突如
「……楽織…一つ言っておこう……これから向かうのはカイトの隠れ家だ…そこでカイトとは…ほぼ確実に戦闘になる……カイトと戦闘になれば…お前ら全員を守る余裕は無いからな……俺も…ヤタガラスも…」
「…分かってます」
自信の眼差しで、楽織はそう答えた。そしてゲームに出てくる、聖剣みたいなレジアルを取り出した。
「今日の為に…レベルⅧのレジアルも準備して来ましたから…!」
「……ならいいがな………行こう」
俺達は万全の準備をして、山奥の森の中へと足を踏み入れた。
「…何かある森ってさ……大体暗いよな…雰囲気が……」
「……まぁな!」
「ん?…みんな……あれは何だ…?」
楽織が指差す方を見ると、ゆらゆらと揺れる人型があった。
「…業人……」
「……カイトの隠れ家の近くだからな…業人がいてもおかしくないか…」
俺はゆっくりだが、敵意剥き出しで近寄ってきた業人を、先手必勝でブッ倒した。
「ふぅ…」
「…この区域は汚染されてるなんて…聞いてなかったんだけどなぁ……」
「……大地が汚染されてないだけで…業人はいるのかもな…」
すると辺りが謎の霧に包まれてきた、何だか嫌な感じだ。
「嫌な予感が……」
「…お互いに離れるな……」
俺達は距離を取らずに、前へ進んだ。
「モ゛…モ゛…」
「…デカい……」
霧の奥には、巨大な影が蠢いており、奇妙な鳴き声が響いていた。
「ホラーゲームかよ……そういえばダークソ◯ルにこんな霧の濃いステージがあったな…」
「ダークソ◯ルやりてぇ」
「久々にやりたいねぇ〜…」
「おい…さっさと行くぞ…」
危機感や緊張感の皆無な会話をしながら、俺達は霧の中を進んでいった。そんな時、楽織が木の枝を踏んだその瞬間、一瞬の静寂のあとに辺りから多種多様な咆哮がした。
「………楽織さん…」
「…ごめんなさい……七海さん」
「……ああ…来るぞ…」
「ははッ!…戦闘か!!」
咆哮がした後に、草の揺れる音やら風の音がしてきた。
「…やるぞ」
「…………ああ」
「ごめんなさい…みんな……」
「しょうがねぇ!…ドンマイ!ドンマイ!」
俺達はそれぞれ、霧の方を凝視しながら構えた。
「うおッと!!」
「うわ…ッ!」
宇川が、霧の奥から飛んできた投擲物をキャッチした。
「何だコイツァ…?」
「岩…か…?」
「投げ返し…ッ!!」
そして飛んできた方向へ、宇川は岩をブン投げ返した。すると、呻き声が聞こえた。
「……ゥ…ォ…」
「命中!」
「スゴ…」
その時、霧の中から業人が飛び出してきた。さっきの奴ではなくて、腕が刃になっており身体が金属みたいな業人だ。
「やっと姿を現しやがったな!」
「…ここは俺が…ッ!」
襲いかかってきた業人を、楽織が踊るように斬っていった。
「……天才と呼ばれるだけはあるな…」
「強い上にハーレムって…『小◯家にな◯う』…みたいだな゛ッ!?」
俺は、業人をブッ倒しながら言った。そして倒していると、段々業人の気配が少なくなってきた。
「今のうちに上へ行くぞ…!」
「ああ」
目の前の業人を突っ切って、俺達は走っていった。少し走ると、霧が晴れて業人の気配が完全に消えた。
「……この森は当分…立ち入り禁止…!」
「…こんな数の業人がいたのにもかかわらず…今まで民間人の死者が1人も出てきてないのが不思議だな…」
そして先へ進んでいると、目の前には開けた広場があり、その真ん中に小さな小屋が見えてきた。
「アレか…?」
「……隠れ家とはいえ…お粗末だな」
俺達は小屋へと、近付いていった。
……
「…カイトは……いなさそうですね」
「……ヤタガラス…俺と楽織は外で業人が来ないか見張っておく…手掛かりを探しててくれ」
「カイトが来たら知らせるよ」
「了解…ッ…」
ヤタガラスは小屋の中に入った、小屋の中には机と椅子があるだけで、特に変わったものは無かった。
「…何も無ぇ……」
「……まさか…ここまで来て何も無いとか?」
「マジかよ……」
小屋の中で手掛かりを探すが、手掛かりは一向に見つからない。
「…………とりあえず…外に出ようか」
「…ああ」
ヤタガラスは外に出て、七海と楽織へめぼしいものは無かった事を伝えた。
「……マジすか…」
「ああ……もしかしたら…もう手掛かりを持って逃げたのかもな…」
「クッソ〜!!」
その場の全員が、諦めた様子で森を抜けようとした。すると、ナオトが小屋の方を見ていた。
「…父さん…?」
「……何か気配感じた」
「え…?」
ナオトは小屋の方へと歩いていった、しかし、ナオトが歩いていった場所には誰もいない。
「………悪い…気のせいだっr」
その刹那だった、ナオトの足元から黒い火柱が立った。
「…え……?」
火柱が消えると、そこにはボロボロになったナオトの上着しか無かった。
「気のせいじゃないよ」
「カイト…ッ!?」
「え…そん…な……えっ…」
「カイト……!?」
「こんちわ」




