悪夢に悪夢を見せる
「…う……宇川!!」
「ヤタガラスか…大した事ないな…」
「……お前は…!」
本棚があった場所には、一人の悪魔が立っていた。川畑はその悪魔を、【狂う悪夢】だと疑わなかった。
「…姿を現したな…【狂う悪夢】…!!」
「おっと!」
川畑は【狂う悪夢】へ殴りかかるが、よろめいてその場で膝をついた。
「……さっきの戦いで…体力が無いんだろ?……そんな状態で…俺に勝てると?」
「………クソ…」
そして膝をつく川畑へ、【狂う悪夢】は言った。
「…冥土の土産に教えてやろう……俺の能力は…生物の殺意を増幅させ…狂わせる能力……その能力はロビーにあった絵画へ付与していた……だからお前らはロビーの絵画を見た時点で…負けてたのだよ」
「やはりな……ミユキの言動…そして宇川の殺人の動機を聞いて…そんな気はしていたが……クソ野郎め…」
「ははは!!…何が最強のヤタガラスだ!……とんだカス共じゃあないか…!」
笑いながら、【狂う悪夢】は川畑へトドメを刺そうと、手を握った。
「…じゃあな……」
「……………」
「これで俺も…あのバケモノ共の仲間入r」
「よぉ…良い夢見たか…?」
【狂う悪夢】の肩へ、手をポンと乗せている男がいた。【狂う悪夢】が振り返ると、その男はナオトだった。
「……な………に………?」
「だが…夢は覚ますものだろう…?」
「そうそう!」
声のする方を見ると、死んだ筈のミユキと樹一郎が立っていた。
「ドッキリ大成功!…てか?」
「…これで確定したな……俺達の演技は悪魔も騙せる…と」
川畑と宇川も、ピンピンして立っていた。【狂う悪夢】は何が起きているのか理解できていない様子だった。
「な…ッ!……どういう事だよ!!…何で生きて…ッ……確かに死んだ筈…ッ……心臓は止まっていたし…ミユキに至っては胸に穴が…ッ!」
「アハ!…穴を開けられても生きてるよ!……凄いでしょ!」
「絵画を見て……狂った…筈じゃ…」
「全部嘘だよ…【狂う悪夢】……」
【狂う悪夢】はそれを聞いて、やっと何かを察したようだった。
「…俺の能力で仲間割れしていたのも…死んだのも……全て…演技だったのか…!?」
「ああ……最後の一人になったら…お前が出てくると思ってな」
……
“中は荒れてるのに…この絵画だけ不自然な程綺麗に保存されているな……汚れすら付いていない……”
“…ふむ………”
俺はヤタガラスのみんなを呼び、静かに俺の作戦を言った。
“………絵画を見て気付いたと思うが……【狂う悪夢】の能力は…人を狂わせる能力だ…”
“…そのようだな”
“……【狂う悪夢】は恐らく…俺達を狂わせて仲間割れをさせたあとに…最後の一人を潰しに来る筈だ………そこで…作戦を考えたのだが……能力に引っかかったフリをして…誘き出さないか?”
そして俺は誰が、いつ、どのように死ぬかなどを説明して、みんなの確認を取った。
“……分かったな?”
“…オッケー……”
“面白ぇ事を考えるな…!”
「…まぁ……そういう事で……死にたくなければ俺達と来てもらおう…」
俺が手を差し出した瞬間、【狂う悪夢】はバックステップをして俺達から離れた。
「……フン…ッ…!……能力が効かなかったとしても…単純な力で殺すだけだ…!……人間が…悪魔に勝てる道理なんて…ある筈ないのだからな!!」
「大人しくしてたら…痛い思いしなくて良かったのにね」
そして【狂う悪夢】は、宇川の元へ向かった。
「うがぁぁぁ!!」
「……へへ!…お前散々…抵士官に悪夢を魅せてきたらしいな………今度はお前が悪夢を見る番だぜ…!!」
……
「……お望みのものだぜ!」
「これは………」
俺達は抵士官へ、【狂う悪夢】の屍を渡した。すると、俺達の元へ七海とカイト討伐メンバーのみんなが歩いてきた。
「…そのペン型カメラで倒す様子は見ていたが……なるほど…演技か……使えそうだな…」
「悪魔を倒すなんて…カッコいいな……ヤタガラス…」
「まぁな…悪魔なんて今まで何体も倒してる」
そんな時、他のメンバーが七海へ言った。
「それじゃあ…俺達の良い所も見せないとな…!」
「…近くに天使か悪魔いないか?…やっつけてきてやる!」
「……あぁ…それならあの山に抵士官を何人も殺してる天使の一派がいるけど…」
するとメンバー達は、天使の事を言った抵士官へ尋ねた。
「詳細を教えてくれ」
「…お前ら……あの山の天使を倒しに行くのか?」
「ああ!…俺達のカッコイイ所も見せたいしな!」
「……それに…レジアルも欲しいからな…」
「…そうか……お前は天使や悪魔に対抗できる武器を持っていないのか」




