本性
「……これからお前へ…殺しの技術を教える…」
「…え?……殺し…?」
この時は助けてくれたと思っていたのだけど、アスモは僕を助けたのではなく、さらなる苦痛を与える地獄へと引き摺り込んでいたんだ。
「いや……何で…」
「…早くしろ」
それから僕は、何度も何度も、人を殺す技術を植え付けられた。
「さぁ…やれ」
「…う……うぅ…」
最初は動物だった、それでも僕は嫌だった。
「…ッたく…さっさと殺せよ!……こんなシカぐらいよぉ!」
「……あ…」
僕には二人の兄がいた、その二人は僕と違って動物や人間を殺すのに、躊躇いが無かった。むしろ、殺しを愉しんでいるような感じだった。
「…仕方ない……今日も私の部屋へ来い」
「……はい…」
「ははッ!……動物くらいサクッと殺せばいいのによ…!」
殺すのを怖がったり、嫌がったりしたらいつも部屋へ呼ばれた。
「コレをするのは124回目だ……お前の兄二人にやったのを合計してもここまではいかないぞ…」
「や゛りますッ!…次はやりま゛すッ…から゛…ッ!!」
「…そのセリフも……聞き飽きたな…」
言う事を聞かなかったら、苦痛を与えられた。
「……何故…そこまで殺しが嫌なんだ?」
「…だ…だって……可哀想…だし…」
「…………私の認めた息子なら…殺しを何とも思わない筈だが……」
僕は、瀕死の動物の前で、僕はナイフを持ってへたり込んでいた。
「そうだ!…親父!」
「……ふむ…そうだな…」
兄さんがアスモへ耳打ちして、何かを言っていた。すると、僕は車に乗せられて、何処かへ連れていかれた。
「…何処へ……」
「へへ…最初からこうしとけば良かったな…!」
そしてとある家の前で車が停まり、兄さんが車から降りていった。
「ちょっと待っとけ」
兄さんが車から降りて、1分くらいが経つと、家の中から兄さんが出てきた。
「前よりも早いな」
「成長してんだよ俺は」
「よし……来い…ミユキ」
僕は父さんに連れられて、家の中へ入っていった。
「う…ッ!?」
家の中には、ボディーガードらしき人達と、メイドさん達の死体がたくさん転がっていた。
「…早く来い」
アスモや兄さんは、その死体を元から無かったかのように、踏みつけて奥へと歩いていった。
「……うぅ…………ひゃッ!?」
この時に僕は、避けながら歩いていたけど、死体の手を踏んでしまった、その時の感覚は今でも覚えてる。
「ご…ごめんなさい!」
「何してる…」
そして奥の部屋へ入ると、地面に知らないおじさんが倒れていた。よく見ると、おじさんは身体を拘束されていて、動けない様子だった。
「一度…人を殺せば病み付きになるからよ…!」
「さぁ…殺せ…」
「え…嫌だよ…」
「………この男は…お前をあの男色家の元へ売り飛ばした…人身売買組織のリーダーだ…死んでも誰も悲しまない」
目の前にいるのは、僕をあのおじさんへ売り飛ばし、お兄さんから離した張本人だ。
「……お…やるか…?」
「静かにしてろ」
気付けば僕は、ナイフを持ってその男に馬乗りになっていた。
「…ッ!」
しかし、僕はナイフを刺さなかった。憎くても、胸にナイフを刺す勇気、度胸、殺意が無かったからだ。
「………駄目だったな…おr…」
僕の持つナイフは男の心臓を正確に貫いていた、アスモが、僕の腕を掴んで無理矢理ナイフを突き刺したんだ。
「……あっ……」
溢れる鮮血が顔に付いたその時、全身が何とも言えない高揚感に包まれ、僕はその場で喘いでいた。
「…ふむ……」
「アハ…アハッ……アハハハハハッ…!」
「…ここまで化けるとはな…」
だけど、僕はアスモに嘘を付いていた。
「…………ごめん…ごめんね…」
殺したように見せかけて、動物は殺していなかった。
「今…治してあげるから…」
動物を殺したかのように見せかけて、付けた怪我を治していた。そんな時に、怪我をしていた僕の血が動物の怪我の部分に付着すると、その怪我が治っていた。その時に、僕の血の効力を知った。
「……隙を見て逃げないとな…」
初めて人を刺した時は、本当に気持ち良くて喘いでしまったけど、あの後に、シラフへ戻ることができた。
「…まぁ……俺達はまんまと騙されていたってわけだ」
「私すらも欺くとはな…」
しかし、僕の演技はすぐにバレてしまった。
「……僕は…アンタらとは違う…!」
「同じだ」
するとアスモは、僕に何かの肉を見せてきた。それを見ると、僕の身体の中が熱くなった。
「…やっぱりな……お前は人間の血肉に興奮するようだな…」
「変態じゃねぇか…!」
「……ッ…ぅ…ぅ…」
そしてアスモは、拘束されている僕のすぐ近くに肉を置いた。すると、兄さんが僕に言った。
「お前は血が好きな……イカレ野郎だ…俺達と同じようにな…!」




