非凡な日常
「…ん?」
少年が5歳になり、いつものように部屋で遊んでいると、外から声が聞こえてきた。
「……金は必ず用意します…だから…!」
「無理だと言っているだろう?……もう買い手がついたんだ」
そしてその次の日、部屋へ知らない人達が四人、入ってきた。
「…だ……誰…ッ?」
「……連れていけ」
知らない人達は、少年を無理やり部屋から出すと、手錠などで拘束し始めた。
「な…なに!?」
「なにボサッとしてんだ!…さっさとしろ!」
「助け…助けて!…お兄さん!」
少年が「お兄さん」と何度も叫んでも、お兄さんの反応は無く、それどころか姿も見えなかった。そして、少年は大きな箱の中へと入れられた。
「……どうして…お兄さん……僕のこと…嫌いになったの…?」
暗い箱の中へ入れられて数時間後、箱が開かれて光が見えた。
「…う…ッ……」
「これは……想像以上に良いではないか…!」
「こ…こは…」
そこには、知らないおじさんがいた。
「ここどこ!?…僕……自分の部屋にいて…それで…」
「あぁ…生まれた時からあそこにいた君は知らないのか…」
するとおじさんは、僕を見ながら言った。
「君がいたあの場所はね……君みたいに小さな子供を…私のようなおじさんが買う場所なんだ…!」
「………え?」
僕の生まれ育ったあの場所は、人身売買組織が捨てられた赤子や、さらってきた赤子を育て、売買する店だったのだ。そんな現実を、僕は叩きつけられた。
「…そん……な……」
「さて…それじゃあ早速…使ってみようか……君は50万ドルの価値があるかな…?」
5歳の僕でも、これから何が起こるのかは予想できた。
「嫌だ!…嫌だ嫌だ嫌だ!!」
「こら!…大人しくしなさい!」
それから、おじさんは本能のままに僕へ、歪んだ愛を押し付けた、それから1年後。
「……ふふ…今日はどうしてあげようか……かぅ…ッ!?」
「………?」
「ほぅ…今回は大丈夫そうだな……」
おじさんを倒して、マスクをした男の人が僕の方へ歩いてきた。
「狂った様子も無い……良い精神力だな…だが……何より良いのは…ゴッデスヒューマンだという事か…」
「……だ…れ…?」
「私はアスモ…私と一緒に来い」
その男の人は、アスモと名乗った。僕はこの男の人が、自分を助けてくれたと思い、この地獄から解放されると思っていた。
「助けて…くれて……あ…ありがとう…ございます……」
「………助けた訳ではない…厳選をしていただけだ…」
「…厳選…?」
「……いや…何でもない」
この時の僕は、アスモの本性を知らなかった。この時に、アスモの言っていた厳選の意味を理解していれば、未来は変わっていたのかもしれない。
「ここが……」
「入れ」
そして、家へと着いた。アスモの家は豪邸で、とても広かった。僕を弄んだ、おじさんの家よりも。
「……これからお前へ…殺しの技術を教える…」
「…え?……殺し…?」
この時は助けてくれたと思っていたのだけど、アスモは僕を助けたのではなく、さらなる苦痛を与える地獄へと引き摺り込んでいたんだ。
「いや……何で…」
「…早くしろ」
それから僕は、何度も何度も、人を殺す技術を植え付けられた。
「さぁ…やれ」
「…う……うぅ…」
最初は動物だった、それでも僕は嫌だった。
「…ッたく…さっさと殺せよ!……こんなシカぐらいよぉ!」
「……あ…」
僕には二人の兄がいた、その二人は僕と違って動物や人間を殺すのに、躊躇いが無かった。むしろ、殺しを愉しんでいるような感じだった。
「…仕方ない……今日も私の部屋へ来い」
「……はい…」
「ははッ!……動物くらいサクッと殺せばいいのによ…!」
殺すのを怖がったり、嫌がったりしたらいつも部屋へ呼ばれた。
「コレをするのは124回目だ……お前の兄二人にやったのを合計してもここまではいかないぞ…」
「や゛りますッ!…次はやりま゛すッ…から゛…ッ!!」
「…そのセリフも……聞き飽きたな…」
言う事を聞かなかったら、苦痛を与えられた。
「……何故…そこまで殺しが嫌なんだ?」
「…だ…だって……可哀想…だし…」
「…………私の認めた息子なら…殺しを何とも思わない筈だが……」
僕は、瀕死の動物の前で、僕はナイフを持ってへたり込んでいた。
「そうだ!…親父!」
「……ふむ…そうだな…」
兄さんがアスモへ耳打ちして、何かを言っていた。すると、僕は車に乗せられて、何処かへ連れていかれた。
「…何処へ……」
「へへ…最初からこうしとけば良かったな…!」
そしてとある家の前で車が停まり、兄さんが車から降りていった。
「ちょっと待っとけ」
兄さんが車から降りて、1分くらいが経つと、家の中から兄さんが出てきた。
「前よりも早いな」
「成長してんだよ俺は」
「よし……来い…ミユキ」
僕は父さんに連れられて、家の中へ入っていった。
「う…ッ!?」




