イワンと、その師匠
「…生身でブチ殺そうと思ったが……仕方ねぇ!!」
「!!」
川畑と樹一郎は、巨大な天使の抜け殻から飛び降りた。すると、抜け殻はメルハンドと融合し、巨大な竜となった。
「コノ体デ捻リ潰シテヤルッ!!」
「はぁ…またソレか…」
竜となったメルハンドは、口から白色の雷と炎のブレスを吐き出した。
「フン…ッ!!」
そのブレスを、樹一郎は逆境返しで、メルハンドへ返した。
「そっくりそのままお返しするぜ!!」
「小癪ナ……ッ!」
メルハンドは、その返された自身のブレスを吸い込んだ。
「フッ!」
そして天空へ吹き出すと、青空が突如曇り始めた。それを見て、樹一郎と川畑も身構える。
「くるぞ…川畑さん…」
「ああ…」
その瞬間、空から大量の雷の雨が降り注いだ。樹一郎は、剣を両手で握り、空へ掲げた。
「なに…?」
樹一郎の持つ剣から飛び出す雷が、周りの雷を集め巨大な刃を形成した。
「…フッ!」
「……ッ!!」
そしてその雷の刃を、メルハンドめがけて振った。巨大な雷の斬撃が、メルハンドへ向かっていく。
メルハンドは対抗してブレスを吐くが、雷の刃はそのブレスごとメルハンドを両断した。
「くぅ!!」
斬撃を食い、メルハンドが地上へ落下すると、川畑がすかさず追撃した。
「がァ!!」
竜ではなく虎へと姿を変え、メルハンドは川畑に馬乗りになった。
「川畑さん!」
樹一郎が近付くと、川畑がメルハンドを持ち上げて、地面に投げた。メルハンドは、気絶している。
「……腹がガラ空きだったので…少しラッシュを食らわせただけだ」
「………じゃあこれで…終わりかか…」
虎の姿から、通常の姿へとメルハンドは戻った。
「…ああ……そうだな」
「アイツらは大丈夫かな」
「フン……大丈夫だろ…」
……
「斬仁と…宇川……」
「コイツぶっ倒せばいいんだよな!」
「ああ!」
すると宇川が、悪魔へ向かって走っていった。近付いてくる宇川へ、悪魔が拳を振り下ろし地面へ叩きつけた。
「ゴァ!」
「……宇川…強いと聞いていたが……この程度とは」
「痛ってーなァ…クソが!…いきなりだな!…この野郎!!」
ゆっくりと宇川は起き上がり、間髪を容れず悪魔へストレートパンチを食らわせた。
「ぐッ…」
悪魔はその衝撃で吹き飛び、遠くのビルへと激突した。
「斬仁!…お前は王の護衛を頼むわ……俺の喧嘩の巻き添えを食わないようにな゛!!」
「チッ……いいとこ取りしやがって…」
「心配すんな!…手柄はやる!」
「そういう事じゃねーよッ!!」
宇川はそう言い残し、悪魔の元へとダッシュで向かっていった。
「……ッ…」
「へへ!…どうだい?…まだやるかい?……えーと…イワンとやら!」
「…………フン…」
イワンは、ゆっくりと立ち上がった。それを見て、宇川は笑みを浮かべる。
「俺は宇川だ!!」
「…あ?……何だいきなり名乗りやがって…」
「お前をボッコボコの…メッタメタの…ボロ雑巾にする奴の名前だ!!…覚えておきたいだろ?」
「テメェ…」
それを聞いて、イワンはノーモーションタックルをかました。宇川はそのタックルで、全く動かない。
「な…ッ…」
「……一つ言ってやろうか?」
宇川は、タックルしているイワンの肩を持つと言った。
「来ると分かってる攻撃じゃあ…俺は倒せねー…よッ!!」
そして思い切り膝蹴りを食らわせた、それを食いイワンの手が離れると、宇川はイワンを背負い投げした。
「ぐぅ!!」
「どした!?…この程度か!?」
するとイワンは、宇川から離れると身体の拘束具を外し始めた。
「おっ!?…第二形態か!?」
「……俺にはかつて…ペインという師匠がいた…」
拘束具を外しながら、イワンは話し始めた。
「師匠は名の知れた強者でな…悪魔や天使の中でもトップクラスの実力を持っていた………」
「へえ!」
「師匠は超えられなかったが……俺はその師匠の…90%の力を体得した…この拘束具は…その力で勢い余って周りのものを破壊しない為のものだったが……どうやら解放する時が来たようだな…」
その話を聞いて、宇川は頭を掻きながら言った。
「はは!…お前……漫画のかませ犬みてーだな!!」
「本当にかませ犬かどうか…確かめてみろ……」
イワンの身体が黒くなり、ツノが生えた。そして、次の瞬間、イワンは宇川の目の前から消えた。
「ほい!」
「うげ…ッ!?」
背後に回っていたイワンへ、宇川が裏拳を食らわせ、怯んだスキに回し蹴りを繰り出した。
「ぐく…ァ…ッ!!」
「休む暇ねーぞ!!」
そこへ更に追撃を繰り出した、それを食らってイワンは地面へ膝をついた。
「な…こんな……ッ…」
「あー…なんやったっけ?………お前の師匠のペインか…」
宇川は頭を掻くと、嘲るようにして、イワンへと言った。
「…ペインは俺が秒殺でブッ倒した奴やで!……師匠を超えられんお前が…俺に勝てるわけないやろ…!」
「な…なんだと…」
「ほんじゃ…そゆことで……ちょっと寝ときや!!」
「く……クソォォr」




