ハカセの花
「…ふむ…これが本来の道か…」
「よし!…行こう!」
マイケル達は、頂上へ向けて再び歩き始めた。すると今度は、突如身体が重くなった、地面に吸い寄せられるように、ミノルが膝をつく。
「ッ…く…!?」
「これは……またトラップだね…」
ミユキとマイケルは平然と立ち、頂上を見ていた。
『…へ…平気なのか…ッ!?』
「……ミノル君…大丈夫?」
「!」
ミノルはその言葉を聞いて、無理やり立ち上がった。
「…問題無い…ッ!」
「……そう…じゃあ行こう」
『こんな所で立ち止まってる場合じゃねぇ…』
そして、マイケルとミユキは普段通りの速度で、ミノルは少し遅く頂上を目指した。
「……少しペース落とそう…か…?」
ミユキがミノルへそう言おうとした時、マイケルがミユキの口元へ手を出した。
「…あの目をした奴に…ソレは言わない方がいい……」
「……ハァ…ッ…ハァ…ッ…」
「………そうだね…」
「…行くぞ」
後ろの方で歩くミノルを無視して、2人は頂上を目指した。
「…クソ……ッ!!」
『俺は…リコを……ッ!!』
「……こんな場所で止まるわけにはいかねぇ…ッ!」
地面を重々しく蹴り、2人へ追いついた。
「悪い…遅れてて……ちょっと転んでた…」
「…フン」
そして歩き始めてから数分後、3人は頂上へと辿り着いた。
「……富士山の…火口だ…」
「…ここが目的地か……」
3人は火口を覗き込んだ、火口の中心には、大きな花が咲いていた。
「…花の元へ行こう」
「……ああ」
火口の中心へ降りて、3人が花を見上げると、花の中心にリコの姿があった。
「リコ!」
「…ふむ……このような姿となるとは…予想外だな……業の力は…まだまだ研究する必要がありそうだ…」
ミノルが声のする方を見ると、そこには顔の見えない防護服に身を包んだ男が立っていた。
「……お前がリコを…」
「ああ…SdSの情報を持ち帰ってきてくれたからな……褒美に業の実験台にしたのだ」
「テメェ…ッ!!」
するとさっきまでとは比べ物にならない重さが、ミノルへ襲いかかり、ミノルは地面に倒れた。
「ぐ…ッ…う……」
「この状態でも…知能はあるようだ……私を守るとは…」
「…君は誰?…カイトを復活させた人?」
「……私は…まぁ……博士とでも名乗っておくか…」
「ハカセ…」
ミノルは身体から、血を吹き出しながら立ち上がった。
「あっ…大丈夫…?」
「ああ…それよりも……テメェがリコをこんなにしたのか…ッ!」
「うむ…リコはもういらないんでな……最後にこの富士山を中心に…業を広める爆弾の役割を果たしてほしかったのだ……」
それを聞いたミノルは、目の色が変わりハカセへ斬りかかった。
「おっと…遅い遅い……戦闘能力を持たない私でも躱せるぞ」
「くッ…」
身体にとてつもない重さが伸し掛かり、ミノルは上手く剣を振るう事ができない。
「うぉぉッ!」
「…!」
しかしミノルは、剣を振ると見せかけて、剣を投げ飛ばした。剣はハカセに命中し、ハカセの防護服に少し傷が付いた。
「ま…マズイ…」
ハカセは走って逃げようとするが、途中で苦しそうに声を上げて、地面に転んだ。
「逃さないよ」
「…ッ……」
ミユキがハカセの腕を掴むが、ハカセはその場で消えた。
「……テレポートか…」
「…仕方ない……今はリコを何とかしよう」
「……そうだね…」
3人は、花の中心へいるリコを見た。
「…業を広める爆弾……という事は…このまま放っとくと…リコは爆散してこの周辺区域を…九州や北海道のように業による汚染区域にするのか…ッ!」
「……止めないとね…」
ミユキは花の茎を触りながら、包丁へメメントモリを宿した。
「…茎を切って…リコ君を花から引き剥がそう」
「……切って大丈夫か…?」
「多分」
そしてリコは、花の茎を斬った。花はメキメキと音を立てて、地面に倒れた。
「リコ…!」
3人は、倒れた花の中心にいるリコへ駆け寄った。
「大丈夫か!?」
「……………」
リコは返事をしない、ミノルがリコを花から引き剥がそうと、引っ張る。
「3人でやろう」
「…ああ」
3人はリコを掴み、321の掛け声と共に、引っ張った。リコはべリベリと花から引き剥がされ、もう一度引っ張ると完全に花から剥がれた。
「……おっ…!」
「…身体が軽い……重みが無くなった…」
「よし…一旦リコを安全な場所へ…」
「花はどうするの?…リコ君を引き剥がしたけど……花にはまだ業が渦巻いてる…」
するとマイケルが、ミユキとミノルへ言った。
「花は爆発しないよう…俺が何とかする……お前らは先に降りてろ」
「え?…マイケルが?」
「ああ……さっさと行け…」
「……分かった…行くよ…ミノル君」
「あ…ああ」
2人はマイケルをその場に残し、リコを担ぎながら火口を登った。
「…さて……やるか…」




