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渇望する覇者



「助けて!…た…助けて!…もう……これ以上ヤられたら…」

「ふふ…君を助ける者はいないよ…」

「伍城さん!…助けて!」

「…………伍城さんも来ないよ…」


少年を囲むようにして、白衣の魔族達は倒れていた、少年はそれを見てニヤリと笑う。


「ぐ……がふッ……」

「……いやぁ…この数に襲われるのはヤバかったね……嬉しすぎて思わず震えちゃったよ」

「あ……悪魔…だ……」

「ごめんって!…久々にこんな愉しい時間を過ごせたんだ!…加減なんてできないよ…」


白衣の魔族達は、満身創痍で倒れ、もがき苦しんでいた。


「…まぁ…安心してよ……【反殺】は付与してあるからサ!」

「う……うぅ……」

「さて!…愉しい時間は……そろそろお開きにしようか」


少年は白衣の魔族を跨いで実験場を後にした。実験場から廊下へ出ると、少年はその場で耳を澄ました。


「……さてさて…あれだけ大騒ぎしたから………誰か来ると思うけど…」


耳を澄ませると、周囲から複数の足音が聞こえてきた。それは音を聞きつけてきた警備だった。


「……5人か…相手にするのもめんどくさいなぁ……早く帰りたいし……よし!…音響でこの場所の構造は分かったから逃げるか!」


少年は把握した出口に向かっていった。出口は少年のいる廊下を右へ曲がり、その先にあるT字路の左へ進み、その先を真っ直ぐに進んだ場所にある。


「……あった!…階段だ!」


その階段を登ると、そこは無人で研究室のような場所だった。しかし、実験場のように死臭は漂ってていなかった。


「……魔王城の研究室か…」


その場所は魔王城にある研究室だった、地下と研究室は繋がっていたのだ。少年は地下に続く階段に透明な壁を召喚した。


「………さて…魔王城から出ようか」


少年は魔族に扮して、研究室から出ると、豪華な装飾のされた壁と、高そうな絵画が飾られている廊下を歩きながら出口へ向かっていった。


「……相変わらず………豪華なもんだねぇ…」


廊下を歩いていくと、上の階から大声が聞こえた。少年は気になり、出口とは反対方向にある上の階へ通じる階段へと歩を進めた。


「……こういう事は気になっちゃうんだよね」


少年は上の階から聞こえる大声の元へ歩いていった。


「……ここからか」


スライドするドアの隙間から少年は中を覗いた。そこは修練場で、道場のようだった。魔族が剣術を練習している。


「…みんな強いね……魔族の精鋭部隊ってところかな……けど…あの老魔族はそれよりも強い…四騎士レベルか…それ以上だね…」


そして、その練習を正座して奥で見ている老境の魔族を少年はジッと見ていた。


「………


「……はッ!!」

「せいッ!!」

「……………それまで」


老境の魔族が木刀を振る魔族を止めた。木刀を振っていた魔族達は老境の魔族の前で並び、正座した。


「………お主達の鍛錬は今日を含めると一年になるが……何か変化はあるか」

「…変化……」

「以前よりも疾く振るう事ができるようになりましたが…」


門下生であろう魔族が老魔族の問いに対してそう答えると、老魔族は静かに言った。


「…………私は……あの時から何も変わっていない……あの敗北から…」

「敗北…」

「ラコウ様が…」


門下生はどよめいている、するとラコウはゆっくりと語り始めた。


「……十年前の戦争………それ以前…その更に以前の事だ…」



……



「……弱い…」


私は絶望していた、猛者とはこの程度なのか、修羅とはこの程度なのかと。私はかつて、ライド大陸を彷徨っていた。


「どこか…私と対等な強さを持つ者はいないものか…」


そこそこ名の知れた強者とも戦った、1分以上かかった事は無い。当時の魔王の四騎士とも戦った、刃を身体に触れさせていない。


魔剣と呼ばれた者とも戦った、最凶と謳われた者とも戦った、神の手、魔王の懐刀、荒山の怪物、この大陸で二つ名を持つ猛者全てとは刃を交えた。


誰一人として、俺と対等な強さを持つ者はいなかった。


「……この大陸には私を超える者はいなかった……………レイド大陸……あの大陸には猛者がいる事を祈るばかりだ」


そうして私は魔族という事を隠し、レイド大陸へ向かっていった。レイド大陸では私の見た事の無い剣術、魔術を扱う者が多かった。


「……素晴らしい…ッ」


レイド大陸は猛者の宝庫だった、心踊る戦いができた。しかし、それでもなお、私に勝てる者はいなかった。


そんな時に出会ったのがとある放浪者、私のように世界を彷徨っていた樹一郎(キイチロウ)という漢だった。


「…………強いな……お主…」

「ああ…………お前も…な…」


一面の花畑、私は剣を抜く、樹一郎も太刀を抜く、そしてお互いが向かい会った刻、あの長く、楽しく、恐く、嬉しく、手に汗握った闘いは始まった。













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