サラマンダーとミユキ
「…天界へテレポートできないね」
「……ハカセは…何か変な機械を作ってた……もしかしたら…その機械の影響かもな…」
「うわー…厄介な事してくれちゃってるねー…」
するとミユキは、立ち上がって焚き火を消した。
「……それじゃあ…あの方法を使おうか」
「…あの方法?」
「うん」
「何だそれは…」
サラマンダーが尋ねると、ミユキは説明し始めた。
「世界には…出入り口があるんだ」
「出入り口?」
「…ゴッドカンパニーは…世界を創る時に…万が一に備えて…出入り口を作るんだ……何かあっても…世界に入れるようにね………どんな事が起ころうとも…その出入り口からは世界へ出入りする事ができる」
「……それじゃあ…その出入り口が何処にあるかを探せば…この世界から出られるってわけか!」
「そゆこと!」
そして少し歩くと、森を抜けて平原に出た。その平原を見て、ミユキは思わず驚いた。
「ははッ!…こんな偶然が…!」
「どうした!?」
「……ここ…テオロンだ…」
「テオロン……確か悪神が色々としてた世界か…」
ミユキは平原の向こうにある山々を見て、サラマンダーへ言った。
「探す手間が省けたよ……この世界の出入り口は…この世界にある僕の館にあるから」
「おっ!…マジか!」
「…しかも…ここから割と近い……さっさと行こ!」
そしてミユキとサラマンダーは、ミユキの館のある方角へと、歩いていった。
「……赤い大地…」
「レッドゾーンって名前の大地さ」
ミユキとサラマンダーが、赤い大地の上を歩いていると、目の前に黒い龍が降り立った。
「モンスターか…何か懐かしく感じるなぁ…」
その龍を、ミユキはいともたやすく切り裂いた。龍は切り裂かれ、地面に魔素が落ちた。
「行こうか」
「あ…ああ」
『………待てよ…今からもしかしたら……不意を突いてミユキを倒せるんじゃ…』
サラマンダーが拳を握り、ミユキの方を見ると、ミユキが殺意の眼差しで、サラマンダーを見つめていた。
「どうかしたの…?」
「…な……何でもありましぇん…」
そうして再び歩いていると、館が見えてきた。
「あれか?」
「うん!」
二人は館へ駆け寄り、扉を開けた。すると中には、盗賊らしき人間が数人いた。
「戸締りしたのになぁ…」
「うぉ!?」
盗賊はミユキとサラマンダーの方へ振り返り、剣を構えた。
「クソ……ここの館の奴か…」
「ヤるしかねぇ…」
「ごめんね……生憎…好みじゃないんだ」
すると盗賊は、ミユキの顔をジッと見た。その瞬間、怖気ながら剣を落とした。
「テ…テメェは!」
「んー?」
ミユキが腰を抜かす盗賊を見て、思い出したかのように笑った。
「あっ!……あの時…僕が痛め付けた人か!」
「…お前……やっぱイかれてるよ…」
「ひ…ひぃぃ…」
「ボス…」
「へぇ!…ボスになったんだ!」
盗賊の前へ近付き、ミユキは盗賊と同じ頭の高さになって、屈んだ。
「……今度は手下の前で…いじめてあげようか?…」
「お…お前ら!…さっさとずらかるぞ!」
「…は…はい…」
ミユキのその眼差しを見て、盗賊は仲間を連れ逃げていった。
「………人間にも同じ事やってんのかよ…」
「そんな酷い事してないよ」
「…そんな酷い事してないなら……お前の顔見ただけでああはならねぇよ」
そして盗賊を退け、ミユキとサラマンダーは館の二階へと向かった。
「……これだね」
「これか」
ミユキとサラマンダーは、鈍く光る魔法陣を見た。
「これに乗れば天界へテレポートできる」
「さっさと行こうぜ」
そうして二人が魔法陣へ乗ろうとしたその時、外に轟音が響き渡った。
「…少し見に行こうか」
「……ああ」
二人が見に行くと、そこには業人の姿があった。
「業人…」
「倒さないと…この世界がヤバイね」
ミユキが包丁を抜こうとしたその時、サラマンダーがミユキの前へ立った。
「…ミユキ……」
「ん?」
「お前は…カイトを倒さねぇといけねぇんだろ?……早く行けよ…」
「え…?」
サラマンダーは、業人の前で構えると続けて言った。
「お前は急いであの世界へ戻れ!……心配するな…コイツらは俺が倒しておく…」
「でも…!」
「早く行け!…もう時間が無い……」
「そんな!…君を置いて行けないよ!」
ミユキは涙目で叫ぶが、サラマンダーは不敵な笑みを浮かべた。
『このまま…漫画みてーな展開でミユキを天界へ戻せば!……俺はこの世界でほとぼりが冷めるまで…隠れる事ができる!』
「サラマンダー!」
「いいから…行け!」
『どうせ天界に行ったら…捕まっちまうしな』
「……分かった………僕は先へ進む…だけどその前に…………サラマンダー…死ぬなよ……」
「ああ!!」
そしてミユキは、包丁を抜くと目の前の業人全員を細切れにした。
「……あ…」
「君を置いていくわけないでしょ……ッたく…ちょっと君のノリにノってあげたけどさー………あのまま君をここに置いて僕だけ天界に行くって……馬鹿でしょ」
「…………」
「ほら…行くよ」
「はい」




