異世界流の百物語
「……所々ある殴り書きは何なの?」
「さぁ……」
俺は塔の中で人の業というものの事が書かれていた紙を見ていた。人の業か…これって……
「人の業……十郎はこれに感染して狂ったんだ……」
「十郎が?」
「ああ、親を殺された後に十郎は復讐の道へ走った、そしていつしか殺すという単純だが残酷な行為を躊躇わなくなった、おそらく修羅と化したのだろう」
俺はボーッとして外で立っている十郎を窓から見ながらレクスさんに言った。
「だが、修羅になったというのに、あそこまで平常心を保っていられるものなのか?」
スカーレットさんが俺たちの間に入ってきて俺に尋ねた、するとスカーレットさんの後ろで何者かが言った。
「……強い精神力を持つ者が修羅と化した時…修羅の力を手にしても意識…自我を保てるという例もあるらしいよ…まぁ……そのかわり本能や本心が曝け出されるから性格が激変する…」
「………エミリアか」
スカーレットさんの後ろにエミリアさんが立ってそう言った。
「……僕はそんな人間の事を羅刹と呼んでる」
「羅刹……十郎は羅刹になっちまったのか」
かつての十郎はあんな暗い瞳をしていなかった。十郎はどうやら、人の業に取り憑かれ、羅刹と化したようだ。
『……いつか戻す』
俺がそう決意していた時、十郎が塔の中に入ってきた。
「……深夜になりましたね」
「…ああ…そうだな」
外はさっきよりも暗くなり、良い子はもう寝る時間帯だ。
「…寝るか……?」
「寝室に案内しよう」
「………アンタたちはどうするんだ?」
上の階へ上がる前に、俺は少し気になったので王達とホワイトに尋ねた。
「……ふふ…これから百物語をしようと思ってね」
「百物語か…!」
「百物語ですか!」
十郎と桜郎はその言葉に食いついて、蝋燭を囲むように座る王達の輪に入った。
「……やれやれ…夜更かしは良くないんだがな」
俺もその輪の中に入った、中心に置かれた蝋燭の火が妖しげに揺らめいていた。
「………確認しておくが…参加してるのはエミリアと…私と…ムサシと…レクスと…梅岡と…十郎と…桜郎と…ホワイトか………アサダとアーサーは?」
「道場で寝てるよ」
スカーレットが周りを見て確認した。そして、確認し終えると説明をし始めた。
「百物語……元の世界では怪談だが…この世界は違う」
「怪談じゃないのか?」
「ああ…この世界の百物語で話す内容は昔話だ…」
どうやら、この世界の百物語は怪談ではなく昔話を話していくらしい。そして本家の百物語は最後に本物の妖怪が出るらしいが、この百物語は最後に何かが起こるようだ。その何かが何かは分からないらしい。
「……それじゃあ…最初は誰だ」
「……………………俺だ」
ムサシさんが返事をして、一つ目の昔話を話し始めた。その内容は、とある山に住む大猿の話だった。その猿は人を襲う凶暴な猿だったが、一人の侍に倒されたという感じの内容だ。
「……………………あの猿は強かったな」
最後にムサシさんはそう呟いた。そして、ムサシさんが話した後に順番を決める事にした。順番はムサシさん、スカーレットさん、レクスさん、エミリアさん、俺、十郎、ホワイト、桜郎という順番になった。そして、順番が決められると、スカーレットさんが話し始めた。
スカーレットさんの話は、ある家族の話だった。その家族の父親は人を化け物にする病を患っており、次第に人を襲い、人を喰らうようになった。そして、その父親の息子はそんな父親を殺したという話だった。
「一度、切られたものは二度と、元に戻らない」
「なんだよそれ……」
次はレクスさんだ、レクスさんの話は、どこかの山の上にある寺の話だった、その寺では神として崇められる一族が住んでいた。そんなある日、疫病や不作が国を襲った。そんな時、その一族に仕える武士が神刀とされる一族伝承の刀で疫病、不作の源である厄鬼を切って浄化したという話だった。
「……神刀…一度振ってみたいものだな」
レクスさんの話が終わると、エミリアさんが話し始めた。エミリアさんの話は年代で言うと結構最近だった。エミリアさんが話すのは八咫烏と呼ばれた3人のうち、1人の話だった。内容はその1人の八咫烏と、最強のマフィアが戦ったという内容の話だ。
「……結構最近なんだな」
「まぁ…30年前の事だし……一応昔話………でしょ?」
「まぁそうだな…」
そうして、昔話は進んでいった。俺もエミリアさんみたいに昔って程でもない昔話を話した。十郎は普通の昔話をした。ホワイトと桜郎は神話のような昔話をした。そうして百物語は続いていき、もはや順番がおかしくなっていた。
「最後は誰だ?」
「ていうかせっかく決めた順番が…」
みんながざわざわしていると、桜郎が言った。
「それでは私が話そうか」
「最後だからな、バシッと決めろよ!」
「……それじゃあ蛇と人の話でもしようか」
「…あれか」
「あれを話すんだ、確かに最後にはいいかもね」
王達とホワイトはすでに知っているような感じだった。そして、桜郎は俺たちの方を見た後に話し始めた。




