武者修行を続けて
「…あの衝撃波…ナオトだろう?」
「うん」
「…アレは何だ…」
トシジが尋ねると、ミユキは森の方を見ながら話した。
「…………父さんに聞いたんだけど…」
「ああ」
“…この技はな…武者修行をして…手にしたものなんだ…”
“へぇ!…詳しく教えてよ!”
……
「……じゃあ…行ってくるわ……ヤタガラスの事…よろしくな!」
「死ぬんじゃないぞ…」
「絶対帰ってこいよ!…なるはやでな!」
「…ああ!」
俺は武者修行へ行く事にした、自分の力で強くなりたかったからだ。俺の出発の際には、空港の前に宇川と川畑が来てくれていた。トシ爺も、親父も母ちゃんもな、タケ爺は店が忙しくて来れなかった。
「……そんじゃあ…行ってくるわ」
「おい!…ナオト!」
「うん?」
飛行機に向かおうとする俺に、親父が言った。
「…………腹が減っても虫だけは食うなよ…栄養はあるがクソみたいに不味いからな」
「食わねぇよ!…っていうか…何か食った事あるような言い方だな…」
そして、俺はみんなとしばしの別れを告げ、飛行機へと向かった。
『まぁ…アメリカとロシアと…イギリスの強ぇ奴を倒して腕を磨く…のが無難かな……あぁ…ブラジルとか中国に行ってもいいかもな…ヤタガラスで稼いだ金はあるし…』
俺はアメリカへ渡り、そこから世界を渡り歩こうとしていた。
「……ここがアメリカ…!」
そして、アメリカへ着くと俺は観光よりも先にある場所へと向かった。
「…おぉ…」
そこは無法者が集まり、アメリカで一番強い奴を決めるアンダーグラウンドな大会の会場だった。
「……おいおい…イエローモンキーが出場するってよ!」
「…へへ……血祭りにしてやるぜ…!」
一回戦から、ゴリマッチョなアフリカ系アメリカ人が出てきた。
「頭潰される覚悟はできたかい?…モンキー…!」
『…やべぇ…ちゃんと英語習っとけば良かった……何言ってるか分からねぇ…』
勝負が始まり、初っ端から俺はデカイ拳を食らった。左腕でガードしたが、とてつもなく痛い。
「へへ……これがアメリカか…!」
「カモン!」
「…さーて……どう勝つかな…」
俺はその勝負で、カウンターを使って勝った。
「……ただのモンキーじゃなさそうだな…」
「…おっし……やるか…」
二回戦目、相手はボクサーだった。めちゃくちゃ速いし、攻撃も避けられる。
「うぉりゃあ!!」
「…ぐッ……何だコイツ………体力イかれてんだろ…ッ…」
俺は攻撃を耐え続け、相手のスタミナが切れたスキにアッパーを食らわせた。そんな調子で勝ち進み、決勝。
「……お前…名は…」
「ナオトだ…って……日本語話せるんだな」
「まぁな…」
決勝の相手は、見た目こそ普通の白人だったが、ただならぬ雰囲気を漂わせていた。
「…私はセロリーヌ……アメリカで武者修行をしている…」
「おっ!…そうか!…俺もだ!
「……なら…武者修行をしている者同士…こんな所で負けられないな…」
「ああ…!」
決勝、セロリーヌと真っ向から殴り合った。セロリーヌは俺と同じ様に、真っ向から殴り合うスタイルだったようだ。
「…くッ……」
「ハァ…ハァ…」
「……また…お前に挑む…」
「…ああ!」
そして、セロリーヌは倒れた。俺は、アメリカ一の喧嘩野郎になったわけだ。
『しかし…まだ喜ぶわけにはいかねぇ…』
宇川や川畑、俺の親父達は表に出れば、余裕で世界一になれる程の実力を持つ怪物だ。所謂、表に出ていない実力者的なやつだ。
『……俺は世界一に余裕でなれるような奴等と戦い…勝利するつもりで武者修行してんだ…アメリカ一の喧嘩野郎になったくらいで満足してられねぇな…』
そして、俺は世界を歩き続けた。
「うぉ!…ぉぉ!」
エベレストの頂上へ到達し、下山している最中、崖から落ちそうにもなった。
「……ちょっと待て…川畑とか宇川は…ビルから落ちても平然としている……俺は…落ちる事にビビっている………クソ!…俺もやれるんだぜ!!」
俺はエベレストの崖から、手を離して落下した。激突し、転げ回り、雪だらけになり、血だらけになった。
「…い……生きてるぜ……まだまだやるぜ…!」
一応、近くの病院へ向かったが、生きているのが奇跡と言われた。
「いってーッ……まぁ…ここで止まるわけにはいかない……俺は…強くなるんだからな……」
そして一年以上入院しろと言われたが、3日後に抜け出してやったぜ。
「クソ!…コイツら!!」
そして、アマゾンの熱帯雨林でピラニアに襲われた。電気ウナギにも襲われ、身体はズタボロだった。
「……助かったぜ…」
ヤベェなと思ったが、先住民に助けられて何とか生き延びた。
「ナオト!…覚えるの早い!」
「へへ…そうか…!」
そこでしばらく暮らす事にした、何故か。それは、この先住民が独自の格闘技を使っているのを見たからさ。俺も使いたくなったんだ。
「……ありがとよ…3週間だけだったが…世話になった…!」
「また来い!」
ちなみに、その先住民の使う言語は俺が唯一、覚えられた言語だった。




