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魔王軍極秘軍事実験、その結果



――少年の実験場散策の5時間前――



「……阿鵜鴉禹會〜ァ………」

「…………エミリア襲撃後に近くの山で見つかりました」


魔王城で幹部が鎖で身体を固定されているエミリアと梅岡、十郎を襲った兵器を連れてきた。


「巉辴………丐!!」

「……それは切り札だからな…見つかって何よりだ」


魔王は奇声をあげる兵器を見ながら笑みを浮かべた。


「……その青年は大事に部屋(牢屋)に連れて行け」

「かしこまりました」

「蚊儺蘭醋兒ロシte箭Le」


兵器を連れて幹部は王の間から出て行った。魔王も少し外を眺めた後、自室に戻っていった。



……



魔王の部屋には学者が来ていた。どうやら実験の結果を伝えに来たようだ。


「……実験は?」

「…………及第点の結果でございます…」

「…ほぅ……」


机に置かれた書類に魔王は目を通していた。そこには専門用語が多く、魔王には理解できない事もあった。


「……実験が更に進歩すれば人魔戦争が再び起ころうものなら我が軍は圧勝でございましょう」

「………そこまで言い切れるとはな…結果を詳しく話してはくれぬか」


魔王軍は人と魔族の戦争、人魔戦争で四人の英雄に苦汁を飲まされていた。人魔戦争が始まり、最初こそは魔王の四騎士が人間、連合軍を壊滅に追い込んだ。


しかし、そんな魔王軍が圧倒的優位に立ち、聖騎士も兵士も、国民も、誰もが人間の敗北だと確信していた戦場に突如として四人の騎士が降り立った。その時はただの騎士だと皆、思っていたがその四人はトラベラーであった。それは今もなお知る者は一部である。


そして、その騎士達がエミリア、スカーレット、レクス、ムサシ、この四人だった。圧倒的優位に立ち、過信したというのもあるが、魔王の四騎士はこの四人の騎士によって致命傷を受け、その内の二人は封印された。


そして戦況は180度変わり、魔王軍は一気に衰退した。四人の騎士が魔王の四騎士を打ち倒した場所が、ライド大陸にあるライドオートと呼ばれる巨大な砦だった事から、これはのちに[ライドオートの逆転劇]と呼ばれるようになり、人々の間で伝承、または伝説として話の話題となった。


かくして魔王軍は撤退せざるを得なかった。そしてその人魔戦争後からだった、魔王が恐ろしい実験に手を出し始めたのは。


「……魔王様が初期から始められていた[進化]の実験についてですが…」

「うむ」

「アビスによってどのような生物も強靭な肉体に進化させる事のできるポーションの開発に成功いたしました……このポーションはアビスを通常通り取り込むよりも数十倍強靭な肉体に進化できます」


結果を聞いた魔王は学者に「よくやった」と言って褒め称えた。


「魔王様用の特別配合ポーションも既に作っております」

「……だが…その他にも良い知らせがあるのだろう?」

「勿論です……」


学者は持っていた書類を魔王に見せた、その中には写真もあり、写真を見た事が無かった魔王は写真を見て驚いている。


「……とても鮮明に撮れているな…」

「はい、このカメラで写したものです」


学者はポケットの中からカメラを取り出した。魔王はそれを手にしてジッと見ていた。


「……見たことの無いカメラだな…また悪神の贈り物か」

「ええ、今まで我々の開発していたカメラとは比べものにならない程の性能です」

「確かに…とても鮮明だな……」

「それでは、この写真をご覧下さい」


写真には拘束された青年が写っていた、魔王はそれを見て学者に尋ねた。


「……蛇…あの神子(みこ)守蛇(もりへび)と呼ばれた男か…!」

「はい、あの神子を守護していた騎士を創り出す事に成功しました」


魔王は半信半疑の表情を浮かべ、眉を(しか)めた。


「…しかしどうやって……あの男は()()()筈…」

「……血ですよ」

「…血……?」


学者は眼鏡を上げて、小瓶を取り出した。中にはほんの少し赤みを帯びた黒色の液体が入っていた。


「……あの城の付近で採取した血を使いホムンクルス方式で創作しました…記憶も…肉体も…全て神子の守蛇の生前と同じです」

「それは……なんとも心強い…」


学者の言葉を聞いて魔王は拳を握りしめた、そして窓の外に広がる国を見ながら言った。


「…神子の守蛇……アビスのポーション……トラベラー………カードは揃いつつあるわけだ」

「ええ…後はアレが完成すれば……魔王軍がレイド大陸を支配するのも容易いかと」

「…後は……王を殺すだけだ…あの子がな」


そして、机に置かれた兵器の写真を見ると、思い出に浸るように、静かに呟いた。


「……思えば…ここまで長かったものよ」

「…そのトラベラーの兵器化……それが最初に成功した実験ですよね」

「ああ……」


魔王は兵器の写真を眺めていた。












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