牢獄
「オラァッ!…さて…何処だ…!?」
宇川がドアを蹴り破り、ヤタガラス達はビルの中へと足を踏み入れた。
「はッ…!?」
「おっ!…悪魔発見!」
「…ぐ…ぅぅ…」
「楽織はいないね」
ビルへ入ると、マフラーをした血塗れの悪魔が怯えた様子で、壁にもたれかかっていた。
「おい…お前……楽織と戦っていた悪魔だな?」
「…聞いてんすけど?」
「あ…はひ…!」
ミユキがいつのまにか、悪魔の横に立っていた。悪魔はミユキを見て、怖がりながら答えた。
「楽織は何処だ?」
「ん…あぁ…」
「え?」
「いや…あの……ぅん…」
悪魔は楽織の事を話そうとしない、それを見て、宇川がイラついた様子で言った。
「ンだよテメェ!」
「あっ…ふっ!…あの………殺して…くだひゃい…」
「は?」
その時、何かを察したミユキが、悪魔のマフラーを解いた。すると、悪魔の首には鉄の首輪がしてあった。
「……………………」
ミユキはそれを見て、七海のポケットから、メモ帳とシャーペンを抜き取った。
『この悪魔がしてる首輪は、爆破機能を持つ首輪だ。しかも、盗聴機能も付いている。』
「…!」
そして、ミユキはメモに何かを書いて、悪魔に見せた。
『二度と復活できない今、死ぬのは嫌だろ?今から答える質問に、「はい」なら一回、「いいえ」なら、二回頷け』
「!」
悪魔はそれを見て、頷いた。
『その首輪を付けたのはカイトか?』
悪魔は二回頷いた。
『お前以外の悪魔か?』
悪魔は二回頷いた。
『天使か?』
悪魔は二回頷いた。
『人間か?』
悪魔は、一回頷いた。
「……なんだとッ!?…人間がッ!?……あっ…ヤベ」
宇川が思わず呟いた瞬間、首輪が光った。そして、爆発音と共に、炸裂し破片が飛び散った。
「……………………もう!!…なに口を滑らせてんだよ!…師匠!!」
「わ…悪りぃ…!」
「まぁ…命に別状は無いからいいけども!」
悪魔の首は、繋がっていた。
「な……何故悪魔が…無傷…」
「爆発した瞬間…僕の血を与えて…肉体のダメージを0にした……だけど…」
しかし、悪魔はピクリとも動かない。
「痛みはあるから…そのショックで意識がトんだ…」
「…マジか……それじゃあ…楽織の事とかの尋問とかできそうにないな」
「……つい首輪が気になって聞いたけど…楽織の事を聞けば良かった…」
「…まぁ…楽織の事を聞くのは…コイツの意識が回復してから…だな」
……
「…………人間に首輪付けられたのか?」
「…ああ」
首輪を付けられていた悪魔は、七海の問いに素直に答えた。
「……話せ…あそこで何があったのか」
「………分かった」
七海が尋ねると、悪魔はゆっくり話始めた。
「…俺はあの場所で…楽織とかいう抵士官と戦闘になった……俺が押されていたんだが…その時に…防護服を着た人間が現れた……何処からともかくな…」
「ハカセか…」
「……そいつを見て…俺も楽織も戸惑っていた…すると……その防護服野郎は…楽織を気絶させ…俺に首輪を付けてやがった……」
“ここで見た事を話したら…その首輪を爆発する”
「…この世界では一度死ねば二度と復活できない……だが…この世界から出ようにも…出たらゴッドカンパニーの連中に捕まり…封印されちまう……どうしようか迷っていたら…アンタらが来たんだよ」
「……なるほどな…楽織がどうなったかは知らないのか?」
「ああ…あの防護服野郎は楽織を担いで…テレポートしたからな……それがあの場所で起きた全てだ」
それを聞いて、宇川が言った。
「おいおい…楽織がどこにいるかの手掛かり何もねぇじゃねぇか!」
「…ふむ……」
「とりあえず…カイトと同じように…地道に手掛かりを探すしかないな」
「ハカセめ…クソめんどくせぇ真似しやがって!!」
……
「く…ぅ…」
楽織が目覚めると、そこは牢獄だった。
「な……どういう…」
「…起きたか」
牢獄の前、楽織の目の前にはハカセが立っていた。
「…お…お前は……ヤタガラスが目撃した…ハカセ…!?」
「ふむ…知っているのか…」
「俺を閉じ込めて……まさか実験でもする気か…!?」
「そのまさかだ…」
それを聞いて、楽織は思わず息を飲んだ。
「…俺で実験する為に……俺をさらったのか…」
「お前のような良い素材が必要だったのでな…」
そう言って、ハカセは楽織の目の前から去っていった。
「……だが…今からするわけではない…やらなければならない事があるからな」
「…………」
「…少し待っていろ」
楽織はハカセが去ったのを確認して、鉄格子を握った。
『……何としてもここから脱出しなければ…』
窓も何も無い、空虚な牢獄の中、楽織は諦めていなかった。そして楽織は、牢獄から出る方法を模索し始めた。




