鎧の男
「お前の母ちゃんスゲェな!!」
「……マジでどうなってんだよ俺の家系…」
「…正美さんは元レディースで…功夫の一種である『天葬拳』の達人だ……知らなかったのか?」
「え!?…知らなかった…」
母ちゃんがクンフーの達人!?…全然知らなかったぜ……
「……………父さん…タケ爺に護身用とか言われて…覚えさせられたんだよ…」
「……俺の足技や構えも…正美さんの天葬拳を見て…編み出したものだ…」
「へぇー……」
それじゃあ、川畑のスゲェ足技とか構えとかは、母ちゃんの天葬拳とかいうクンフーが元だという事かよ。
「少し見せただけで…あたしの一族が使ってたって言われてる天葬拳をすぐに体得し……しかも新しい戦闘術を創り出したからね……天才だよ…川畑君は…」
「…いえ……」
「……今度教えてもらお」
「一つ言っとくけど……父さんの天葬拳は暗殺とか…殺しに特化したものだから体得はかなり難しいよ」
暗殺拳の体得はムズいだろうが、俺ならできるぜ。
「大丈夫だよ!…俺は世界を武者修行してきたからな!……すぐに体得してやんぜ!」
「…ほぅ……なら俺が直々に教えてやるが…………正美や川畑のような天才でなければ…練習中に50本以上の骨が折れ…全身から血が吹き出す程に過酷だが…気を引き締めろよ…」
「……タ…タケ爺!?」
俺が後ろへ振り返ると、タケ爺とトシ爺が立っていた。
「…話はつけてきたぞ」
「…………詳しく聞かせてください…」
「お前は…俺と天葬拳の話をしような……トシジ…みんなに交渉の結果を話しておいてくれ」
「ああ」
タケ爺がトシ爺にそう言うと、トシ爺はグッドをした。俺はトシ爺に掴まれて、外へ連れて行かれそうになっている。
「ちょ……え…?……練習中に骨が50本以上折れて…全身から血が吹き出す程…練習が過酷な武術なんだよな…?……やっぱり俺…」
「それじゃあ…行こうか……じっくりと教えてやる…」
「ナオト!…心配すんな!……話の内容はあとで伝えに行くからよ!!」
「……ちょ…助けてくれ!!」
……
ナオトが連れて行かれたあと、トシジはその場の全員へ話し始めた。
「…単刀直入に言おう……Aは自分を倒す事ができたら仲間になる…そう言った」
「……倒す…」
「SdSの伝説を…?」
それを聞いて総特達は、思わず絶句した。
「……………アキラさん以外の…ニュートラルメンバーだけなら…まだ希望はあるが…」
「…倒せばいいんだろ?…簡単な話じゃないか」
「……無理だ…誰も勝てないよ……あの人には………お前らと俺達含めて誰も勝てない…」
「仲間にしたかったが…諦めるしかな」
するとその時、部屋の中へコートを着た、二人の抵士官が入ってきた。
「…無理でも……やってみるのがSdSだろう…?」
「……『諦めるしかない』…それは総特が一番口にしてはいけない言葉だぞ?」
「………ゼロと…ヘリオス………帰ってきたのか…」
「ゼロとヘリオス…?……ああ!…海外に出張してた総特抵士官か!」
ゼロとヘリオスは、総特抵士官達の方へ歩いていき、席へついた。
「…この人達が七海の言ってた異世界の人……ふむ…確かに…強いな……」
【SdSの化身】ゼロ ミハイル
レベルⅩの悪魔、天使、業人の撃破数10体
レジアル『???』
「ヘリオス!!…久々だな!!」
「ヤタガラス……久しぶりだね…」
「…何だ?…知ってるのか?」
「……ああ…」
【SdSの権化】ヘリオス
レベルⅩの悪魔、天使、業人の撃破数11体
レジアル『???』
「まぁ…今はとりあえずAについて話そう」
「それもそうだな」
すると乖理は、少しの沈黙のあとに言った。
「……俺達は…Aを倒し……仲間にする」
「諦めるんじゃねぇのか?」
「…ヘリオスの言葉を聞いて思い出した……失敗を恐れてやらないよりも…やって失敗する方が良い…ってな…」
それを聞いて、宇川は立ち上がった。
「そうこねぇとな!!…よっしゃ!!……Aをブチのめしに行くぞ!!」
「……場所はここだ…」
……
「………ボス…」
「何だ」
「……何故…倒せば仲間になるなんて言ったんだ?」
仮面を付けた男が尋ねると、鎧に身を包んだ男は少しの沈黙の後に呟いた。
「……………お爺ちゃんに頼まれたら…断れねぇよ…」
「……え…?」
「…諦めさせる為だ……俺に勝てばと言えばアイツらも諦めるだろ……」
そして、立ち上がって二本のレジアルを持つと、仮面を付けた男の方へ振り向いた。
「まぁ…諦めずに約束の場所に来たとしても…俺は絶対に負けないがな…」
「……それもそうだな…ボス」
「約束の場所へ行くぞ……残りの三人を呼んでこい…」
「ああ」
すると鎧の男は、仮面の男が出て行ったあとに、背後の人物へ言った。
「…俺はこれから…約束の場所に行かないとならないんだ……長話をしに来たんなら…あとにしてくれ……ブラック…」
「……もう…師匠とは呼んでくれないのだな…」




