アキラ
「アキラさんを知ってるのか…?」
「ああ…ナオトの……従兄弟だ…」
ナオトは、暗い表情のアキラへ尋ねた。
「…何で……アンタがこの世界に…」
「……フン…そのくらいなら…話してもいいだろう……」
「アキラさんは…この世界の人間ではなく……ナオト達と同じ世界の人間だった…?」
そしてアキラは、自身の事を話し始めた。
「俺は…まぁ…色々あってな……弱きを助けるヒーローのようになりたいと思い……この世界へ行き…SdSのメンバーとなって…悪魔や天使からこの世界を守っていた…」
「……何で…SdSを辞めたんだ…」
「………………気付いただけだ……俺は…いてもいなくても良い存在だってな…」
……
「大丈夫か!?」
「…は……はい…ッ…」
傷だらけの仲間を助けた
「捕まえた!…そら……もう大丈夫だ…!」
「うぇぇん…」
悪魔によってボロボロとなった町の子供達を助けた
「オラァ!!」
「クソ…ッ……聞いてねぇよ…ッ……アキラがいるなんて…ッ!」
世界を傷付ける悪魔や天使を倒し続けた…だが……
「傷は大丈夫か…?」
「ああ…まぁ……なんとかな……」
「元気か?」
「う…うん!……おじさんに助けてもらったから元気だよ…」
「…あの時は本当にお世話になりました…………ほら…行くわよ…」
俺が人助けをする度に、みんなは俺から離れていく気がした。
『嫌われてんのかな……』
「………だよな…」
『…何だ……?』
「アキラさんだろ?……絶対に人間じゃないだろ…」
「ああ…違いねぇ……だって人間があんな強いわけねぇもん…」
みんな、俺を嫌ってるわけではなかった。みんなは、俺を恐れていたんだ。俺が悪魔や天使のような、バケモノから助けた人々は、みんな口々に言っていた。
「アキラこそが…真のバケモノだ」
俺が悪魔や天使を倒せば倒す程、そして助ければ助けるほど、みんなは俺から離れていく。
俺が、バケモノだから。
……
「バケモノが…人間といては駄目だろう?」
「……………」
「だからだ…俺がSdSを抜けたのは……そしてその後は…俺と同じように悪魔や天使…人間に居場所がない奴等を募って…組織を創ったってわけだ…」
ナオトは、アキラの話を静かに聞いていた。
「……俺は阿呆らしく思えてきたんだろうな………俺は…少し強いだけで…人をバケモノ扱いする奴等の為に…命をかけて戦っていたのかと…」
「…………………」
「正義のヒーローのような存在になりたかったから…世界を守り続けたが…その結果がこれだ…………俺は最初から…ヒーローになんてなれるわけが無かったんだ」
するとナオトが、Aへ叫んだ。
「綺麗事抜きで…アンタはヒーローだよ…!……俺や…アイツらのな…」
「………………」
「…俺は……アンタがいたから…ヤタガラスを創れたし……何より今の俺になれたんだ!」
“今のお前は消極的で…死者みたいだな………ナオト…人間ってのは…力だけじゃねぇぜ?”
“…フン……なら証明してみろよ…”
“いいぜ…その代わり…証明できたら………炎の様に熱い心を持って生きろ!!”
「アンタは俺を…心の闇から助けてくれたヒーローだ……」
「……………」
「今度は…俺がアンタを心の闇から助ける番だ…」
ナオトはそう言って構えた、それを見てアキラも構える。
「行くぜッ!」
「………」
「ぐぶッ…」
殴りかかったナオトへ、アキラは冷静にカウンターを食らわせた。
「………これは漫画じゃないんだ…アキラさんに勝つのは絶望的だぜ……親父…ッ!」
「…絶望的だと?……あのナオトが?」
「ああ…何故なら……俺達はタイマン…つまり一対一の勝負でアキラさんに…勝ったことが無いんだ…」
「……なに…?」
それを聞いた人々は、思わずゾッとした。
「今のは…サービスだ…」
「……………」
「オラァ!!」
ナオトが何度殴りかかろうと、カウンターをされ、それをナオトが避ける。
「……アキラさん…」
「…………なんだ…」
「このままでは勝負がつかない……だから…お互いに防御や回避を捨てて……ブン殴り合おうぜ…ッ!!」
「…いいだろう……」
そしてナオトとアキラは近付くと、スタートと言わんばかりに、お互いの顔面を思い切りブン殴った。
「……ッ!!」
「…くッ…!」
ナオトとアキラは、お互いに激しくブン殴り合った。辺りには、二人が殴り合っている音しか響かない。
「…………ナオトさん…ッ!!」
「頑張れナオトさん…ッ!!」
その掛け声が引き金になったかのように、アキラはほんの少しだけ怯み始めた。
「…ッッ……」
「……………」
「いけぇ!!」
ナオトの拳を食らって、ゆっくりではあるがアキラは押されていた。
「ナオトさん…ッ!!」
「…………!!」
そして、アキラとナオトの拳が、お互いの顔面にヒットした。
「………ッ…」
舞台の真ん中で膝をついていたのは、アキラだった。




