親父始動
「けどこれで…人手不足は解消ですね!」
「…そうだな……このレベルの人が四人もいれば大丈夫だろう…」
『…………俺いらないんじゃないか…?……黙って帰ろうかな…』
「……話は聞いておる…………さっさと終わらせるぞ」
四人は、俺達と同じくらいの年齢になっている。すると、トシ爺が腰にぶら下がる刀の鞘を握り、七海へ言った。
「…そうですね」
「……じゃあ早速…【黒の王達】を捕獲しに行くか?」
「総特!…付近にレベルⅤの悪魔の群れが出現しました!」
「………ッたく…これからって時に来るよな…悪魔は……」
その時、それを聞いていたトシ爺が、七海へ言った。
「俺にやらせろ…刀を握るのは久しいからな……体が鈍っていないか確かめておきたい」
「……それなら…俺も確かめておくとしようか」
「…おいおい……ジジィは無理して動かない方がいいぜ…」
「昔は…『お父さん』と呼んでくれてたのだがなぁ……」
……
「………アイツらか?」
「…ああ」
目的地に歩いていくと、15人の悪魔がいた。
「…あれが……」
「……悪魔…か…」
するとトシジは刀、タケヲは二丁の銃を抜いてナオト達、若者へと言った。
「…見とけよ若者……これが…老兵の戦い方だ…!」
「……行くぞ…トシジ…」
トシジが先陣を切り、4人の悪魔を同時に斬った。
「うぉぉ!……四人同時に斬りやがった!」
「……ふむ…どうやら……あのホワイトとやらの言う通り…身体能力が…かつての俺達のものに戻っている…」
「…ああ……あの頃を思い出す…」
荒々しい、獣の如き太刀筋でトシジは悪魔を斬っていく、タケヲは流れる水のように、悪魔を次々と撃ち抜いた。
「………終わりだ…」
「……爺ちゃんって…こんな強かったんだ」
そしてそんなトシジとタケヲへ、シゲキが言った。
「ジジィのくせして……元気な事だ…」
「若返ってるからだろうな……というか…親父も十分ジジィだろ……若返る前…何歳だった?」
「俺はまだ57だ」
「ジジィじゃねぇか」
……
「……新しく来た四人は…クロウだからレジアル無しで戦える…そしてヤタガラスと同等かそれ以上の戦闘能力を持つ……」
「しかも世界的アーティストが2組も応援団として来てくれている…!」
「負ける要素が無いな……」
トシ爺とタケ爺と親父と母ちゃん、この四人が新たに仲間になった。
「…よし!……それじゃあ【黒の王達】を探すか!」
「……ああ…そうだな……」
すると光Pが、俺達へ言った。
「じゃあ……ダメ元でアキラさんも…」
「…無理だな」
「ああ…あの人は……助けてくれないだろう…」
アキラという名前に、ピンと来た俺は総特達に尋ねた。
「アキラ…ってのは…?」
「……【SdSの伝説】と呼ばれた総特抵士官だ……だが…数年前に突如…消息が途絶えた……」
「消息が途絶えた数ヶ月後……アキラさんは俺達の目の前に現れた…悪魔を引き連れてな…」
「…なに?」
“俺は…今日からSdSの味方でも…悪魔や天使の味方でもない……中立の立場になる…”
“なんだと…!?”
「…アキラさんは自身をAと名乗り……中立の組織…『ニュートラル』を創設した…」
「……確かに…仲間になりそうな雰囲気ではないな…」
「敵じゃない分…何倍もマシだがな」
するとトシ爺とタケ爺が、七海へと言った。
「…俺達がAと…話をつけてくる…」
「……なに?」
「タケヲは殺し屋時代に…沢山のマフィアやヤクザと交渉してきた……だから交渉は得意だ」
確かに、タケ爺は裏社会で生きてきた、だからマフィアやヤクザと沢山の交渉をしてきた分、交渉術は高い筈だ。
「…なんとか……仲間になってくれないか頼んでみよう」
「………そうか…ありがたい……」
「…じゃあ……スマホに『ニュートラル』の位置情報を送っておく」
「メモにしてくれんか…『すまほ』とやらはどうしても上手く使いこなせなくての…」
七海はメモ帳に『ニュートラル』のある座標を書くと、二人へ渡した。
「ありがとう」
「お前達は…ゔぁんげすと…とやらを探してこい」
そして二人は俺達へそう言い残し、部屋から出て行った。それを見て通常人格の斬仁が俺に言った。
「……ナオトさんのお爺さん…色々な意味で凄いですねぇ…」
「…ああ……100歳超えてるというのに…未だに一日500回も素振りをしてるからな…」
「………それじゃあとりあえず…俺達は【黒の王達】を探しに行くか…?」
その時、上空から物音を聞き取った俺達は、身をかがめた。その瞬間、屋上から大きな音が聞こえた。
「……また…命知らずの悪魔でも突撃してきたか…?」
「…………うるせぇ奴だな…」
宇川と同じように、身をかがめていなかった親父は立ち上がると扉を開けた。
「シゲキさん!…屋上に行くのか!?」
「ああ……ジジィ共と同様…俺も久々に暴れたいんでな…」
「へへ!……このSdS本社をぶっ壊すなよ…!」
親父は静かに頷き、部屋から飛び出した。




