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戦の調べ



狐が太刀を抜き、美しいと感じるほど綺麗な一直線にアビスグリフォンの首を斬った。刃の軌道は赤黒く、禍々しくも神々しさがあった。


「ぐぎゃぇぇぇぇ!!」


アビスグリフォンは叫ぶ首を地面に落とし倒れた。そして、その首と身体は光を放ちながら消えた。


「……【神斬り】…未だ健在也…」

「…神斬り……ですか…」

「…………さっさとこの城を出ようぞ」


狐は血を払うと太刀を鞘に納めて、スタスタと先へ進んでいった、俺たちはそのあとを急いで追いかけた。そして、気になったので俺は狐に尋ねた。


「…その神斬りって……」

「………この太刀の事か」

「ああ…」


すると狐はその場に立ち止まり、俺たちの方へ振り返ると答えた。


「……この先に佇む神子が全て話してくれよう」

「神子…だと…?」


狐はそれ以上は何も言わず、先へ歩いていった。神子が神斬りについて話してくれる…か……狐と十郎の背を見ながら俺は歩いていると背後から殺気を感じた。


「……何だお前…」


俺は背後から何者かが突いてきた薙刀を手が切れないように掴んだ。薙刀を持つ者を見ると青白く、半透明な女だった。


「その女子…あの時見た女子と同じ顔で…同じ服であるな…」

「じゃあ、倒してここの事を聞くとしようか」

「いや……これは幻影だ…発動者の分身に過ぎぬ故…」


どうやらこの女は本体ではなく分身なので戦う事しかできないようだ、というか十郎のファントムみたいだな。


「…………本体を探さないと…ですね……ですがひとまずこの幻影を倒しましょう」

「ああ」


俺たちは構えた、女の分身も薙刀を構えた。そして、先手を取ったのは十郎だった。十郎が女の腹に向かって刀を振ると、女は素早くガードし、薙刀を振った。十郎も素早く後退する。


「……長い武器は相性が悪いですね」

「確かにな…」


槍や薙刀が剣より有利なのは常識だ。そして、不運な事にこちらは近接系の武器しか無い。


「……こちらの武器は剣と拳か…不利だな…」

「案ずるな、破れぬ砦など無い様に、勝てる方法も必ずある」


すると女が狭い廊下で薙刀を振りかぶり、壁を壊しながら振った。なんて大胆な!


「……よっ…と!」


下段を狙ってきたので俺たちは一斉にジャンプした。だが、女も負けじと空中に向かって薙刀を振った。


「オラァ!」

「見事…」


俺は薙刀を蹴飛ばして地面に叩きつけた、薙刀は地面に深々と刺さったが、女は軽く、いとも容易く、すぐに引き抜いた。


「…分身は本来の力の5分の1しか引き出せぬ筈だが……剛力也…」

「………凄いな…女性の身であんな力…」

「ええ…」


女は引き抜くと、休む暇も与えずに走ってきて、間合いを詰める。すると再び斬りかかってきた。先頭にいた俺はそれを避けてドロップキックをした。


「ぐッ……嘘だろ…!?」


俺の足を女は掴み、壁に向かって叩きつけて、地面に叩きつけるように投げた。なんとか受け身が間に合いダメージは皆無に等しいがな。


「大丈夫ですか!?」

「……70kgある俺を片腕で………なんつー力だよ…」


俺はその時にある策略を考えた。とても単純だが、行ける気がする。


「…十郎…狐……俺がアイツの猛攻を止めるからその間に攻撃してくれ!」

「……承知」

「何か考えがあるのですか?」

「ああ」


そして、俺は女に向かって走っていった。女は当然薙刀を振りかぶる、そして水平に斬ってきた。だが、俺はそれを待っていた!


「……せいッ!」


俺は薙刀を踏み付け、上から手を乗せて思い切り抑えた。これで動かせないはずだ。


「……なるほど…」

「…身体が武器でも道具でもある…梅岡さんらしい作戦ですね…!」


そして、十郎と狐は飛び上がって女を斬った。女は薙刀を落とし、その場で崩れるように膝をつくと淡く消えていった。


「よし…先へ進もう」

「ああ!」

「はい!」



……



「…………バケモノですね」

「バケモノにバケモノ呼ばわりされるとはな」


女とレクスは塔の近くにある広場で向き合っていた。レクスの周りには大量の魔族が倒れている。


「……大変だったぞ…魔族を殺さずに倒すのは」

「なら殺せばいい」

「阿呆……魔王はともかく魔族に恨みは無い…奴等は魔王に操られているだけだからな」


すると女は機械の様な無表情で、冷たく無情な声でレクスに言った。


「…かつて…覇王と呼ばれたあなたが…………随分と丸くなったものですね」

「……あ?」


眉をしかめたレクスの身体から殺意が流れ出てきた、すると女はそれ以外の何かに反応した。


「……どうやら…退散しなければならないようです」

「…目的の神子は諦めるのか?」

「はい……()()()()()()()()()を相手にするのは私には荷が重すぎますから」

「…………」


そう言い残して女は姿を消した。レクスが剣をしまうと、近くの道から二人の青年が走ってきた。


「レクスさん!」

「……お前たちか」












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