう」
「アルトリア……レクス殿の国か!」
俺たちはアルトリアに向けて歩いていった。アルトリアまではまぁまぁ距離がある、モンスターにも気を付けて進まないとな。




