自分の道を突き進む
「……俺達は…地獄だろうが天国だろうが…アンタについていく事を誓ったからな…」
「そういえば…ニュートラルはどうするんだ?」
「メンバー全員が俺について来るって言ってるし……SdSと同盟を組もうと考えている…だが…それではもう『ニュートラル』ではないな…名前を変えなければならない…」
「あれ?…メンバー全員?……って事は…メンバーって5人だけ?」
「ああ」
もっといるのかと思ったら、アキラさんの『ニュートラル』は少数精鋭のようだな。
「少数精鋭ってやつか……まぁ…その方がアキラさんらしいけど…」
「……しかし一つだけ気がかりな事がある」
「…バケモノの事?」
「ああ……俺が戻ってきたら…みんなは嫌なんじゃないかって思ってな…」
するとアキラさんの肩をポンと叩いて、ブラックが言った。
「大丈夫だ…今のお前ならな…」
「…なに?」
「アキラさん!!」
そんな時、俺達の方へ数人の抵士官達が走ってきた。
「すみません!!…俺達……アンタの事をバケモノ呼ばわりしていたんだ…」
「…あの時は…悪魔や天使を一人で倒すアンタが怖かったんだ……悪魔を倒すその姿が…悪魔そのものだったから…いつか…俺達まで殺されるんじゃないかって…」
「だけど…今のアンタを見て…それは間違いだって気付いたんだ!…アキラさん…本当に…申し訳ありませんでした…ッ…」
「それなら!…俺もだ!!」
するとその抵士官達に続いて、中にいた抵士官達も駆けつけてきた。
「俺も…アンタに謝らなければならない!」
「僕も!」
「…いや…いいんだ」
俺達は沢山の抵士官達をかき分けて、会議室へと向かった。
「……ほら…大丈夫だっただろう?」
「………ああ…」
「お前は…バケモノではなくなったからな…」
「…どういう事だ…?」
「…お前は【Sign of Over】が暴走していたのだ……」
アキラさんが尋ねると、ブラックが少しの沈黙の後に言った。
「……【Sign of Over】…それって俺達とかミノルさんにいつのまにか付与されていた力…」
「…この際だから……【Sign of Over】について話しておくか…」
そしてブラックは、色々と話し始めた。
「まず…神を殺す方法は3つある……一つ目はクロウの力を持っている…二つ目は完璧に相性が良い神斬り武器を持っている……そして三つ目に…【Sign of Over】に目覚める…」
「だから俺は悪神を倒す事が出来たのか……」
それを聞いて、ミノルは何か思い出したかのように呟いた。
「…【Sign of Over】というのは…簡単に言えば業の力だ……」
「え!?…業?」
「ああ……人間には必ず微量な業が存在する…その業が……最も成し遂げたい事…欲しいものへの欲望と共鳴し…業が見事に身体と一体化する事で…クロウのように神殺しの力を得る……その力を得た人間は…【Sign of Over】と呼ばれる…」
そして続けて梅岡や十郎、ミノル、アキラを見ながら言った。
「…梅岡と十郎は復讐の達成…ミノルは悪神による世界滅亡の阻止など……それを達成したい欲望と業が程よく混ざり合う事により…【Sign of Over】に目覚める…しかしアキラ…お前はあの時…業が勝ってしまった……【Sign of Over】は欲望と業…どちらかが大きくなってしまうと容易く暴走する……あの時のお前は暴走し…業の圧を醸し出していたから…人々はバケモノだと恐れていたのだ…」
「……だからか…バケモノと恐れられたのは…」
「だが暴走といっても…お前のは軽いものだった……だからあの喧嘩で…再びお前の業と欲望が安定し…元に戻れた……そこから更に暴走すると外見も禍々しくなる…更に暴走すると……もう人間に戻れない…真のバケモノと化す……」
「………俺は暴走して…バケモノになりかけていたんだな……あの時みたいに…」
ブラックは、アキラを見ながら言った。
「暴走が軽いもので本当に良かった……バケモノになったお前を…見たくないからな…」
「…どうやら……俺は悪にも正義にも成り切れないらしい…」
「……そんな悪にも正義にも染められず…自分の道を突き進むお前だから…どの世界でもすぐに仲間ができるのだろうな…」
ブラックは着ているコートを整えながら、アキラへ言った。
「…業って凄い奥深いなぁ……」
「業は人に害を与える時もあるが……武器になったり…力を与えてくれたりと……時には…人に恩恵を齎す事もある…」
するとそんな時、宇川がブラックへ尋ねた。
「つーかよ!…ブラック!……お前…天界で裏切り者探さなくていいのかよ!?」
「…いや…今は天界ではなく様々な世界で捜索している……普通は神が世界へ降り立つのは禁止だが…そうも言ってられないからな」
「ふーん…」
「それじゃあ…アキラの暴走も収まった事だし…他の世界を捜索するから…ここらでお別れだな…」
そしてブラックは、俺達へそう言い残すと、姿を消した。




