キツイよ!持久走!!
「…嘘だろ……」
「バケモノかよ…」
宇川は飛んできた野球ボールを、華麗に躱していった。見た目は筋骨隆々だが、めちゃくちゃ身軽だ。
「……よしッ!…全部避けたぜッ!!」
「…試験で使われる速度じゃ…ないよなアレ…」
「ああ…」
俺達の周りにいた抵士官達が、何やら話している。
「反射神経の試験って…80km/hいくかいかないか位だよな……」
「え!?…これ実際の速度じゃねぇの!?」
「当たり前だろ!…もし反射神経の試験で飛んでくるボールが400km/hなら…500人以上も抵士官いねぇよ!」
抵士官達は、俺達へ口々にそう言った。ちょっと待て…もしそうだとしたら……
「…お前……俺達の試験とやらで飛んできたボール……本来の速度で使ってないだろ…」
「神すらも倒すヤタガラス専用に…調整したんだ…!」
「いや!…本来の速度でやってくれよ!!」
すると乖理は頭を掻き、笑みを浮かべながら言った。
「まぁ…いいじゃないか!……避けられたんだし…!」
「…まぁな」
「じゃあ次の試験な!」
「ヱ?」
鳩が豆鉄砲を食らったような顔を俺がすると、乖理は満遍の笑みで言った。
「これを一回した程度じゃあ…まだヤタガラスの実力が分からんだろ!……あと…そこの二人もやってもらうからな!……お前らもヤタガラスなんだしよ!!」
「あっ…そうか……」
「……メンドいな…」
乖理が川畑とミユキの方を向いて、笑顔で言った。そして、俺達は運動場に移動した。
……
「次は…体力試験の……持久走だ!!…40kmのタイムを測るぞ!」
「おいおい…マジか…」
「頑張れ!…ナオトさん!」
梅岡が俺に向かって、挑発とも取れるような、小馬鹿にした態度で言った。
「……何を言ってる?…お前らもやるんだ」
「ゑ?」
「…反射神経は…さっきの試験のボールを追うお前らの目を見て…ヤタガラスと同じ位だと判断したが……体力は人によって違うからな……お前らにもやってもらう…!」
「マジかよ!!」
「はは!!…ザマー味噌漬け!!」
そして、俺達カイト討伐メンバーの持久力が始まった。
「それじゃあ…位置について…」
「………40kmか…キツイな…」
「レディ…ゴーッ!!」
スタートの合図があったその瞬間、ミユキと宇川が凄まじいスピードで走り出した。
「はやッ!!」
「おいおいおい!…あのスピード……」
「…100mを3秒で走りやがった…!」
俺や他の奴等はゆっくり走っているが、宇川とミユキの二人は猛ダッシュしている。
「クッソ!…真っ直ぐなら!……光よりも速いんだがな…!!」
「それな!」
「おい!」
猛ダッシュする宇川とミユキへ俺が叫ぶと、二人は俺のスピードに合わせて走り出した。
「ンだよ…ナオト!……つーかお前…なにゆっくり走ってんだ!」
「宇川じゃねぇ!…ミユキ!……お前だよ!」
「え?……僕?」
「ああ!」
俺は走りながら、ミユキへ尋ねた。
「無理して宇川に合わせるなよ!……コイツは…やろうと思えば光の何億倍も速く走れる…運動神経のバケモンなんだからな!!」
「……分かってるよ…!」
「だとよナオト!…余計な世話だってよ!!」
そして、二人は先程のスピードに戻った。ッたく…疲れねぇのかよ……
「…あのスピードで……この距離を走って…汗一つかかねぇ…って……どうなってやがる…」
「……ナオト…俺達もそろそろ走るか?」
「…だな……アイツらの体力は大体分かったし…」
俺は思い切り地面を蹴って、走り始めた。
「このグラウンドは一周400m……そんで…俺達は4周目……宇川とミユキは……8週目か…」
「…追いつけるな」
宇川とミユキに差をつけられた分、俺と川畑は思い切り走った。
「ゴールだ」
「おっしゃあ!!」
「…二人とも40kmを120秒か……お前ら…本当に人間か?」
二人がゴールした後、俺と川畑も1.8秒遅れでゴールした。
「……ギリ追いつけなかったか…」
「最初から走ってりゃあ…よかったんだよ!!」
すると俺達の元へ、抵士官が走って来た。
「…疲れたろう?…飲むか?」
「いや!…大丈夫だ!……軽く走っただけだからな!!」
「マジすか…?」
「ああ!!」
全く、宇川はガチのバケモノだ。この距離を走って汗をかかないんだからよ。まぁ、川畑とかミユキもそうだが。
「俺はくれ…」
「ああ…!」
俺は受け取った水を浴びるように飲んだ。そうしていると、他の奴等も、次々とゴールしてきた。
「アンタら速すぎ…」
「…あー……疲れた…」
「何か…ヤタガラスが速すぎて霞んでるが……他の奴等もめちゃくちゃ速いよな…」
抵士官はざわめいている、すると乖理が俺達へ、結果が書かれたボードを渡してきた。
「ヤタガラス以外のタイムは…総特クラスで何人かいるが……ヤタガラス…お前らはヤバすぎな…!」
「…どれどれ……?」




