霧に魅せられたのは……
「……これより…神の使いやあらへんで…チキチキ!緊急世界会議をしよう!第1回目を開始します!……レクスは用事で来てないけどね」
「…何か悪神について分かったのか?」
「……そう…悪神について…とても大事な事を伝えに来たんだ!」
スカーレットが尋ねるとエミリアは満遍の笑みを浮かべ、キリッとした表情で答えた。
「………悪神には…仲間がいる!」
「仲間…?」
「うん!……魔王と話した時にこの場で起きた過去の出来事を魔法で調べた…バレないようにね……するとどうだろう!」
エミリアが机の上に巻物を広げた、そこにはエミリアが以前、王たちに見せていた魔王と悪神の映像が飛び出した。
「……それは前も見たぞ」
「前のは遠くからだったから解像度が低いものだよ!…ほら……ここ見てみて」
二人の王がエミリアの指差した方を見ると、悪神の後ろに二人の女性が立っていた。
「……これは」
「悪神の手下か…なんかだと思うけど……どう!?」
「…確かに…これは大事だな…」
「…………………あの悪神に仲間とな……神の手下だけあって…強者なのだろうな…」
ムサシが呟くと、スカーレットが流し目でムサシに呟いた。
「……だが…斬るのだろう?…ムサシ」
「………………………ああ」
ムサシは腰にぶら下げた刀をしっかりと握りながら、覇気を纏った声で答えた。
「それじゃあこの話は終わり!……じゃあレクスにも伝えないとな…」
「……レクスには私が伝えておく」
「助かるよ!」
王達は解散しようとしている。そんな時だった、何かを思い出したかのようにムサシが突然その場に立つ王達に尋ねた。
「…………………レクスは……確か天雲ノ塔にいる……と聞いているが」
「そうだけど、どうしたの?」
ムサシは魔法で地図を召喚して、その場に立つ王達に見せた。地図は天雲ノ塔近辺が記されていた。
「…【魔法探知】…?……これって展開されてる魔法を地図に表す魔法だよね?」
「………………………あの付近にスマコや魔法を妨害する妨害魔法と城などで侵入者を防ぐために張られている防壁系の魔法が展開されている……まるで外部からの邪魔が入らないように……な…………」
「……え?」
……
「……十郎…」
「どうしました?」
「……………スマコが使えないんだ……」
「使えない……?」
俺たちが森を後にして歩いていると、霧がかかってきて、段々と霧が濃くなっていった。それと同時にスマコが使えなくなっていた。
「……確かに…開けませんね」
「…………嫌な予感がするな」
スマコは頭で念じれば出てくる、しかし、今は念じても出てこない、一体どうなってるんだ。
「……とりあえず進みましょう…霧が晴れれば使えるようになるかもしれません……」
「だな………よし……それじゃあ進もう……」
俺たちは更に奥へ進んでいった、しかし、見えるのは地面の道だけで辺りは白色だ。いや、薄っすらだが、辺りの木々は見えるな。俺たちは平原を歩いていたので木々が見えるのはおかしいがな。
「……!?……なんだよあれ…」
「城……ですかね…」
少し歩くと俺たちの目の前には大きな城が不気味にそびえ立っていた。城なんてマップには書かれてなかったし、こんな道のど真ん中にあんな城が……
「確か…城なんて無かったような……」
「マップでは道中で城なんてありませんでしたよね」
「「…ッ!!」」
俺と十郎はその時、殺気を感じ取り辺りを警戒した。そんな時、霧の奥から薄っすらと弓を引く兵士が見えた。すると、その瞬間、無数の矢が飛んできた。
「うお!…マジか!!」
「梅岡さん!」
俺たちは急いで近くの大岩へ隠れた、すると飛んできた矢は岩や目の前の地面に刺さった。危なかった……
「なんなんだ…!?」
「分かりません…」
そして、こちらへ向かってくる足跡が聞こえた。恐らくさっきの兵士達の中の二人が向かって来ているのだろう。そして、俺たちは目を合わせた。
「今だ!」
「はい」
俺は正面から見て左から、十郎は右から飛び出して兵士を鳩尾を殴り、地面へ叩きつけた。二人の兵士はその場に崩れるように膝をついて倒れて消えた、他の兵士達は見えない。
「なんだよ…ったく…幻影か?」
「……まずはこの霧の外へ出ましょう、あの城を越えて」
十郎は遠くに薄っすらと見える城を指差して言った。城はまるで幻影のように、また妖しい雰囲気で佇んでいる。
「……それもそうだな」
「それじゃあ…慎重に進みましょう…」
俺は構えて、十郎は刀を抜いて霧の奥深くの、妖しく揺れる城を目指して霧の更に奥へ入っていった。




