本当の実力
するとサラックは、部屋から出ようとするミユキへ言った。
「ジジイ共に…カイト討伐の為…この世界に来たお前らの事を聞いた……その時に思ったんだ…ミユキ…お前はそっち側の人間ではない」
「…どういう意味かな?」
「お前は…俺達と同じ匂いがする……俺達と同じ…悪魔の匂いがな…」
そして前のめりになりながら、続けて言った。
「お前はヤタガラスにいてはならない…お前はこっち側にいてこそ輝く…!」
「…スカウトは嬉しいけどね……だけど生憎…君達の仲間になりたいとは思わないんだ…」
「……ナオトとかいう奴に育てられたからか?…お前は腐り始めている……」
サラックは、天井を見ながらミユキへ言った。ナオトという言葉を聞いて、ミユキはサラックの方へ向いた。
「ナオト…戦ってみて思ったが……アイツには殺し合いで重要な…残虐性が無い……要するに甘ちゃんってわけだ!」
「……………」
「だが…この世界でアイツは…その心の隙を突かれて死ぬぜ…絶対にな…!…………全く…そんなゴミカスを慕うお前の気が知れねぇぜ……」
するとミユキは、サラックに詰め寄り、無機質な声で囁いた。
「………僕を悪く言うのはいいよ…………だけど……父さんの事を悪く言うのは許さないよ…絶対に……」
少しの沈黙の後に、サラックは笑いながら言った。
「冗談だよ!…俺はナオトをマジでリスペクトしてるからさ!…………………怒った?」
「怒ってないよ!」
ミユキも笑顔で答えた、そして扉へ向かうミユキは、椅子を蹴った。それを見たサラックは、少し落ち着いた様子で言った。
「……マジで冗談だよ…お前がどれだけナオトを慕っているか…確かめる為に少しからかっただけだ…」
「…そう……ならいいけど…気を付けた方がいいよ………僕…父さんの事を悪く言われたら自分でも何するか分からないからさ……冗談でも…次また悪く言われたら……君の事を殺しちゃうかも」
「……………肝に銘じておくよ」
そして、ミユキは部屋から退出した。
……
「……怒るなよミユキ…」
「だって!…父さんの事を!」
俺はミユキを宥めて、七海の方を見た。
「…計画…か……他の【黒の王達】から…情報を聞き出すしかないな……」
「次は…【黒の王達】の奴等をぶちのめしに行くのか?」
「………ああ……今のところ…カイトの手がかりを持つ者と考えられるのは…【黒の王達】だけだからな…」
そう言うと七海は俯いた、何かを考えているようだ。
「もしかすると【黒の王達】以外の悪魔や天使も…計画とやらに関わっているかもしれない…」
「そうなれば俺達はとてつもない数を相手にする事となる」
「だが…業人から本土を防衛したり…悪魔や天使から人々を守らなけらばならないから…あまり多くの抵士官を捕獲に連れて行くわけにはいかない…」
総特抵士官達は、頭を悩ませていた。
「要するに…人手が足りないんだね」
「ああ…」
確かに、【黒の王達】の捜索と、捕獲を行ってる間も業人を本土に上陸させないようにして、悪魔や天使から人々を守らなければならない。そうなってくると、捜索したり捕獲したりする為の抵士官は少なくなる。
「少なくとも…現時点で動ける抵士官は全体の4割ほどだろう…他は業人からの防衛や…人々を守らなければならないからな…」
「……いくら俺達でも…リミッターを解除しない限り…その数はキツいぞ」
「だけど…ソレを解除しちゃうと…」
「この世界が『ボンッ!』だな!!」
すると梅岡が、俺に尋ねてきた。
「リミッターってなんスカ?」
「今の俺達は力を抑制…制御している……つまり本当の実力を出せないって事だ……」
「…この世界だと……解除できるのは最大でも6割程度だな…」
「え……そんなに強いのに…実際は6割程度の実力しか出してないんスカ…」
梅岡や、他のみんなは驚いている。まぁ、そうだろうな。
「…何でなんスカ…?……何で力を最大まで引き出せないんスカ…?」
「そりゃあ……俺達がリミッターを解除したら…世界が終わっちまうだろ…?」
宇川のその言葉を聞いて、みんなはゾッとしていた。何故なら宇川や川畑、ミユキから滲み出るプレッシャーが、ヤタガラスはヤベェと物語っていたからだ。いつも一緒にいる俺や樹一郎すらも、鳥肌が立ったぜ。
『まぁ…ヤタガラスはこのくらいの風格がないと困るがな…!』
すると、後ろから声が聞こえた。
「……あまり…人を怖がらせるな…」
「お!…ブラック!!……久しぶりだな!」
「一週間ほど会ってなかったよね…!」
「…忙しかったんだ」
ブラックは、俺達の間を割って入ると言った。
「…あー……この世界へ…新たなカイト討伐メンバーを送り込む事になった」
「……え?」




