半神系モンスター
「……そうして拙者は弟子入りしたのでござる」
「口調はなんだよ…」
「師匠の国ではこの喋り方が一般的らしいでござるから」
そして、アーサーが話し終えた後、今度は逆にアーサーが俺たちを見ながら尋ねた。
「……お主たちは何故ここに来た?」
「この先にある場所に用があるんだ」
俺たちは今までの経緯を説明した。するとアーサーは「あぁ!」と声を出して手をポンと叩いた。
「道場の近くのあの塔か!」
「塔なの?」
どうやら道場の近くに塔があるらしく、そこが俺たちの目的地のようだ。
「塔はこの森を抜けて5km先にあるでござる」
「まぁまぁな距離だな」
「ええ」
俺たちがマップを確認しているとアーサーは突然大剣を手に持って呟いた。
「長話してしまったでござるな」
アーサーの視線の先にはアビスゴブリンが立っていた、こちらをジッと見ている。
「火には近付いてこないんだろ?」
「しかし運悪く火が消えそうでござる」
確かに火は消えそうだ、戦闘は免れないか……
「アビスは神の力……その力を持つ妖は危険なので放っておくべきではないでござる……」
「戦うの?」
「ああ、といっても目的でござるからな…『アビスを滅してこい』…と言われたでござるから」
俺たちもその場に立って、アーサーの横で構えた、アーサーは困惑している。
「俺たちもやるぜ、逃げるなんてダセェ真似できないからな」
「はい」
「お主ら…」
そして、火が消えた瞬間、辺りは昼のはずだが、夜と間違うくらい薄暗くなりアビスゴブリンの咆哮だけが響いた。
「梅岡さん、大丈夫ですか?」
「だ…大丈夫だ……この暗さならギリギリな…」
この森は真っ暗闇というわけではない、なのでギリギリ大丈夫だ。それでも少し恐怖はあるからコンディションは悪いがな。
「……!」
突然、鉄と鉄のぶつかり合う音が聞こえた。薄暗いとはいえ俺は2m先が見えなかった。なので何がどうなったか分からない。
「…ほう……お主…夜目を持っておるのでござるか……鍛錬でもしたのでござるか?」
「いえ、元からです」
どうやら、十郎がアビスゴブリンの飛ばしてきた斧を弾いたようだ。
「…クソ……戦おうと思ったが…見えねぇ…」
「………よし……一度あの妖を木の無い広場へ誘き寄せるでござる……ついてくるでござる!」
アーサーは走っていった、十郎もアーサーを追いかけている。俺も少し先は見えるので十郎の後を追いかけた。
……
「……ここが広場でござる」
その場所は木が一切生えておらず、上を見ると青空が広がっていた、広場は直径9m程だった。
「ここならやれるぞ!」
するとアーサーが俺の横を大剣で突いた。大剣は俺の背後にいたアビスゴブリンの腹の口に突き刺さっていた。
「…あ…危ねぇ……助かった…」
「むぅ…やはりか………梅岡!…屈め!」
俺は言われた通り、その場で腰を屈めた。するとアーサーが腹の口に突き刺さした大剣でそのまま腹から頭にかけて切り裂いた。
「……なんだと!?」
「アビス…恐ろしい妖でござるよ…」
腹から頭にかけて切れていた断面がものの数秒でピッタリとくっついた。
「アビスは………いわば半神……普通の刃では殺せないでござる…」
「なに…!?」
その瞬間に十郎が頭を斬った、アビスゴブリンの背後にある木々もろとも。だが、アビスゴブリンは落ちた頭を拾って断面にくっつけた。
「……確かに…殺せませんね」
「クソ…どうすれば…」
俺たちはアビスゴブリンの猛攻を回避、ガードするしかなかった。そんな時にアーサーはピンときたのか、俺たちに叫んだ。
「この先に断崖がある事を忘れていたでござる!…その断崖の下へ落とせば無力化できるかもしれないでござる!」
「なるほど、崖か!」
この先にある断崖の下へ落とす作戦らしい。早く言えよ!!
「よし!…それじゃあさっさと行くぞ!」
俺はアビスゴブリンの頭へジャンプしてドロップキックをした、するとアビスゴブリンはその場で倒れた。
「……その妖は15mまでしか瞬間的に移動できないのでござる…今のうちに行くでござるよ!」
俺たちはアビスゴブリンが倒れ、怯んでいるうちに断崖へ向かって走った。道中に通常のゴブリンもいたが、走りながら倒し、全速力で向かった。
「……断崖に首から下の体を落とすのでござる」
「首から下…?」
「…首をはね…その下は底無しの断崖へ落とす……そうする事により頭を失い…倒せるかもしれないでござる」
要するに頭と体を離してくっつかないようにするってか、そうすれば実質的に頭を失う事になるので無力化できるということだ。
確かに頭が無くなって生きてる生物なんて見たこと無いからな。しかし、これで倒せればいいんだがな。俺はそう願いながら十郎とアーサーを追って断崖へ走っていった。




