人の業(これは大事なメモだからホワイトボードに貼っといて)
俺が初めて人の業を見た時は思わず絶句してしまった。正直、人間ってのがアレほど残酷になれるなんて思わなかったからだ。そしてこれは、俺たちの為に必要だと思って記す事にした、いわば人の業についてとその対処方法だ。
まずは人の業についてだ、人の業とは[ヒトノゴウ]と読む。これは1300年代に発見されたらしい。最初に人の業に取り憑かれた、呑み込まれた人間はただの農民だった、何が原因があったのか、はたまた何かの因果か、その農民は突然凶暴化し、村の住民を皆殺しにした。人を殺した事も、ましてや傷付けた事もないような農民がだ。
これは俺が博物館にある古い文献を読んだ時に書かれていた事だ。そしてそれが引き金になったのか、数年に一度の頻度で人の業に取り憑かれた者が出るようになった、その人の業に取り憑かれた人々を大名や武将は[修羅]と呼んだらしい。そして昔の武士はその修羅を打ち倒していたらしい。まぁ、その当時はそれで収まったのかもしれないが、この現代に再び現れたがな。
まだ色々とあるが、書いていると辞典並みの量になるので圧縮していく。まず、どうなったら人の業に取り憑かれるかを説明しよう。
一つ目、人の業は人の暗い感情、嫉妬、憤怒、独占欲、殺意、渇望、そんな感じの感情が積もりに積もると取り憑かれやすくなる。そして二つ目、人の業をより深く身に宿す者からの伝染、その二つだ。まぁ、これは滅多にないから気にしなくていい。
それじゃあ次はその対処方法だ。最初に、修羅は簡単に言えば[キレてる状態]だ。子供が喧嘩してムキになり、何も考えられなくなって殴り合いに発展するような感じだ。だが、それと酷似しているが、ほんの少し違う点がある。
それは意識を持つこと、要するに子供の喧嘩みたいに何も考えられなくなるわけじゃない。人の業に取り憑かれた者、修羅はまず、気が大きくなる、良心が欠如する、そして人を傷付けるのを躊躇わない、そして力も通常の何倍にもなる。
こう見ると弱点なんてなさそうだろ。身体能力は人間の倍、弱点も無いときたらそれこそ誰も倒せない、武士でもな。だが、もし修羅がホントにそんな強いのなら文献に打ち倒したなんて書かれないだろ。
だが、そんな怪物を打ち倒していたって書かれているって事は何か弱点か倒し方があるんだ。そんで調べてみたら殺害以外の対処方法は見つかった。
それじゃあ、対処方法その一。まずは説得しろ。これはまず不可能に近い。説得できればそれに越したことはないが、まずそんな奇跡は起こらない。それじゃあ、何故書いたかって?……説得できた例があるからだよ。
対処方法その二。気絶させて仙薬を飲ませろ。これは武士の親、親友、大事な人が修羅になった時の対処方法だ。修羅を気絶させ、貴重な仙薬を飲ませると治るらしい。だが、仙薬が手に入らなかった武士は斬る事を止む無くされていたらしい。ちなみに仙薬のレシピは手に入れておいた、保管場所と作り方は(川畑君、今日の晩御飯の材料の卵とケチャップ買ってきて)
対処方法その三。明るい感情を抱かせる。これは最も最適な方法だ。暗い感情が多くなって修羅になったなら明るい感情をその分、与えてやればいい、そうしたらプラマイゼロだ。だが、その対処方法をするのは難しい。なぜならとある事をしなくてはならないからだ。そのとある事とは以下の通りだ。
まずは刀、槍、銃、まぁ武器ならなんでもいいが、とにかく武器を用意する。
次に、日本の天舞島にある功仙山を登り、頂上にある功仙寺に住むとされる、とある一族から恩恵を授かる。
そして、その恩恵を授かった武器で修羅を斬ると元に戻る。
まるで漫画みたいだろ、非現実的だ、それにホントだとしても、その一族が生きているかも分からない。だが行ってみるのもいいかもな。今度の休暇に行ってみるわ。俺の爺ちゃん家に、爺ちゃんが日本兵だった頃、戦争で使ってた刀があるし。
とまぁ、こんな感じだ。どの方法で倒すか、いっそのこと殺すかは自分で決めてくれ。まぁ、俺なら三つ目の方法を信じて功仙寺に行くぜ、駄目でも殺害はしない。みんなもそうだよな、俺らは『悲劇を悲劇で終わらせたくない』って奴等だからな、だよな?(よくそんな痛い事を平然と言えるな)⬅︎(お前、今日晩御飯抜きにするぞ)
『あのようなものは存在してはならない、だからあれを、なんとしてでも、封印せねばならんのだ。何年、何十年かかっても、必ず為さねばならぬのだ。それは民の為にも、国の為にも。もし、あのようなものが蔓延る事になればこの国そのものが人の業に飲み込まれ、滅ぶだろう。それ故に、我等人間が、あの人ならざる鬼の病を今こそ打ち倒さねばならいのである、必ずそうしなければならぬ、でなければ我々が鬼によって打ち倒されるだろう』
業ノ修羅(昔の文献)より、翻訳して一部抜粋。
この言葉を最後に書いておこう。
(これはメモだからな、捨てるなよ)
(追記、確かにこれはメモだが、関係の無い事を書くな!そういう事はホワイトボードに書け!せっかく買ったんだから!)




