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アビス変異体



「ウメオカとジュウロウは近くまで来てるそうだ」

「……ッ…」

「どうした?」

「いや……(からす)が騒がしくてな………」



……



「……なんか薄気味悪い森だな」

「ええ」


俺たちの目の前には朝だというのに、まるで夜のように暗い森があった。目的地に行くにはここを通るしかないが……


「松明の灯りで進もう」

「そうですね」


俺は松明に火をつけて、森の中へ足を踏み入れた。俺が入った途端、目の前の茂みが揺れた。


「……誰だ…」

「どうしたのですか?」

「いや……なんでもない」


茂みには誰もいなかった、風で揺れたのか?……だが風は吹いていない。俺たちは松明の灯りを頼りに進んでいった、そんな時に倒れている人を見つけた。


「どうした!?」

「…ッ……クソ………甘く見ていた…」


その男の身体には斧かなんかで斬られた痕があり、血が大量に出ていた。


「大丈夫か!?」

「あ……あぁ……」


血を吐く男に十郎は応急処置を施した。少しして落ち着いたのか、男はゆっくりと話し始めた。



……



「…俺は……ギルドからの討伐依頼でこの森に来た……グリンだ…」

「その傷は……」

「……依頼内容は危険度Bのモンスターの始末だった……」


危険度Bのモンスター討伐依頼を引き受けるって事は結構強い人だな。だとしたら尚更気になるな、危険度Bの依頼を引き受けられる実力者のグリンがこんな重症なのか気になるな。


「…討伐対象のモンスターは発見した……魔素になっていたがな…」

「死んでいたってのか…」

「ああ……俺はこの事を報告しようと森を出ようと思っていた…その時だった……」



……



「……ほかのモンスターにやられたのか?……この事を報告するか」


俺は森の入り口の方へ歩いていった、そんな時に背後から妙な気配がした。


「ッ!!」


斧が飛んできたが俺は間一髪避けた、そして目の前の木を斧が斬った。


「なんだ!?」


俺の後ろには斧を投げたであろうモンスターが立っていた、だが、見たことの無いモンスターだ。体型は人間で言うと太っていて、顔に目や鼻は無く、大きな口だけ顔と腹にあり、胸の部分に目が付いていた。


「気色の悪いモンスターだな…」


俺はクロスボウを取り出して構えた。するとそのモンスターは飛んでいった斧の方を向いていた。


「……!」


その瞬間に俺は矢を打ち出した、たしかに頭を狙って撃った。そしてこの距離なら確実に当たる。だが……


「うお!?」


そのモンスターは突然消えた。俺の飛ばした矢もそいつの後ろの木に刺さった。


「クソッ!…どこだ!」


そして俺が振り向くと、そこには斧を振りかぶったヤツの姿があった。俺は気付くのが遅かったのだ。


「うぐッ!!」


俺は後ろへ下がったが、身体には斬られた痕があり、血が吹き出した。だが、幸い下がったおかげで真っ二つ(斬殺)になるのは免れたがな。


「はぁ…はぁ……くッ……」


俺は痛みで意識が朦朧(もうろう)として倒れた。視界がぼやけていたが、こちらに歩いてくるアイツの姿はハッキリと見えた。


『ここが…俺の死に場所か……』


そんな時に突然、ソイツは茂みの中へ隠れるように走っていった。



……



「そして、歩いてくるお前たちを見た」

「なるほどな…」


気味の悪いモンスターだな、まるでホラーゲームに出てきそうだな。


「……早く…知らせないと…あんなバケモノ野放しにできねぇ…」

「その傷で歩けねぇって!」

「大丈夫だ……この先に町がある…そこで休むとする」


そう言ってグリンはフラフラと歩いていった。応急処置をしたとはいえ大丈夫かな……


「……グリンが言ってたモンスターと出会ったら用心しないとな」

「もう来てますよ」

「ゑ?」


少し遠くにグリンの言っていた通りのモンスターが立っており、こちらを見ていた。


「早速お出ましかよ……」


俺が瞬きをすると消えた。俺は背後から気配を感じ取り、素早く回避した。


「危ねぇ…」

「瞬間移動…ですか……」


俺はこのモンスターをスマコで読み取った。


[アビスゴブリン]


危険度SS

アビスの影響により変異したゴブリン。魔法を扱い、とてつもない生命力を持つ。知能は無く、目の前にいる生物を人間でもモンスターでも見境なく襲う。


「アビス…あの悪神の力ですね…」

「魔王の実験で作られたモンスターか?……どちらにせよ木が邪魔で戦い辛いな」


すると突然、木の上から大剣を持った男がアビスゴブリンに斬りかかった。


「むんッ!!」


アビスゴブリンは後ろへ下がって避けた。男は俺たちの前へ立ち、大剣を構えた。


其元(そこもと)よ、無事か」

「あ……大丈夫だ……アンタは…」

「名を名乗るのは…あの(あやかし)を切り捨ててからでござる」


するとアビスゴブリンは暗闇の中へ消えていった。


「…ふむ……逃げおったか」














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