料理対決
「…来たか」
「アキラさん……いや…今はA…か……」
「……ああ」
「…それで……勝ったら仲間になってくれると聞いたが…勝ちがあるって事は…何か勝負をするんだよな…?」
するとAは、腰にあるナイフを抜いた。それを見て、俺達は構える。
「………やっぱり…戦闘なのか…」
「…料理勝負だ」
「……なに…?」
「勝負は…戦闘だけを指す言葉ではない……勝敗がある物事を全て指す言葉だ…」
料理対決…予想の斜め上をいくな……
「流れ的に…戦闘をするのかと思ったぜ…」
「まぁ…そういう勝負の方が……俺達も有難いがな…」
「…勝負するか…?」
「………ああ」
「……なら…ついてこい…」
俺達はAへついて行った、そしてAについていくとAは料理教室へ入っていった。
「ここで…料理勝負をするのか?」
「ああ…そうだ…」
そしてAは、調理器具や食材が置いてある二つのテーブルの間へ立ち、ルールを説明し始めた。
「ルールはシンプルだ…ここに置いてある食材と道具で…美味い料理を作る……そして3人の審査員が美味かった方に票を入れて…票が多かった方が勝ち…ってわけだ」
「……その審査員が…アンタの味方ってのは…」
「そんなダセェ真似はしてねぇよ」
「…うん…間違いはない………本当だよ…この人の言ってる事は…」
ジークが尋ねると、Aは即答し、審査員をジッと見るミユキもそう言った。まぁ、ミユキが言ってるし、本当に審査員がAの味方って訳ではなさそうだな。
「……ミユキさんがそう言うなら…」
「それじゃあ…早速やろう……料理を作る者を一人選べ」
「…分かった」
そして、俺達は誰が料理を作るかを話し合った。
「……決まったか?」
「…ああ」
俺達が答えると、川畑が歩いていき、テーブルの前に立った。
「…川畑…か」
「………そっちは?」
「……僕だ」
向こうのテーブルの前には、口のような模様の描かれた、仮面を被った青年が立っていた。
「……名はシャルロッテ…」
「…シャルロッテ……」
「知ってるのか?」
「ああ………数年前に…【怪人無限面相】と呼ばれたレベルⅩの悪魔だ……」
レベルⅩ、そんな強い悪魔も仲間にいるんだな。
「………ニュートラルにはシャルロッテと…あの後ろの悪魔と天使の二人がいるが…その3人ともレベルⅩだ」
「マジで戦闘にならなくて良かったわ…」
「…よし……そろそろ準備はいいか?」
「……ああ」
「…うん」
川畑とシャルロッテは、まな板をジッと見ている。
「…始まるみたいだ」
「制限時間は1時間だ…それでは……始め」
その瞬間、二人は食材を調理し始めた。
「お前が自信満々に川畑を推したから…川畑を選んだが……アイツはそんなに料理を作るのが上手いのか?」
「………俺達の世界で…世界一の料理人を決める大会があってな……アイツはその大会を三連覇している…」
「…実績があるんだな……」
川畑は淡々と、料理を作っている。すると宇川が、タケ爺へ言った。
「……何でタケ爺…料理の勝負を引退しちまったんだよ」
「…いつまでもジジイが…でしゃばってちゃあ駄目だろう?……年寄りは何も言わずにその道を降りて…若い奴等を見守るもんだ…大御所じゃねぇ…ただの老人としてな…」
「そうなのかぁ…」
「まぁ…料理を競い合うのを辞めただけで…店を辞めるわけじゃないからいいだろ」
「うん!」
そして俺が川畑のテーブルを見ると、千切りのキャベツがあった。
「……何を作るんだ?」
「…とんかつ」
「………とんかつ…」
どんなスゲー料理を作るのかと思ったら『とんかつ』か、まぁ、それが川畑らしいけどな。
「とんかつ…か…」
それを聞いていたAが、川畑の方を見た。
「…お前は?」
「……僕は…パスタさ…」
「ほぅ…」
シャルロッテのテーブルには、完成まであと少しのパスタが置いてあった。
「うぉぉ……スゲー高級感あるな!」
「…ミユキと行ったイタリアの高級店のパスタよりも……良い匂いだな…」
『おいおい…川畑負けるんじゃねぇか』と言うような顔で、みんなは川畑のとんかつを見ていた。
「……完成は…ほぼ同時か…」
「…………」
テーブルの上には、高級店にあるような豪華で、上品なパスタと、その美しさに押しつぶされそうになっている、何の変哲もないとんかつがあった。
「…料理に大切なのは…味だろ……どれだけ美しい料理だろうと…不味ければ意味がない」
「……僕の料理は…見た目も味も最高級さ…」
「自信があるのなら…先に採点してもらっていいぞ…」
「じゃあ…お言葉に甘えて…」
シャルロッテの作ったパスタが、3人の審査員のテーブルの上に置かれた。
「それじゃあ……頂くとしようか…」
「……どうぞ」




