業の武器
「おっと…遅い遅い……戦闘能力を持たない私でも躱せるぞ」
「くッ…」
身体にとてつもない重さが伸し掛かり、ミノルは上手く剣を振るう事ができない。
「うぉぉッ!」
「…!」
しかしミノルは、剣を振ると見せかけて、剣を投げ飛ばした。剣はハカセに命中し、ハカセの防護服に少し傷が付いた。
「ま…マズイ…」
ハカセは走って逃げようとするが、途中で苦しそうに声を上げて、地面に転んだ。
「逃さないよ」
「…ッ……」
ミユキがハカセの腕を掴むが、ハカセはその場で消えた。
「……テレポートか…」
「…仕方ない……今はリコを何とかしよう」
「……そうだね…」
3人は、花の中心へいるリコを見た。
「…業を広める爆弾……という事は…このまま放っとくと…リコは爆散してこの周辺区域を…九州や北海道のように業による汚染区域にするのか…ッ!」
「……止めないとね…」
ミユキは花の茎を触りながら、包丁へメメントモリを宿した。
「…茎を切って…リコ君を花から引き剥がそう」
「……切って大丈夫か…?」
「多分」
そしてリコは、花の茎を斬った。花はメキメキと音を立てて、地面に倒れた。
「リコ…!」
3人は、倒れた花の中心にいるリコへ駆け寄った。
「大丈夫か!?」
「……………」
リコは返事をしない、ミノルがリコを花から引き剥がそうと、引っ張る。
「3人でやろう」
「…ああ」
3人はリコを掴み、321の掛け声と共に、引っ張った。リコはべリベリと花から引き剥がされ、もう一度引っ張ると完全に花から剥がれた。
「……おっ…!」
「…身体が軽い……重みが無くなった…」
「よし…一旦リコを安全な場所へ…」
「花はどうするの?…リコ君を引き剥がしたけど……花にはまだ業が渦巻いてる…」
するとマイケルが、ミユキとミノルへ言った。
「花は爆発しないよう…俺が何とかする……お前らは先に降りてろ」
「え?…マイケルが?」
「ああ……さっさと行け…」
「……分かった…行くよ…ミノル君」
「あ…ああ」
2人はマイケルをその場に残し、リコを担ぎながら火口を登った。
「…さて……やるか…」
……
「……ミユキさん!」
「…やぁ」
リコを担ぐミユキとミノルへ、待機していた人々が寄り添った。ミユキは、その人々へ何があったのかを話した。
「………ハカセ…か…」
「マイケルは大丈夫なのか!?」
「…ああ」
ミユキの背後から、声が聞こえた。人々が振り返ると、そこにはスーツの右腕と左腕の部分が破けた、マイケルが立っていた。
「マイケル…!」
「…花は俺が消した……もう爆発する事は無い…」
「……凄いね…マイケル…」
「…フン」
すると、七海のスマホへ電話がかかってきた。七海が出ると、それは天だった。
「………そうか…」
「どした?」
「…業に対して…有効なレジアルが開発できたようだ……」
「はッ!…業キラーの武器ってわけか!」
「リコも救えたし…一旦戻るか」
電話を切り、ストレンジャー達と抵士官達は本部へ戻った。
「……おっ…来たか…」
「…業に有効なレジアルとやらは?」
「……これだ」
獄が、漆黒のレジアルを机の上に置いた。
「通常のレジアルと違い…対業に特化したレジアルだ……悪魔や天使にはあまり通じないが……業人に対しては有効だ…業に取り憑かれた奴の…業のみを破壊する事も可能だしな」
「…ナオトの持ってた刀を調べて…コピーしてみた……まぁ…コピーできたのはオロチのおかげだ」
「フン」
「……ふむ…」
乖理が業キラーのレジアルのうち、一本を持って言った。
「これで…業人対策は完璧という訳だな」
「ああ…これ一本あればレベルⅩの業人も粉砕できるぞ」
その時、天がレーダーのようなものを取り出した。
「何だそれは」
「…業の濃度を探知するレーダー……ついでに作ったのだ……」
「ほぅ…」
獄が机の上に、黒い石を置いた。
「業に汚染された北海道で…拾ってきた石だ」
天が石にレーダーを近付けると、レーダーはアラームを出して、数値を表示した。
「1050…」
「基準は…普通の人間が10…業人は1500くらいだ…」
「梅岡と十郎は13……川畑は0…宇川も0で……ふむ…これは便利だな」
するとオロチが、九州のある方向へ向いた。
「……早速…ソレを試せそうだぞ…」
「なに…?」
その時、抵士官が研究室へ入ってきた。
「大変です!…九州の業人が……本州へ侵攻してきています!!」
「…なんだと……」
「よし!…試し斬りしようぜ!!」
抵士官と、ストレンジャーは急いで研究室を飛び出した。
「全く……ん?」
天は、机に置いてあるレーダーを見て、絶句した。
「…7851900だと…?」
「……これは…」




