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天雲ノ狐



「ふんッ!」


俺は前から飛んできた五本の矢のうち二本の矢を掴み、残り三本の矢は拳で粉砕した。弾丸はまだしも矢なら掴める。


「……矢程度なら掴めるぜ…」

「凄いですね…」

「魔法が使えれば一気に破壊できるんだがな」

「せっかく魔法を手にしたのに使えないのは嫌ですね…」


すると俺たちの話を聞いていたかのように弾丸が飛んできた。俺は反射的に避けたが、後ろには十郎が歩いていた。やばい、十郎に当たる…!!


「……!」

「なッ……」


十郎は軽く投げられた球を取るかのように、いとも容易く刀で弾丸を真っ二つに斬った。そして地面に落ちた()()の弾丸を拾った。


「これは……形…大きさ……そして僅かな黒色火薬のにおい………これは恐らく火縄銃から撃たれましたね……」

「火縄銃…か……」


この先は銃のゾーンなのか?……素手が武器の俺にすれば弾けないし…ガードもできないしで少し厄介だな。


「……銃か…」

「僕が弾丸は斬るので梅岡さんは後ろを見張っていてください」

「…そうだな……」


先頭に十郎が立ち、前からの攻撃を捌く、俺が背後からの攻撃を捌く、そんな陣形で俺たちは進んでいった。


「……………………」

「……………………」


俺たちは進んでいたが、兵士が襲ってくるだけで、一向に城との距離が縮まらない。まるでエスカレーターを逆走しているのかのように。


「……一体いつまで続くんだ…」

「…………距離が変わりませんね」


すると、木の陰に狐の面を被った着物姿の青年が立っていた、狐の面を被った青年は俺たちを見て手招きしている。


「誰だ……俺たちに手招きしているようだが…」

「このまま歩き続ける……というのもアレですし………行ってみましょうか」

「……ああ…」


俺たちは木の影に立つ青年の元へ小走りで向かった、幸い兵士は来ていなかった。


「……アンタは誰だ……それに手招きしていたが俺たちを呼んでいたのか?」

「……………今はその問いに答える暇は無い…一先(ひとま)ずついて来い」

「あ…ああ…」


俺たちはその青年についていった、青年は木々の間を進んでいっている、すると突然地面が木の床になり、辺りを見回すと木々は消えており、俺たちは窓の無い部屋に立っていた。


「…ここは……」

「お主らが向かっておった城の内部だ……よし…」


青年は部屋の(ふすま)を開けて外を確認していた。そして安全なのを確認したのか、俺たちに言った。


「…………今なら質問に答えよう」

「じゃあ……アンタは誰だ…」

(それがし)は天雲に住む……ただの狐よ……狐と呼べ」


狐の面を被った青年は自身を狐と名乗った。そして、俺が本名は何なんだろうか、素顔はどうなんだとか思っていると、今度は十郎が尋ねた。


「……あの霧は…」

「ふむ…某にも詳しい事は分からぬ……平原で転寝(うたたね)をしていた所…突如…この天雲ノ塔付近の平原に霧がかかったのだ…」


狐は平原でそよ風に吹かれながら横になっていると辺りが霧に包まれたらしい。だが、狐は前にも体験していたかのように冷静だった。そんな時、狐は続けて意味深な事を言った。


「……だが…霧のかかる前……平原付近に妙な女子(おなご)が訪れていた…武具を身に付けず…この危険な平原に…」

「…………女…気になるな…」

「…だが…今は考えていても致し方ない」

「ああ、そうだな」


そして狐は、ゆっくりと襖を開け、廊下を確認した後に俺たちの方へ振り返った。


「…………某は天雲ノ塔へ向かう…あの付近から臭いがするのでな……」

「ちょうどいい、俺たちもそこは行こうとしていたからな」

「そうですね」


俺たちは廊下へ出て、辺りを警戒した。それにしても廊下といい、部屋といい、外見といい、随分と和風だな。


「……敵の気配は無いな…」

「ええ…」


すると十郎と狐は何かに反応したのか、その場で立ち止まり、目の前の床を見た。何かあるのか?……俺にはなんの変哲も無いただの床にしか見えないが……


「どうした?」

「……床から妖の臭いがしておるぞ」

「梅岡さん、狐さん、モンスターが来ますよ」


すると床から巨大な影が飛び出し、俺たちの目の前へ着地した。


「なんだコイツは!?」

「……鳥と人間が合体したモンスター…ですか……」


俺たちの目の前には頭は鳥、首から下は人間で背中に翼の生えたモンスターが立ちはだかった。だが、スマコが使えないので情報が読み取れない。しかし、身体が真っ白という点はさっき戦ったアビスゴブリンと同じだ。


「…………鳥の妖か……この程度の妖など…()()の前では無力(なり)…」


狐は背中に背負っている太刀を掴み、鞘からゆっくりと抜いた。抜いたというよりも、鞘が()()()という方が正しいか。


そして、その刀は(おぼろ)な黒き光を放ち、その刃を赤黒い瘴気が包み込んでいた。













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