殺意の具現化
「よし……3…2…1…突入ッ!!」
そしてその合図と共に、俺達は一斉に地下都市へと攻め込んだ、悪魔達は混乱している。
「SdS!!」
「狙うは黒の王だ!!」
俺達は、作戦通りそれぞれ分かれた。第1位とヤタガラスの俺達が黒の王の捕獲、それ以外のみんなはレベルⅥの悪魔達を捕獲する。
「なるべく殺すなよ!…コイツらは貴重な情報源だ!!」
「……悪魔を殺さず捕獲するのは…かなりムズいな…」
「まぁ…いままでは……殺しても蘇生させる事ができたから…殺すのに慣れちまってんだろう……」
戦いを繰り広げる悪魔と抵士官を避けて、俺達は城へ向かった。
「うお!!…ヤタガラスと第1位が城の方へ!!」
「おい!…誰か奴等を止めろ!!」
城へ向かう俺達を見て、沢山の悪魔が追いかけてきた。
「……僕が止めてくるよ…!」
「んじゃあ俺も…!」
「…よし……頼んだ…」
「ここを崩さねぇように…リミッターはレベルⅠまでしか解除しないようにしとけよ!!」
そして宇川とミユキが食い止めている間に、俺達は城の中へと入っていった。中に入ると、俺は近くの大きな時計をドアの前に置いた。
「これで…少しくらい時間稼ぎできるだろ……まぁ…宇川とミユキがいるから大丈夫だと思うけど…」
「………3人を見つけよう」
「手分けして探すか」
俺と川畑と樹一郎は、一番ヤバイと言われてるシェリーを探し、第1位達はクロームとロードギアを探す事となった。
「……じゃあ…とりあえず一番上まで行ってくる」
「最上階へ行くの?」
「ああ…ボスは大抵……最上階にいるからな…」
「ゲームのやり過ぎですね」
そして第1位の土方、江頭、楽織、狂夜はそれぞれ分かれて、クロームとロードギアを捜索し始めた。
「川畑…樹一郎………油断すんなよ」
「分かってるよ…」
その時、川畑が俺の頭上に落ちてきた置き物を、手に取った。
「…油断してるのは…お前じゃないか?」
「……そうみたいだな…よし……じゃあ今からマジモードになるぜ…!」
気合いを入れ直し、俺は最上階へ向かっていった。
……
「クソ…数が多いな……」
「このまま抵士官共を殲滅しろ!!」
抵士官はジワジワと、悪魔に押されていた。するとミユキが、宇川へ言った。
「…師匠……向こうの抵士官が押されてるから…アレを発動するね…!」
「おう!…発動しちゃって!!……あっ!…だけど飲み込まれねぇようにしろよ!」
そして黒山達、悪魔を倒している抵士官とストレンジャー達へ宇川が言った。
「離れた方がいいぞテメェら!!」
「あ…ああ…!」
抵士官が離れるとミユキの身体を、赤黒い瘴気が包み込んだ。
「……なんだアレは…」
「ナオトは氣力を具現化させるが…アイツは殺意を具現化させる事ができるんだ!!」
「殺意を武器へ…纏わせる事ができるのは知っていましたが……具現化させる事もできたのですね…」
そして赤黒い瘴気が消えると、ミユキは赤黒い衣を羽織っていた。
「…殺意を具現化させる…【人間失格】…アイツの唯一無二の技だ…!!」
「へぇ…」
ミユキは赤黒い大鎌を作り出し、悪魔を華麗に刈り取る。すると今度は大鎌がチェーンソーに変化し、悪魔を切り刻んでいった。
「殺意を具現化させて…武器を作ってんのか…」
「ヤッバ…」
そしてミユキが刃を振るったあとには、赤黒い斬撃が飛び交っている。
「……俺達ヤタガラスが生み出した死神流…ミユキはこれをマスターして…分かりやすく説明したものを本に記した……十郎も確かその本で覚えたんだよな!」
「はい」
「その中に【死を抱いて死ね】ってあっただろ?」
「…はい」
【死を抱いて死ね】、それは十郎が最後に、ミユキに教えてもらった技だった。
「…【死を抱いて死ね】……殺意を拳や武器に纏わせる…死神流の奥義的な技だが……メメントモリは殺意を纏わせるだけだ……纏わせるもんが無いと使えねぇ……」
宇川は、十郎を見ながら言った。そしてそのあとに続けて、ミユキをジッと見つめながら言った。
「だが…アイツは殺意を具現化させる技を創りやがったのさ…!!」
「つまりは…殺意を宿すものが無くとも……そのまま…ナチュラルな状態で使う事ができるってわけか……」
「まぁ…そういうこった!」
ミユキは悪魔を狂戦士のように、蹴散らしている。それを見て抵士官達は離れ、悪魔達も恐れていた。ミユキは、興奮を抑えられていないような表情を浮かべ、喘いでいる。
「………少し…我を忘れてるみてぇだから…そろそろ止めねぇと…!」
「え?」
「…人間失格は……ミユキが普段は抑えている暴力性を解放する……それが発動する為のトリガーなんだ!」
「……………………」
「だから…発動してから暴れ過ぎると……いつもは抑えていた暴力性が身体に馴染んじまって……元のミユキに戻れなくなっちまう…!」




