天葬拳
【ジャイアント系悪魔】の後ろにいた抵士官達は、急いで離れた。そして【ジャイアント系悪魔】は、大きな音を立てたその場に倒れた。
「…ガタイが良いから期待したが……もっと耐えろよ雑魚が」
「よ…よし!……確保だ!」
抵士官達は、【ジャイアント系悪魔】を拘束し始めた。シゲキが背を向けると、乖理が立っていた。
「……心配して見に来たが…余計な心配だったようだな」
「…悪魔ってのも…大した事ないな」
「……心配するな…もう少ししたら強い悪魔が…ッ!!」
「あ?」
二人が空を見ると、もう一体【ジャイアント系悪魔】が飛んでおり、屋上へ降りてきた。
「またかよ」
「…珍しいな……2体も来るとは…」
すると地上から、二つの人影が飛び上がった。
「なんだアレ?」
「……丁度…今月のメンテナンスが終わったみたいだな」
「…メンテナンス?」
二つの人影は、乖理とシゲキの前に着地した。それを見て抵士官達はシゲキと乖理の横を走り去っていった。
「退避しろ!」
「…今日で俺達の本部防衛は終わりか……」
「……何だコイツら…」
シゲキと乖理の前に着地した二人は、身体が機械で構成されたサイボーグだった。
「人工知能を搭載した…本部防衛用のサイボーグ……戦闘ロボットだ…」
「…ターゲット確認……捕獲する…」
「……ハァ…捕獲か……」
そして二人は飛び上がり、一人は背中から光の刃を纏う刀を取り出し、もう一人は腕を銃のように変形させた。
「…刀を持ってるのはオメガ…腕が銃になってるのがシグマだ……」
「ロボットだろ?……鉄の塊じゃねぇか…戦えんのか?」
するとオメガとシグマは抜群のコンビネーションで、【ジャイアント系悪魔】の頭を狙って攻撃した。【ジャイアント系悪魔】が怯むと、オメガがシグマへ言った。
「……いいぞ!」
それを聞いてシグマは銃をさらに変形させ、【ジャイアント系悪魔】に向かって網を射出した。【ジャイアント系悪魔】は網に囚われ、暴れていたがシグマの銃弾を食らうと動かなくなった。
「…よし……終わりだな…」
「捕獲完了…」
そしてオメガは、シゲキの目の前へ歩いてきた。
「誰が鉄の塊だって?」
「オメーだよラジコン野郎」
「あ?」
シゲキとオメガが詰め寄ると、シグマと乖理が割って入った。
「落ち着けよ」
「オメガ…落ち着け」
「クソ生意気な…目ん玉引っこ抜くぞ」
その瞬間、シゲキはその場に倒れた。背後を見ると、正美が立っていた。
「…全く……見に来て良かった…」
「正美さん…か」
「すまない…うちのが迷惑かけた……アンタ…戻るよ…」
すると、シゲキは起き上がって正美へ言った。
「邪魔すんなよ」
「邪魔するよ」
正美はシゲキとオメガの手を掴んで、握手させた。
「仲直り」
「…ンだ……ッ…!」
『なんつー馬鹿力だ…この女……』
「……分かった分かった…仲直り…」
二人は、不本意ながらも握手をした。
……
「……母ちゃん…親父を気絶させる程…強かったんだな…」
「…何で俺が気絶したの知ってんだよ」
「親父が戦ってるところから…あのオメガもシグマが戦ってるところまでドローンで見てたよ」
親父と、少し前に部屋から出た母ちゃんが戻ってきた。母ちゃんやるな…不意打ちとはいえ親父を気絶させるなんて……
「お前の母ちゃんスゲェな!!」
「……マジでどうなってんだよ俺の家系…」
「…正美さんは元レディースで…功夫の一種である『天葬拳』の達人だ……知らなかったのか?」
「え!?…知らなかった…」
母ちゃんがクンフーの達人!?…全然知らなかったぜ……
「……………父さん…タケ爺に護身用とか言われて…覚えさせられたんだよ…」
「……俺の足技や構えも…正美さんの天葬拳を見て…編み出したものだ…」
「へぇー……」
それじゃあ、川畑のスゲェ足技とか構えとかは、母ちゃんの天葬拳とかいうクンフーが元だという事かよ。
「少し見せただけで…あたしの一族が使ってたって言われてる天葬拳をすぐに体得し……しかも新しい戦闘術を創り出したからね……天才だよ…川畑君は…」
「…いえ……」
「……今度教えてもらお」
「一つ言っとくけど……父さんの天葬拳は暗殺とか…殺しに特化したものだから体得はかなり難しいよ」
暗殺拳の体得はムズいだろうが、俺ならできるぜ。
「大丈夫だよ!…俺は世界を武者修行してきたからな!……すぐに体得してやんぜ!」
「…ほぅ……なら俺が直々に教えてやるが…………正美や川畑のような天才でなければ…練習中に50本以上の骨が折れ…全身から血が吹き出す程に過酷だが…気を引き締めろよ…」
「……タ…タケ爺!?」
俺が後ろへ振り返ると、タケ爺とトシ爺が立っていた。
「…話はつけてきたぞ」
「…………詳しく聞かせてください…」
「お前は…俺と天葬拳の話をしような……トシジ…みんなに交渉の結果を話しておいてくれ」
「ああ」
タケ爺がトシ爺にそう言うと、トシ爺はグッドをした。俺はトシ爺に掴まれて、外へ連れて行かれそうになっている。
「ちょ……え…?……練習中に骨が50本以上折れて…全身から血が吹き出す程…練習が過酷な武術なんだよな…?……やっぱり俺…」
「それじゃあ…行こうか……じっくりと教えてやる…」
「ナオト!…心配すんな!……話の内容はあとで伝えに行くからよ!!」
「……ちょ…助けてくれ!!」




