ミユキの過去
「…クソ……ミユキ…大丈夫か?」
「ぁぁ…ぁ…」
「ミユキ!…俺を見ろ…!」
ナオトは膝をつき、ミユキの肩を揺らしながらジッと目を見て言った。
「…父さん……」
「しっかりしろ…ミユキ…」
「……怖い…怖いよぉ………」
そう呟きながら涙を流すミユキを、ナオトはそっと優しく抱きしめた。
「大丈夫だ…お前を怖がらせるアイツはもういない……」
……
「…という事があった………ミユキ…落ち着いたか…?」
「………………うん」
俺達ヤタガラスは、さっきまでの事を会議室でみんなへ話した。
「……やはりその…アスモとやらだったな…」
「ああ…」
「それで…そのアスモという男は何者なんだ?……人間…だよな…?」
「かなりの歴史を持つ…暗殺者の一族……その一族の今の長だ……」
アスモは最高の腕を持つ暗殺者だ、とある事があり俺が半殺しにした所、姿を消していたのだが、まさかここで出てくるとはな。
「…暗殺者……」
「ミユキとは…どういう関係なんだ…?」
「まぁ……血縁関係で言えば…ミユキの本当の父親だ……」
「なるほど…」
まさか、アスモと出会うことになるとはな。
「もしかしたら…カイトと手を組んでいるのかもな……そうじゃなかったとしても…俺達の敵の可能性は高い…」
「……厄介な敵が一人増えたわけだ……」
「…アスモがカイトと手を組んでいても…対応できるような作戦を考えないとな…」
そんな時、梅岡がミユキへと尋ねた。
「…………あの〜…ミユキさん…」
「…ん?」
「正直…聞かない方がいいかなと思ったけど……その首を縫ってある糸も……アスモと関係があるのか…?」
するとミユキは、少しの沈黙の後に言った。
「…関係はあるね」
「えっ……」
「実は僕の過去に関係してるんだけど…聞きたい人いる?」
ミユキが尋ねると、会議室のほぼ全員が興味ありげに手を挙げた。
「多いね……」
「まぁな……やっぱり気になるし…」
「…じゃあ話そうか……」
そして、ミユキは過去についてを俺達へ話し始めた。
「……僕が父さん…ナオトと出会うもっと前の過去の話……」
……
「うわぁ!…美味しそう!」
「…すまねぇな……こんな貧相なもんしか食わせられねぇで…」
「いやいや!…僕にとってはご馳走だよ!」
とある街の路地裏にあるとある店、その奥の部屋に物心ついた時からその店にいる少年がいた。少年は、名も知らないお兄さんと、仲良く暮らしていた。
「……絶対に部屋から出るなよ…」
「分かってるよ!」
その少年は、店の奥にある部屋から出る事を、許されなかった。しかし、いつも決まった時間に戻ってくる、優しいお兄さんがいたので寂しくはなかった。
「…ん?」
少年が5歳になり、いつものように部屋で遊んでいると、外から声が聞こえてきた。
「……金は必ず用意します…だから…!」
「無理だと言っているだろう?……もう買い手がついたんだ」
そしてその次の日、部屋へ知らない人達が四人、入ってきた。
「…だ……誰…ッ?」
「……連れていけ」
知らない人達は、少年を無理やり部屋から出すと、手錠などで拘束し始めた。
「な…なに!?」
「なにボサッとしてんだ!…さっさとしろ!」
「助け…助けて!…お兄さん!」
少年が「お兄さん」と何度も叫んでも、お兄さんの反応は無く、それどころか姿も見えなかった。そして、少年は大きな箱の中へと入れられた。
「……どうして…お兄さん……僕のこと…嫌いになったの…?」
暗い箱の中へ入れられて数時間後、箱が開かれて光が見えた。
「…う…ッ……」
「これは……想像以上に良いではないか…!」
「こ…こは…」
そこには、知らないおじさんがいた。
「ここどこ!?…僕……自分の部屋にいて…それで…」
「あぁ…生まれた時からあそこにいた君は知らないのか…」
するとおじさんは、僕を見ながら言った。
「君がいたあの場所はね……君みたいに小さな子供を…私のようなおじさんが買う場所なんだ…!」
「………え?」
僕の生まれ育ったあの場所は、人身売買組織が捨てられた赤子や、さらってきた赤子を育て、売買する店だったのだ。そんな現実を、僕は叩きつけられた。
「…そん……な……」
「さて…それじゃあ早速…使ってみようか……君は50万ドルの価値があるかな…?」
5歳の僕でも、これから何が起こるのかは予想できた。
「嫌だ!…嫌だ嫌だ嫌だ!!」
「こら!…大人しくしなさい!」
それから、おじさんは本能のままに僕へ、歪んだ愛を押し付けた、それから1年後。
「……ふふ…今日はどうしてあげようか……かぅ…ッ!?」
「………?」
「ほぅ…今回は大丈夫そうだな……」
おじさんを倒して、マスクをした男の人が僕の方へ歩いてきた。
「狂った様子も無い……良い精神力だな…だが……何より良いのは…ゴッデスヒューマンだという事か…」
「……だ…れ…?」
「私はアスモ…私と一緒に来い」




