ヤタガラスとカイト
「俺達の為に戦ってくれって言っただけで…『お前もヤタガラスだ』とは一言も言ってないだろ…というか…それ言ったの宇川だし…」
「……確かに…」
「おいおい!…嘘だよ!…冗談だ!!……お前がヤタガラスだってのは…みんな認めてるよ」
「なんだよ…」
俺は、呆れた表情を浮かべる樹一郎へ言った。
「…気が楽になったか?……そんな感じでゆる〜く戦えばいいんだよ…!」
「……俺の気を楽にさせる為に冗談を言ったってわけか…?」
「まぁな!……樹一郎…足を引っ張らないようにしないといけないとか…そんな考えはするな……」
走りながら、俺は樹一郎へ叫んだ。
「考えるな!…感じろ!!」
「……それ言いたかっただけだよね…」
「ん!?…なんだねミユキ君!!」
そうして、そうこうしているうちに視線の感じたビルへ辿り着いた。
「…逃げられる前に上へ行かないとな」
「ここから登れるよ!」
俺達はビルのパイプや、梯子を使って屋上へと登った。屋上には、見覚えのある奴が立っていた。
「……エレベーターで登ってくればいいのに…僕は別に逃げないからさ…」
「じゃあエレベーター使えば良かった…」
「…まぁ…ともかく……久々だね…ナオト…」
「ああ…そうだな……カイト…!」
するとカイトは振り返った、まさかここで会う事になるとはな。
「……あれ?…君達どうして力を抑えてるの?……あっ!…そうか!……君達が本来の力を解放したら…勢い余って世界を壊してしまうからか!」
「そうだよ!」
「…カイト……お前はワーガナとエラトマ兄弟達に封印を解いてもらったと聞いているが………そいつらは囮で…黒幕がいる事が分かった」
「うん」
「……お前を封印から解いた…黒幕の目的は何だ…?」
カイトは空を見ながら、俺達へ話した。
「うーん…それは……今言ったらつまらないと思うから言わない!」
「言えよ!」
「その代わり…僕の目的を話すよ」
するとカイトは、俺達をジッと見て言った。
「君達ヤタガラスを倒す事さ…ッ!!」
「倒すんならよぉ!…全力の俺達を倒そうとしろや!!…ビビってんのかコラァ!!」
「うん!!…めちゃくちゃビビってる!!」
「クッソはっきり言うじゃねぇか!!」
「…手を抜いてない君達は正直言ってクソ強いからさ!」
カイト、プライドが全く無い奴だな。
「……そもそも…手を抜いてるとはいえ…父さん達に勝てるの?…手を抜いてても強いよ…?」
「うん…多分勝てるよ……頑張れば」
「自信があるようだな…」
「ああ…勿論……僕はあの力を手にしたからね…」
そう言って、カイトは掌を見せた、掌には口がある。
「…神喰らいの力……お前が持っていたのか…」
「僕だけじゃ無いよ…!」
「……まぁ…神喰らいの力なんか知るかよ……とりあえずさっさとブッ倒して捕まえようぜ!!」
宇川が地面を蹴って、カイトの元へ突っ込んだ。
「…あら?」
「やっぱり手を抜いているからかな……遅いよ」
カイトはいつのまにか、宇川の背後へ立っていた。
「…宇川君…ダサッ…」
「クソがァ!!…恥晒したじゃねぇか!!」
宇川が少しイラついた様子で、カイトを睨んだ。手を抜いた俺達と同じくらいに、カイト強くなってるな。
「僕も成長したんでね……ブッグッ!?」
その瞬間、カイトは宇川に思い切りブン殴られて、地面に激突した。
「……あ…れ…?……遅く…ないじゃん…」
「…カイト君…ダサッ…」
カイトは地面にめり込んだまま、俺達へ言った。
「はは…まだ神喰らいの力を上手く使えてなかったようだ…」
「言い訳すんなって」
「…そう捉えてもらっていいよ……だけど…絶対に君達をブッ殺すから…ッ!!」
「宇川捕まえろ!!」
「あっ!?」
するとカイトは、瞬時に消えた。どうやら、テレポートを使ったようだ。
「……めんご」
「…ッたく……油断すんなよなぁ…」
……
「グロォォォッ!!」
「…ッく…」
「この人数でも近寄れねぇとはな…ッ!」
小鳥遊の激しい攻撃に、ミノル達ストレンジャーは耐える事しかできていなかった。
「待たせたな」
「…ナオトさん…ッ!」
俺はビルの上から小鳥遊へ、ドロップキックをかました。
「大丈夫か…?」
「……あぁ…なんとかな…」
「グルォ…」
「…業に深く侵食された奴はバケモノになるが…コイツは……」
すると小鳥遊は、俺へ殴りかかってきた。
「……おっと…」
俺はすかさず避けたが、小鳥遊は獣のようにやたらめったら、攻撃している。
「早くブッ倒さねぇと…周りがヤバい事になるな」
「じゃあ僕が…」
ミユキが、小鳥遊の目の前に立った、ミノルがミユキへ叫ぶ。
「ミユキさん!!」
「…ふッ…!」
小鳥遊がミユキへ殴りかかったその瞬間、大きな轟音と共に小鳥遊は大きく仰け反り、倒れた。
「…ッ…ガ……アッ」
「……一撃かよ…」
「やっぱりヤタガラスにはバケモノしかいない」




