青年Aと青年B
「「……ここが異世界か!!」」
「……………」
青年Aと高校生達は森の中で立っていた。そして、転生した後は早かった。高校生達は異世界転生系のラノベを読んでいた者も多かった、故に異世界へ馴染むのは早かった。
ギルドというものが創られたのは高校生達が転生した二年後だった。30人いた高校生は意見の食い違いで10人になったが、それでも高校生達はギルドを創ったのだった、そしてそんなある日……
『……今日も依頼で疲れたな…寝るか……』
スキルを持つ高校生達が国家からの依頼ばかりをこなす中、青年Aは民の依頼する少額の依頼をこなしていた。
『……ん?…なんだ…』
「なぁ、アイツマジでいらなくね?」
「ああ……スキルを持たねぇアイツだろ?」
青年Aは高校生達の会話が聞こえ、少し盗み聞きする事にしていた。
「そうそう、アイツ俺たちみたいにスキル持ってないからか国家からの依頼来ねぇしよ」
「せめて囮にでもなれっての」
「そんな事言うな」
高校生達の会話をイケメンな高校生が遮った。
「……アイツは国家からくる依頼で手が離せない俺たちの為に…代わりに民の依頼をこなしているんだぞ」
「…た……小鳥遊君…」
『………小鳥遊…』
そして、あくる日、青年Aは突如姿を消した。
……
青年Aは過去の事を思い出していた。
『俺はあの事を盗み聞きした翌日…魔族にさらわれたんだ……しかし…何故……』
「…おい」
青年Aは魔族に呼ばれ、牢屋から出された。青年Aは困惑した。
「…な……なんだ…」
「お前の番だ」
「番…?」
青年Aは大きな台の上に乗せられると拘束された。
「うぐぁぁぁあああぁぁ!!!」
青年Aは絶叫した、激しい頭痛、激しい腹痛、激しい吐気によって何度も吐いた。
「……スキルが発現しました!」
「よし!」
青年Aはこんな場所で、欲しかったスキルを手に入れたのだった。しかし……
「嗚呼……あゝ…」
「………しかし…脳が破壊されました…」
「……ッ……クソ…コントロールが難しくなるな…」
青年Aは、念願のスキルを自身で操作する事はできず、知能を失った。
「………」
青年Aを、変わり果てた青年Aを魔王城に侵入して見ていた男がいた。その男は青年Aの親友であった。
『………間に合わなかった……ッ……』
青年Aの親友は、その場で声に出さずして、慟哭した。
『…すまない…ッ……すまない…』
青年Aは、この数年後に光闇の兵器と呼ばれた。
……
「………アイツ…いなくなったのか」
「ハッ!…清々したぜ」
「だがよ、まだアイツはいるじゃねぇか」
「あぁ…そういえばもう一人いたな…」
青年Aの親友、青年Bもまた、スキルを持っていなかった。
“…お前も…スキルを持ってないのか”
“ああ……”
「俺が…お前の分まで……」
……
「どう思う?…あの高校生達…」
「……スキル持ちは頼もしいが…」
「……………………ああ」
スカーレットがムサシの方を向くとムサシは頷いた。
「……頼もしいが…って…何で“が”が付くの?」
「…………………臭いがする」
「臭い?」
そう呟いたムサシにエミリアが尋ねると、ムサシはゆっくりと話した。
「………………あの臭いがする者は大抵……何か暗いものを抱いている」
「ふむ……アレか」
レクスはムサシの話を興味深そうに聞いていた。
「暗いもの……かぁ…」
「…………………エミリアのようにな」
「ええ!?……僕も持ってるの!?」
ムサシがエミリアを見てそう言うとエミリアは動揺した。
「人の業……という奴だな」
「…あぁ…それか…」
その単語を聞いてエミリア納得したような表情を浮かべた。
「……特に…小鳥遊というあの男は…要注意だな」
「…………………………あの者は特に濃い…人の業を持っているからな」
ムサシとスカーレットは写真を見ながら言った。
「………みんな最近どう?」
「いきなりどうした」
「気になっちゃって」
エミリアが王達に尋ねた、そして最初に口を開いたのはムサシだった。そしてそれに続くように王達は同じ事を言った。
「……………大事ない」
「特に無いな」
「余も…特に……」
「みんな何も無いの!?」
王達が全員そう言うと、エミリアは驚いて席を立った。
「そう言うお前はどうなんだ……私達は無いが…お前はあるのか?」
「……たしかに…無いね」
エミリアはよく考えると、最近は何も無い事に気付いて席に座った。
「それじゃあさ……人の業について…みんなはどのくらい知ってる?」
「……人の業………人間の暗い心…感情がある地点まで高まる事によって現れる症状…だろ?」
「………実は人の業…の事が詳しく書かれている紙を見つけてね…」
「ほう…」
エミリアはそう言って王達の前に紙を出した。




