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無敵の聖騎士、初めての敗北




「拙者の助けなど不要でござったか!」

「それよりも…アンタ何者だよ」


俺たちはアビスゴブリンが去った後、薪を燃やして休んでいた。アビスで変異したモンスターは火を嫌うらしい。


「俺は梅岡…コイツは十郎……アンタは?」

「…申し遅れた…拙者……桜鸞流(おうらんりゅう)のアーサーでごさる」


アーサーは侍みたいな喋り方とか流派とかだけど、武器は刀ではなく大剣で、そしてどう見たって西洋の鎧を身にまとっている。すると十郎がアーサーを見ながら尋ねた。


「それで、アーサーさんは何故こんな所にいるのですか?」

「桜鸞流の修行中でござる」


アーサーは数ヶ月前にこの先の塔に住む強者の噂を聞きつけて、弟子入りを志願したらしい。


「拙者は師匠と戦い、初めて敗北したのでござる」

「それじゃあ今までは負け知らずだったのか?」

「無論…拙者は聖騎士でござった…当時生まれて23年……敗北という言葉を知らなかったのでござるよ」



……



「……初めッ!!」

「うぉぉぉ!!」

「…………」

「ぐがッ!?」


騎士の試験で合格、それは俺にとって簡単な事だった。


「アーサーは特別優秀であった、よって聖騎士へ任命する」


人間を倒すのも、今まで倒してきたモンスターを倒す事と変わらなかった。まだモンスターの方が強かったな。


『強い人間がいるって聞いたけど、大した事ないな』


戦争も無く、退屈な2年を過ごしていた。他の聖騎士と試合をしてみたが、手こずった事は無い。そんな日々が続き、聖騎士長に任命され、1年が経とうとした頃。


「アーサー」

「はっ」


俺は突然、エミリア王に呼ばれた。どうせ遠征とかだろうと、そう思っていた。


「君はいつも、つまらなさそうな目をしているね」

「……はぁ…」

「自分と互角に渡り合える人がいない…からかな?」

「……………はい」


突然そんな質問をされ、俺は正直に答えた。するとエミリア王は意味深な事を言った。


「……もしさ…君よりも強い人がいるって言ったらどうする?」

「…………俺よりも強いどころか…互角に渡り合える人間が……この世に存在すると思えません」


するとエミリア王はクスクスと笑って、跪く俺の前へ立った。


「……敗北というものが必要な人間もいる…君がそうだ」

「…………」


エミリア王は俺に地図を手渡した。それはレイド大陸の地図で、目印が付けられていた。


「そこに…君が望む人間がいる」

「…この場所に……」


俺が試験を受けた理由、それは自分よりも強い人間と戦いたかったからだ。エミリア王はつまらない嘘をつかない、だが、俺は半信半疑でその場所に向かった。


「……エミリア殿が言っていた聖騎士か」

「アンタが俺と張り合う実力の持ち主か?」


森の先へある道場、そこには着物を着た男が正座していた。


「……早速勝負してもらおう」


俺は剣を構えた。すると男は刀を持ち、俺に尋ねた。


「……そのような重い武具で大丈夫か?」

「余計な心配だ」


着物姿で武器は刀、鎧に刀など無力、それに着物、あんなもの戦闘で着るなど正気ではない。


「……いざッ!」

「…………」


戦いは始まったが、静寂が続き、鳥の鳴き声しか聞こえない。男の構えを見ると剣道の構えだった。


「剣道……スカーレット王の統治する陰陽連邦の流派…」

「……儂の使うものは剣道を応用したものだ」


すると踏み込みとともに剣を振った、俺は急いでガードした。


「ッ!」


とてつもなく重たい一撃だった、刃こぼれもしていない。一体どうなっているんだ……


「ふんッ」

「うおッ!?」


そして連続で俺に斬りかかった、どんな体力してるんだ!?……俺は防ぎ、思い切り水平斬りをした、しかし避けられる。


「くッ!」


そして俺はそのまま突きに繋げた。これは防げないはず……しかし……


「うおッ!?」


俺の突きと同時に見切るように横へ避け、俺の剣に峰打ちをした。すると俺の突きは軌道が変わり、地面へ突き刺さった。


「この…」


だが、俺は力には自信がある。俺は素早く地面に刺さった剣で地面をえぐりながら無理矢理斬撃に繋げた、土だらけの剣で斬りかかったのだ。


「……剛力だな」


その瞬間に俺は仰け反り、大きなスキができた。腹や胸はガラ空きだった。


「………ッ!!」

「儂の勝ちでいいか?」


俺の胸には刀が突きつけられていた。もしこれが実戦であれば俺は死んでいた……


「な…何をした…」

「お主の斬撃は重いが遅いので受け流し、スキを作り出した。お主の言葉で言うとカウンターか」


俺の剣を受け流し、俺の斬撃の衝撃を俺に返した。その結果、俺に衝撃が襲いかかり、俺は体勢を崩した。


「……もう一度尋ねるが…儂の勝ちでいいか?」

「……………ああ…」


俺は、その場で膝をついた、もはや敗北を認めざるを得なかったのだ。手も足も出ないとはこの事だ。













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