意氣衝天
武者修行をしていて、髪が凄い事になっていたので散髪屋に行き、自由に切ってくれと言った。
「似合ってるよ!」
「…ならいいか……」
そこで、リーゼントにされるというハプニングが起こったが、何気に気に入っていた。
「ありがとよ!」
そして俺は、徒歩で北海道の空港へと向かっていった。
「しかし…スゲェ吹雪だな…」
10km先の空港へ向かっていたが、吹雪がヤバくて視界が真っ白だった。
「……ん?」
しかしそんな中、俺の目の前に茶色のものがあった。
「…………マジかよ…ッ!」
それは、ヒグマだった。俺はすかさず身構えて、ヒグマをジッと見た。
「グオォォォオオッ!!」
「…へッ……やってやるよ…」
ヒグマは俺の方へ、凄い速さで向かってきた。俺はヒグマの頭を蹴り、思い切りブン殴った。
「グロォォォ!!」
「ぐぉぁッ!!」
するとヒグマの凄まじい引っ掻きを食らって、思わず後退りした。
「……負けるかよ…ッ…!」
「グルル…」
引っ掻かれ、殴られ、噛み付かれて血だらけになったが、力を振り絞ってヒグマの顔面をブン殴ると、ヒグマは逃げていった。
「へへ……ヒグマがなんぼのもんじゃい…!」
そして、血だらけのまま空港に向かっていると、道中で雪にタイヤを取られている車があった。
「…ん?……あの子…」
俺は乗せてもらおうとして近づいた。
「……!」
後ろには今にも死にそうな子供が乗っていた。恐らく病院に行くのだろうな、俺が乗る事は出来なさそうだ。
「何の用…?…あっちへ行きなさいよ」
「その子病気だろ?…車押すよ…」
「え?」
俺は上着をタイヤの下にひいて車を押す準備をした。
「さっさとアクセル…踏みなよ…」
母さんらしき人はハッとしてアクセルを踏んだ。
「…走ったら止まるなよ…また雪にタイヤがとられるからな…」
そして、俺は思い切り車を押した。
「ぐぐ…」
タイヤが勢いよく回り始め、車は走った。
「……行ったか………」
結局、俺が空港に着いたのはその2時間後だった。
「うぉぉぉ!!」
それから再び、俺は世界を歩き回り何度も戦った、例え相手が天才だろうと、天災だろうとな。そして……
「キャアア!!」
「…ッ!!」
とある街にて、俺の目の前にいた少女が強盗に殺されそうになっていた。
『クソ!…走っても間に合わない!!』
「うぉらぁぁぁッ!!」
俺は一か八か、強盗と10m以上離れた場所から、右ストレートをブチかました。
「ウボォッ!?」
「…な……ッ…」
強盗はまるで、突風に襲われたかのように吹き飛び、壁に激突すると倒れた。
「…………」
気付けば、俺の気力は具現化し、実体になっていた。
「…へぇ…!」
「……俺はその技の名前を…意氣衝天と名付けた…!……意気の気は中が『乂』じゃなくて…『米』の方だからな!」
「あ!…米にした理由分かったよ!……『気』という漢字は中が『乂』だから…力を封印して解放できていないように見える……だけど…中が八方向に広がってるように見える『米』だったら解放してる風に見える…だから『氣』にしたんだ!」
「…何で俺の考えてる事が分かるんだよ…」
「分かるよ…父さんの考えてる事なんて…!」
「気持ち悪い事言うな…!」
……
「技名が意氣衝天なのは…四文熟語から取ったらしいよ!」
「ほぅ…」
意気衝天
読み方:いきしょうてん
意味:気力が天を衝くほど高く充実している様子。
「意気」は気力や気概、「衝天」は天を衝くほど高いという意味。
四字熟語辞典オンライン より
「…父さんは本当に何の才能も持たない…ただの人間だった…」
ミユキは、森林を見ているトシジへ続けて言った。
「……父さんはどれだけ努力しようと…何をしようと何者にもなれない…本当の意味で平凡な人間だった……だけど…」
「…意氣衝天という技を手にした……」
「………父さんは数々の修羅場を潜り抜けた…それこそ常人なら狂っちゃうような修羅場を……だからか父さんは平凡な人間という運命をねじ曲げ…意氣衝天という技を手にした…」
二人は轟音のする森林を、まじまじと見ていた。
「…父さんはバケモノでも…クロウでもなかった……だけど…意氣衝天を手にして…神を超えた……」
「…………」
「……運命をねじ曲げ神を超えるという運命だったのか…神がプレゼントした奇跡か…はたまた…その神にも予測不能で理解不可能な偶然か……」
するとミユキが、トシジへ尋ねた。
「トシ爺は…父さんがあの技を手にした事について…どう思う?」
「ふむ……」
少しの沈黙の後に、トシジは答えた。
「「ナオトがあの技を体得したのは必然だ」」
トシジが言った事と、ミユキは全く同じ事を被せて言った。
「アハッ!…トシ爺も僕と全く同じ考えだったんだぁ!」
「……フン…」




